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春姫物語  作者: 番茶
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春姫の旅立ち







春姫は旅立つ前に冬姫と約束をしました。



「何が何でも歯車は取り戻します。遅くなるやもしれません…でも、私を信じて待っていてください!!」


冬姫は微笑み、力強く頷きました。



「ええ、もちろんですわ。春姫でなければ新しい歯車は手に入りませんもの。例え何があろうと貴方が帰るまで冬は終わらせませんわ。」



「どうか、お気をつけて…」と心配する冬姫に見送られながら春姫はこっそり屋敷をぬけだしたのでした。





この国において、地上に出るには秘密の通路がありました。

国のはずれの馬小屋にその道はあります。





まず馬小屋に向かった春姫はそこで違和感を覚えました。




「…誰か、いる…?」



そう、なんと人知れぬはずの馬小屋に一人の青年が眠っていました。

はじめこそ倒れているのではと心配した春姫でしたが、青年はただ眠っているだけで、次の瞬間には春姫の気配に目を開けました。





「おや、美しいお嬢さんだ。だけれど、どうしたんだいその格好は、まるで戦に行くようだね。」



起き上がった青年は、よく見ると美しい深い青色の髪にこれまた美しいアイスブルーな目をしていました。

端整な顔立ちの青年ににこりと微笑まれ、春姫は思わずドキリとしましたが、今はそんな時ではありません。



「わ、私は今から旅に出なければなりません。出来れば人に見られたくはないのです。」



春姫は言いました。

しかし青年は首を横に振ります。



「私とて帰りたいが、いかんせん私はよその国に来てしまったようでね。ここがどこかもわからなければ、どこに行きたいのかもわからないのだよ。旅に行くというなら丁度いい。どうか私を連れて行ってはくれませんか。きっと貴方のお役に立ってみせます。」



青年は言いました。

春姫は思わぬことに悩みましたが、ここに置き去りにする訳にも行かず、結局地上へと連れて行くことにしました。




「私が行くのはとても暑い所ですが貴方は大丈夫なのですか?」


青年はその返答に嬉しそうに頷きました。


「私は元々南国の生まれです。暑さのしのぎ方なら慣れています。ここは私には少し肌寒かったのでますます良かった。」


そう言われてしまえば春姫も今更断れません。正直に言えば少し心細かったのです。

いくら『なくならない水筒』と多めの食料を持っていても、孤独には勝てません。


内心ホッとした気持ちになった春姫は馬小屋にいた『死なない馬』を二頭引き連れて秘密の通路を通りました。

その間、青年に目隠しをするのも忘れずに。







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