【8】
館につくと、老人はにこやかに二人を迎え入れてくれました。
ニコルは早速、昨日帰ったばかりだというのに、今日もやってきた訳を話しました。
「ふうむ、弟にも、願いの木の実を。
ならば、ニコルと同じように働いてもらわねば公平ではないな」
そう言われて、二人は懸命に働きました。
ロニーはときどき、疲れた、休みたい、などと言いましたが、ニコルも手を貸してやって、その日の仕事を終えました。
仕事の後は、以前のニコルと同じように、本のたくさんある部屋で過ごしました。
ロニーはほとんど本を読んだことがなかったので、一文字ずつ、ゆっくり、ところどころつっかえながら読みますから、すぐにニコルに交代して、じっと聞いている事になりました。
よくわからない難しい話というのは、眠くなってしまうものです。
慣れない家の仕事を懸命にこなして疲れていたロニーは、すぐにうとうとと眠ってしまいました。
ロニーは、ニコルの半分ほども働く事はできませんでしたが、二人して館に泊めてもらった翌日、老人はロニーを屋敷の裏に連れて行き、ニコルの時と同じように、願いの叶う木の実を食べることを許してくれました。
ニコルはほっとして、ロニーが枝になったままの真っ赤な木の実を口に含むのを、ドキドキしながら見ていました。
「さあ、ロニー。なんでも叶うから、願いを言ってごらん」
ロニーは、口の中の不思議な良い香りに驚いていたようでしたが、老人の言葉に顔をあげ、ニコリと笑って願いを告げました。
二人の兄弟は、生まれ育った家に帰ってきました。
父親も帰っていて、母親から二人が出かけて行った事を聞き、帰ってくるのを待っていました。兄弟二人の表情を見て、両親はお互いに顔を見合わせ、首をかしげました。
弟のロニーは満足げににこにこと、兄のニコルは、今にも泣きだしそうな顔をしていましたので。