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魔法の木の実  作者: 羽月
5/9

【5】

 翌朝、空は晴れ渡っていました。

 ニコルは立派な朝食をいただき、せめてものお礼にと、家の事をあれこれと手伝いました。

 くるくると動き回るニコルを、老人はにこにことみていました。


「はきはきと動いてくれて、助かるなあ。

 すっかり頼りにしてしまって、疲れただろう?」


「いいえ、家でもこれくらい、いつも働いていますから、お安いごようです」


「そうか。実はな、もう一つ、どうしても頼みたいことがあるんだ。

 それをしてくれたら、お礼をしよう」


「僕は命を助けてもらったんです。

 泊めていただいて、ごちそうまでいただいて、この程度のお手伝いではお礼のうちに入りません。

 してもらいたい事、って、なんですか? 僕のできることなら」


 老人はゆっくりと頷き、ニコルをとある部屋に連れて行きました。促され、扉を開けて、ニコルは息をのみました。

 そこには、見渡す限り本がありました。

 壁がすっかり見えないくらい、四方の棚に本が収められ、部屋中に迷路のように立ち並ぶ棚にも、ぎっしりと本が並んでいました。

 本は、とても貴重なもの。ニコルの家には、古びた本が数冊あるだけでしたので、圧倒されてしまいました。

 老人は立ちすくむニコルの背にそっと手を置き、近くの棚から一冊の本を取り出しました。


「最近は、目が弱ってしまってね、本を読むのが難しいんだよ。

 これを読んで聞かせてくれないか」


 ニコルは差し出された本を恐る恐る受け取り、そっと表紙を撫でて、ドキドキする胸を抑えながら何度も頷いて応えました。


 それから、夜までずっと、二人は陽のあたる窓辺で、本を読んで過ごしました。

 ニコルは字を追うのに慣れていましたので、すらすらと読み、一区切りすると、老人がその文章に、様々な考えをつけたして話してくれました。ニコルが初めて触れる、深い、深い知識の泉を覗き込んでいるような、静かで濃い時間でした。

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