表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/85

湖畔の朝 1

本日は二本更新予定です。


 眷属達はそれぞれの配置場所に戻った。


水のルンは、王宮内のスレヴィが管理している妖精王のそばに。


風のリンは「魔法の塔の町」にあるギードの土産物店の売店を任せているので、拠点をそこに置いている。


炎のエンは一度王宮に戻り、所属している近衛兵隊に挨拶したのち、こちらに合流となる。


 ギードはそれぞれが移転していくのを見送った後、コンと共に後片付けをする。


土のコンは今までどおり、ギードの従者として家族の世話をしてくれる。


やがて夜が明ければ出発だ。


「さて、夜明けまではまだ時間があるか」


少し休もうかなと建物の中に入る。



 

 仕切られただけの扉の無い部屋に、床に毛布を重ねただけの簡単な寝床があり、その上に双子と妻が横になっている。


ギードは静かに、出入り口近くの、タミリアの隣に横になる。


エルフは成人するとほとんど睡眠を必要としないので、眠るわけではない。身体を休めるだけだが、家族の傍は癒しの空間なのだ。短時間でも十分な休養が取れる。


(これから行く先は、まだどうなるか分からない)


ギードは隣に眠る妻や双子を見ながら、今更ながらこれで良かったのだろうかと考える。


今回の旅は、完全にギードひとりの我がままだ。


本当なら家族を置いて単身で行けば済む。でも、ギードはそうしなかった。


(なんか嫌な予感がするんだよね)


離れたら、もう二度と会えなくなるかも知れない。そんな不吉な予感に、ギードは対抗出来る準備をやれるだけやった。




スレヴィの情報では、彼の国は人族至上主義の上に、魔力のある者が偉いという風潮があるそうだ。


妖精族や精霊を否定しているのに、おかしな話だと思う。


人族であること、魔力があること。それが神に認められた証拠だと言われている。タミリアやミキリアが見つからないようにしよう。面倒くさそうだ。


人族ではないものをさげすむ傾向があるらしく、エルフもダメらしい。


危険は承知の上のギードだったが、あれほどシャルネに心配されると、もっと違う何かがあるのかと気になってくる。




「うーん」


もそもそとタミリアが寝返りをうつ。と、同時にギードの首に細い腕が絡んできた。


「ひっ」


悲鳴に近い声をあげてしまったギードを、タミリアが眠そうな目を開けて不満そうににらんでいた。


いや、ちょっと驚いただけです。ごめんなさい。でも投げ飛ばされはしなかった。よかった。


しばらくするとまた静かに目を閉じたが、何故かタミリアの腕はそのままギードに絡まっていた。






 この世界の異種族間の子供は、必ずどちらかの種族になる。


ギード夫婦の双子はまだ幼くてはっきりとはしないが、どちらの血もいでいるはずなのに、外観ではそれを見分けることは出来ない。


異種族間の子供達は、エルフはエルフであるし、人族は人族という種族特性を持って生まれる。そのため、表面上出ていない血筋は簡単に隠せるし、知らずに血を受け継いでいる場合もある。


人族でありながらエルフの血が濃く出てしまって、人族用の薬が合わずに病弱だった女性をギードは知っている。彼女はエルフが血族にいるとは全く知らなかった。


 うちの双子は、息子のユイリがエルフ族の特徴を強く受け継いでおり、金髪、色白、尖った耳など特徴的な外観をしている。


娘はタミリアに良く似た藍色の髪をした普通の人族の子供だ。だが、魔力は実力者二人の血を引いているせいで、何だか調べるのも怖い状態。


まあ、そのうち判明するだろう。あまり急いで調べる必要もないとギードは思っている。


 本当は怖いのだ。自分でも分かっている。


ギードは妖精族だ。どんなに腹黒と呼ばれていようと、基本的に感情に正直であることは変わらないと思っている。


(知ってしまえばごまかすのに苦労しそうだしね)


知らなければ「分からない」で済む話なのだ。


これはギードの眷属精霊達にも同じことがいえる。だからこそ、はっきりとはさせない。あやふやなままにしておく。




「ギドちゃん」


眠っていると思っていたタミリアの声が、突然ギードの耳の近くで聞こえた。


どきりとする心臓を無理矢理抑えこむ。さっきの醜態を繰り返すわけにはいかない。


「んー?」


ギードは眠っていたという風を装って、のんびりとした声を出す。


むくりと身体を起こしたタミリアが、真っ直ぐにギードを見ていた。


 夜明け前。いつもなら爆睡しているはずの妻だが、寝ぼけているわけではなさそうだ。


「目が覚めた。顔、洗ってくる」


ふいっと顔をそむけて、タミリアは部屋を出て行った。今日が出発ということで、脳筋でも多少は緊張するのかなとギードは思った。


コンに子供達を頼んでギードも寝床を離れた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ