プロローグ
三年前の今日、妹が死んだ。自殺だ。その理由は分からない。当時は分からず、結局今も分かっていない。だが逆に、分かりやすすぎるほど分かりやすいこともある。
(俺たちは妹を――真紀を見捨てたんだ)
もしくは反対に、妹に見放されたか。妹はいつだって正しかった。歪なこの世界は、だから彼女と相容れることができなかったのかもしれない。
彼はその事件によって以前と少し変わった。正しさを失ったこの世に、真面目に取り組む意思をなくしたのだ。規範に意味を見出さず、勤勉さに価値を置かない。置くことができない。ある意味では世捨て人のような考え方をするようになってしまった。
もしかしたら罰のつもりだったのかもしれない。妹を死に追いやった原因かもしれない自分を痛めつけていたということなのかもしれない。無駄なことだ。そんなことをしてもなにもならないというのに。
それでも彼はひたすらに苦痛の中を空虚に生き続けた。
そして、生き続けて、三年後。現在。
彼は今、走っている。
(この……!)
前を行く相手を捕まえようと手を伸ばす。距離としてはあともう少しで届いていたはずだったが、
「……!」
右からの急な爆発で彼は平衡を失った。その間に敵は距離を再び稼いで逃げ去っていく。彼は体勢を立て直し、敵が階段を駆け下りるのを確認すると、窓に寄って開放した。そして縁に手をかけ四階から一気に飛び出す!
――柔らかな風に包まれて、彼は。こんな非常事態にも関わらず、空に妹の姿を見た。
◆
これは、高校生平川真司にとっては、戦い、受け入れ、前に進む話。それから三人にとっては……ぶつかり合い、探り合い、そして見つけ……やはり前に進む話だ。




