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花のようなあなた

「実は好きな人ができたんだ」

親友からの衝撃的な告白。

だから、初め聞いたときはただ純粋に嬉しかった。応援したいと思った。

桜とは、高校の入学式の日に出会った。私と桜は同じクラスで出席番号は遠いが、入学式の席が前後だったこととお互いに同じ中学からの友人がいなかったがきっかけで仲良くなった。

 桜は、ナズナのようにどこにでもいるような私とも仲良くしてくれるような優しい子で、見た目も軽めの天然パーマでお気に入りの桃色のカーディガンが似合う誰からでも愛されるような子だ。


「委員会で一緒の鈴木先輩っていういっこ上の先輩なんだけどね。」

一つ上の3年生には、鈴木が2人いる。鈴木葵と鈴木紫苑の双子である。二人とも私の幼馴染で性格はよく知っている。

葵は、活発で運動が大好きでヒマワリのように明るくサッカー部に所属しているスポーツマン。一方、紫苑は、運動はてんで駄目だが勉強がよくできる趣味は実験と豪語するような完全なるインドア派で基本的には無表情で冷たい人だと勘違いされるタイプ。

「趣味が同じでね。話しかけづらかったんだけど話しかけてみたら話がはずんでね」

二人とも委員会に所属するようなタイプではないが、桜の話からして葵のことを言っているのだと確信した。

葵は周りに人がたくさん集まっているから話しかけづらかったのだろう。

話しかけづらさでいえば紫苑のほうが上だと思うが桜の趣味は料理と裁縫であり、紫苑の趣味とは全く異なる。葵の趣味と同じとも断言できないが、なにせ葵の交友関係の広さは異常なまでに広くその時によって趣味やマイブームがコロコロ変わる。たまたま今の趣味といえるものが料理か裁縫だったのであろう。


私は、昔から葵が好きだった。

一つ年が違うし、性別も違う私と一緒に遊んでくれた。葵は外で遊ぶのが好きな子供だったのに私に付き合ってお人形遊びをしてくれた。夏祭りに行った時には浴衣を着ていた私を可愛いとほめてくれた。

ただそれだけのことで私は葵を好きになった。

幼馴染だからずっと一緒にいられると思った。でも、彼女ができてしまったら一緒にいる時間は短くなってしまうだろう。


「ナズナ、どうかした?」

「ううん、何でもないよ」

私は、葵のことも好きだが桜のことも大好きなのだ。幼馴染と親友、大好きな二人がくっつくのであれば応援しないと。


次の日から、私は葵と桜をくっつけるためにもともと幼馴染3人でしていた登下校に桜を加えた4人ですることにした。

葵はもちろん了承してくれたことはわかっていたが、紫苑も了承してくれるのは意外だった。


登下校の度にどんどん葵と桜が仲良くなっていくのを見てるとだんだんつらくなっていった頃だった。

「先輩、そろそろ夏休みになるじゃないですか。夏休みに神社でやるお祭り一緒に行きませんか?」

「賛成」

「いいねー。桜とナズナは浴衣とか着てくるのかな?」

明らかに葵に向けた質問に紫苑が即答したのに若干驚いたが、葵も4人で行くものだと思っているようだった。

「ナズナは?」

この状況で断るほうが難しい。

「ああ、うん。いいね」

そしていつの間にか4人で浴衣を着てお祭りに行くことと待ち合わせ場所などのこまごまとしたことが私の知らない間に決定していた。



「二人とも、浴衣がよく似合うねー。両手に花とはこのことだね」

「うん、綺麗なんじゃない」

と葵はさておき紫苑が褒めたのには驚いた。いつの間にか紫苑も桜を気に入っていたようだ。


今回の夏祭りは花火大会を兼ねているため規模が大きく人も多い。

桜と葵は手が触れそうな距離でなにやら楽しそうに話している。それを見て紫苑が顔をしかめているが無視をしておきそのまま4人で行動する。


いい雰囲気になるためにはやっぱり2人で別行動させたほうがいいよね。どうやって離れようか考えているうちに2人とはぐれてしまった。隣にいるのは、葵。ということは、桜と紫苑は二人きりになっている。

まずい、探さないとと思っていた時に葵に手を引っ張られる。

「ねえ、何を焦ってるの?こんなに人が多いんだから見つからないし携帯だってでれないよ」

「でも、探さなきゃ」

桜が葵と夏祭りに参加したくて頑張って誘ったのだ。それを無駄にするようなことはしたくない。

必死で葵の手を振り払おうとする。

「そんなに俺と二人きりって嫌?」

「そういうことじゃなくて」


「俺今日、桜と紫苑に協力してもらったんだ。初めての夏祭りデート邪魔するようで悪いけど途中まで一緒に行ってくれって」

「え」

「ヘタレなのは自分でもよくわかってるけど、それでも・・・」

「葵って桜のこと好きなんじゃないの?というか初デートって」

疑問がつい声に出てしまった。

「は?何言ってんの?俺が好きなのナズナだし。桜は紫苑と付き合ってんの」

頭が真っ白になった。葵のことが好きだと思っていた桜は紫苑と付き合っていて、葵は私のことが好き?

「てことは、私は葵を好きでいいの?」

「好きでいいも何も、もし嫌じゃなかったら俺と付き合ってくれ」


次の日に桜と紫苑に報告したら、喜んでくれた。葵が桜を好きなんだと思っていたと言ったら大笑いされた。

「「葵がナズナ以外を好きになるなんて絶対にありえない」」とのこと。


二人がそんなことをいう根拠がよくわからないけれど、いまが幸せだからそれでいいと思います。


読んでいただきありがとうございました。

感想をいただけると嬉しいです。


ナズナは別名ぺんぺん草という田畑や道端などによく見られる植物のため地味な主人公の名前に使いました。

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