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エルフの旦那と魔法剣士の嫁  作者: さつき けい


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旅の目的


 夕食後、適当に部屋を決めていく。魔術師が住んでいたためか、家具や食器には保存の魔法がかけられており、軽くほこりを払うだけで使える状態になった。寝具だけは新しいものと交換している。


子供達はもちろん、屋根裏部屋が気に入ってくれた。


何枚かの毛布を敷いて双子の寝床にした。階段には転落防止用の結界を張っておく。


「私もー」とタミリアが主張したが、部屋に入ると思ったより天井が低くて断念していた。


 コンとエンは「自分達はあるじ様の影の中で」と思っていたようだが、村人に怪しまれないようにするため、見かけだけでも客室を使うように言った。


「一部屋しかなくて申し訳ないけど、とりあえず寝床を二つ置いておけばいいよ」


実際使うかどうかは別にして。


「承知しました」


今まで自分達の部屋というものがなかったので、興味はあったようだ。


結構楽しそうに、部屋に何を置くかと相談し合っていた。


 寝室はもちろんギード夫婦が使うことになったが、置いてあったベッドが一人用だったので、客用のベッドを持って来て並べた。


コン達のベッドがなくなるが、彼らは全く気にしていない。普段からそんな物は使わないからだ。


「材料が手に入るようなら作ってしまいたいね」


子供達の寝台も必要なので、村で作ってくれる職人がいるか聞いてみることにする。





 その夜、今日も一日新しい家と付近の探索で疲れた妻と子供達が早々に寝静る。


ギードは寝室の壁にある布をまくり、自分が作った地下室に下りた。


自分で張った強固な結界を通り抜ける一瞬の感覚。土魔法で作った部屋は、壁や天井の土が荒削りのままだが、ギードにとってはどうでもいいことだ。ここを去る時は潰して埋めるだけだから。


 今日は、定例の眷属会議。


「みんな早いね」


四体の精霊達がすでにギードの影から出て、部屋でくつろいでいた。


どこから持ち込んだのか、テーブルと椅子が新しくなっていた。いつの間にか、壁や床がきれいに固められていたり、何故かかわいらしいカップや皿が棚に並んでいたりした。


 風の最上位精霊のリンは新しい家を見て回ったり、地下室の風の流れを直したりして、自分もいっしょに旅をしている気分を味わっている。


「自由に魔法を使えないというのは不便ですね」


ようやく落ち着いたリンが椅子に座りながら話かけてくる。


「まあ、日頃から魔法に頼ってると辛いだろうな」


一番の問題は、いかに村人に怪しまれないように魔法を使って生活するかということなのだ。


「魔道具も使えないんですか?」


「んー、この辺りじゃかなり高級品になるだろうしねー」


そんなものを使っていたら村人に引かれるか、狙われるかのどっちかになるだろう。




「そういえば、小さな精霊の気配も見当らないとか」


ルンのいうとおり、王国ではどこでも見かけたあの小さな玉のような精霊達がいないのだ。


この辺りの土地自体に魔力が乏しい。自然界から魔力が得られないということは、精霊にとっては食事が出来ないことと同じなので、かなり辛い。


「ルンは絶対この部屋から出ないようにね」


まだ実体化出来ていないいにしえの水の精霊ルンのため、この部屋は強固な結界で魔力の流れを遮断している。


特に水に飢えている土地なので、水の精霊は力を奪われる危険もある。


「はい」


ルンは素直に頷いていた。たいした議題がない日は不参加でもいいよというと、首を振っていた。


「今いる王宮以外でお出かけはここしかないのでー」


息抜きになるそうだ。ならいいかー。





 一通りの今後の予定を立て、しばらくは現状維持でいいと伝える。


「しかし、ギード様」


コンは難しい顔をしている。


「いつまでここに滞在されるのでしょうか?」


ギードは眷属達にもまだ旅の目的を話していなかった。


理由など言わなくても彼らは従ってくれる。でもそれはやっぱり納得の上でなければ、いつかは心が離れてしまう。いくら契約の主であっても彼らには拒否する権利もある。


「あー、そうか。ごめん」


ギードは立ち上がり、ゆっくりと自分用の薬草茶をれ直す。


そして、四体の精霊の前に新たに酒を入れたカップを置く。ここからは彼らにお願いすることになるからだ。


「この旅の目的はね」


いつものぼんやりとした笑顔を浮かべるギードに、眷属達は余計に緊張する。この主は、黒くない笑顔を家族以外にはあまり見せないからだ。




「二百年前の大戦の後始末、かな」


この土地のどこかに、ギードが探しているモノがあるはずなのだ。それは多分、大戦が残したモノ。でもそれが実際には何なのか、自分でもまだはっきりとしない。


ギードは眷属達を自分の我がままに出来るだけ巻き込みたくないとは思っている。彼らは『妖精王からの預かりモノ』だからだ。直接戦いに関わっていないギードと違い、彼らはあの大戦の渦中にいた。あの悪夢をまた彼らに思い出させることになるのは心苦しい。それでも、


「そうですか」


「申し訳ない」


頭を下げたギードに、コンは慌ててこれも眷属の仕事だから気にしないようにと手を振った。ギードがこの場所を目指すと言った時から、何かを感じていたのだろう。


「しかし、後始末とは?」


エンが不思議そうにギードの顔を見ている。


「自分でもよく分からないんだ。だからしばらくの間は調査ということになるねー」


あははは、と笑うギードはやはり普通のエルフとは違う。


(コン、あなたしっかり見張ってなさいよ?)


(わかっておる)


(面白いなあ、実に面白い)


(えーーー、私は怖いです。何が起こるか分かりませんよー)


眷属達は、この主は放っておいたら何をしでかすか分からないと、改めて連携の強化を誓った。



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