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第八話

 清雅は剣を襲い掛かってくるスライム達に向けたのだが…


「さて、剣を出したは良いが、俺、剣なんて最近全く使ってねぇや。まぁ、思い出しながらやるとしようかな」


 そんな事を呟き、飛び掛かってくるスライムを避けながらどうにかして剣に当てようとして、相手の飛んでくるであろう場所に剣を振るのだが、まったく当たらない。


「むぅ、当たらねぇな…やっぱ忘れてるなぁ。やっぱり剣を当てるより拳を当てた方が良いか?たぶん魔法付与出来るだろうし…いや、そうしよう」


 そう言うと、清雅は素早く飛んでるスライムの着地するであろう場所に剣を投げた。その剣は、見事にスライムに刺さり、一気にスライムを焼き切った。


 そして、清雅は拳に冷気を纏わせ――――たぶん水魔法だな――――飛んでくるスライムに、思いっきり拳を振った。清雅はチート補正で筋力も上がっていると思ったが、そのスライムは拳に当たると、液体のように弾けながら霧散していった。


「……物理しょぼい!?筋力に補正は無いのか!?いや、それ以上に転生前より筋力下がってる!!…これは…魔法による遠距離攻撃しかねぇな。捕まえるなら凍らせるのが一番か?」


 そう考えた清雅は、言うが早いか、自分を中心に、一番遠いスライムを目安に円を描くように凍結させた。木までが凍って、触れてみると数秒で手が赤くなるくらいに冷たく、よく見ると冷気の霧を薄らと出し、ここら一帯は別世界のようだった。ちなみに、効力範囲はおよそ2m位だった。


「捕獲数13体位か…にしても、初戦闘が余裕の即殺って、全く、チートもいい所だぜ。…でも、筋力が落ちてるのが難点か…まぁ、このくらいがちょうどいいのかな。後、闇とか光も気になるんだが、ここら辺は良く分からないからもう少しフィアに聞いてから使ってみよう。たぶん魔法は全属性使えるだろうしな」


≪あ、終わった?≫


「終わったぞ。っつか、お前は何やってんだよ?」


≪えっと、寝てた?≫


「なんで疑問形?…とにかく出て来いよ」


≪はいはい≫


 そう言い、清雅の影から出て来た狼は、


≪…なにこれ…≫


「原因は俺だな。取りあえず、これを持っていくのは任せたぞ。縄を作るなら水の方が良いかな?」


 狼が困惑している間に、清雅は水を魔法で創り出し、凍ってるスライムに縄状にした水を突き刺すと、固まってる狼の首輪に繋げた。


「よし、行くぞ、狼」


≪…ごめん、動けないや≫


「…はぁ、しょうがないな、半分持ってやるよ」


 そう言って5体位を持つと、風魔法で少し浮かせて軽くしてから進み始めた。


≪少し軽くなったけども…やっぱ重いな~…≫


 そんな感じで、狼はフィアの所にたどり着くまでぶつぶつ文句を言っていた。




――――一方その頃、フィアは――――


「さっきからセイガの行った方から強い光とか轟音とかしたけど、大丈夫かな?」


 そんな事を言いながら木に寄り掛かり、ぼんやりと干し肉を少しずつ食べながら清雅が戻ってくるのを待っていた。


「一応調味料は有ったけど……良く考えたらどうやって捕獲するんだろう?あの時は街で見つけて面白そうだったから食べてみただけだからなぁ。どうやって捕まえるのかなんて知らないからなぁ」


「いや、知らないのに行って来いってのはどうかと思うんだが?」


 いきなり横からかけられた声に、フィアは少し驚き、声の主の方に顔を向けると、少し怒っているであろう顔の清雅と、倒れてる狼がいた。更にその二人の後ろに、氷の塊が十数個あった。


「あ、おかえり。えっと、その氷は?」


「お前に捕って来いって言われたスライムだよ」


「え?捕ってこれたの!?この短時間で!?」


「そうだけど?」


「そ、そう…とりあえず、それを……焼いたら蒸発しちゃうから…生?」


「生?って聞かれても困るんだが…それって生で食っても良いもんなのか?」


「さぁ?食べてみれば分かるんじゃない?……先にセイガが食べてよ?」


「俺が毒見をするのか!?……まぁ、毒を食った程度じゃダメージなんて微塵もないだろうけども……」


と、清雅が頭を抱えながら悩んでいると、何時の間にか小さく切られてるスライムの氷を口に押し付けてくる。


「ほれほれ、食べなさいよ」


と言いながら右手で押し付けてくるフィアを見ていて、こいつ…手ごと食ってやろうかと思ったが、押し付けてくるフィアの手から氷を奪い取り、口の中に放り込んだ。


「むぐむぐ……」


 清雅は警戒しながらも、ゆっくりと咀嚼した。触感は、数cmは凍っているためかき氷のような感じなのだが、途中から弾力のあり、グミのような触感だった。だが、それよりも…


「んぐっ…えっと、味が無い…」


 そう、味が無いのだ。いや、無いというよりも、見た目通り氷の、つまり水のような味なのだ。


「やっぱり?」


「やっぱりって、てめぇ…分かってたのか?」


「いや、たぶんそうかなぁ。って思ってただけ。あ、次はコレをかけてみて?」


 そう言ってフィアが渡してきたのは、白い粉が入っている小瓶だった。


「?なんだこれ?」


「砂糖…のはずよ?」


「はずって…てか、かけてみるって言っても、凍ってるのにどうやって?」


と言いながら俺は、凍ったスライムの山を見る。


「少し解かせばかけれるでしょ?」


「むぅ、やってみるか…」


 そう言い、炎剣を作り出してスライムの一部を切り、大きい方の塊の解けた所を再び凍らせ、切り取った方の解けてる所に、フィアから渡された白い粉を少しふりかけて、食べてみた。


「むぐむぐ……」


 白い粉をかけたそれは、さっきのような触感に白い粉――――砂糖の甘さが混ざり、普通にグミのようだった。


「…うまいな…」


「そう?じゃあ、私も食べてみようかしら……」


 そう言いながら、フィアも食べ始めた。そんな感じで、本日、異世界初日最後にして、最初の食事は終わった。




 ちなみに、狼はいつの間にか清雅のポケットから干し肉を取り出して食っていた。それに清雅達が気付いたのは食い終わった後、狼が隣で寝始めたあたりだったのだが。

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