春姫と冬姫
終わらない冬が来る前のこと。
季節は秋、この年も例年通り夏姫から滞りなく秋姫へと季節がまわされた。
人々は夏の暑さから解放され、秋の訪れに喜んでいました。
事件が起こったのは、そんな平和な秋の日の昼下がり、冬姫と春姫が王宮の庭園で仲良くお茶をしていた時のことでした。
パキリ、
それは何の前触れもなく、起こりました。
春姫の首にかかっていた花のような、雪の結晶のような細やかな細工のされたネックレスは真っ二つに割れ、柔らかな芝生へと落ちたのです。
陶器のような真っ白な肌を持つ冬姫はその白すぎる顔を真っ青にし、いつもは桃色の頬をしている春姫も同じように顔を青くし、壊れてしまったネックレスを見つめました。
「た、大変!!大切な、歯車が!!」
二人は慌てて歯車を拾いましたが、歯車はとても二人の力で直せそうにはありませんでした。
「急いで大地の神の所へ行かねば…」
春姫の言葉に冬姫も頷きました。
「急がなければ来るべき時期に春が来なくなってしまいますものね…」
二人は急いで四姫の屋敷に戻りました。
春姫は春姫の侍女であり、双子の妹であるシェリーを呼びました。
「シェリー、大変なことになってしまい貴方に私の身代わりをお願いしたいのです。」
普段は朗らかで明るい姉の慌てぶりにシェリーは戸惑いながらも何も言わずに了承しました。
シェリーが黙って引き受けた理由、それは四姫が王様ですら知らない国の秘密を握っていること知っていたからです。