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第七十八話

 燃える村。そこをヘルハウンド達の猛攻をかわしながら走り回り、清雅は見つける。


「へぇ…親玉か?」


 巨大なヘルハウンドを。


 明らかに雰囲気が違い、大きさだけでなく、強さもひしひしと伝わってくる。


 その時には、なぜか他のヘルハウンド達はいなくなっており、一対一のような状態になっていた。


「こいつを狩れば他の狼は散らばるか…なら、倒す!」


 火の粉が舞う中、清雅は飛び出し、瞬間的に作った氷の剣を振るう。


 が、想定外の事が起こった。


 飛んでくる燃えている矢。清雅は咄嗟に氷の剣で防御する。


 ジュッ!と音をたてて矢が止まり、落ちていく。


 しかしそれと同時に氷は溶け、剣としては機能しなくなる。


「矢…!?あいつ事態が何かした様子はなかった…なら、もう少し試してみるか!」


 水を生み出し、限界まで圧縮させて放つ。その威力は恐ろしいものであると容易に想像できるだろう。


 ヘルハウンドはそれを最小限の動きで避け、逆にこちらに近づいて前足で払おうとしてくる。


 清雅は瞬時に後ろへと下がるが、前足と共に現れた熱風で目が一気に乾燥する。


「くっ…なら、これで!」


 あえての炎の槍。それはヘルハウンドに向かうが、食われてしまう。


 正直思ったところに当てられず、成果が出なかった。ならば、と考え、


「……これはどうする?」


 右手を上から下に降り下ろす。


 瞬間、落ちる雷。それはヘルハウンドに襲いかかり――――











 引き裂かれる。




「そこかぁ!!」


 引き裂かれた雷を目にした清雅は、腰に差していた剣を引き抜き、一気にヘルハウンドの真上に飛ぶ。すると、そこには誰かがいるようだった。


 清雅はその正体を考えるよりも先に、雷撃を放つ。


 しかし、それは一本の矢に引き裂かれる。いや、



 散らされる。




「風か!?」


 一瞬感じた風の流れ。だが、確認する間も無く第二射が放たれる。


 清雅は瞬時に作った、少し小さいくらいの氷の壁で防ぐ。


 ガッ!と音をたてて矢は刺さり――――



「袋!?」


 矢に付いていた袋に火の粉が当たると同時、


 ドゴォッ!と音をたてて清雅は吹き飛ぶ。



 地面を一、二度バウンドし、民家に当たって止まる。


「つぅ……全くもって想定外…あそこで爆薬か…咄嗟に風で防いでもこの威力…強いな…」


 しかも、ほとんど上に乗っている人物の攻撃だ。


 雷撃を防ぐだけの能力があり、且つ道具を使うだけの知恵もある。力任せで戦わないことはそれで十分理解でき、戦術を練るだけの知恵もあると思われた。


「見た限り、武器は弓矢と槍…遠中距離か…接近するまでにあの矢の雨を越えて、槍もかわす必要がある…大物だけを仕留めようとしても矢の雨と雷撃阻止で決定打無し…どうするか…」


 清雅は考えるが、結論を出さずにとりあえず剣を持ち直し、再戦を挑む。


 振るうは圧縮された水刃。


 それは、ヘルハウンドから飛び降りてきた人物に咄嗟に向け、振るわれた槍によって砕かれてしまう。


「チィッ!だが、降りてきたなら!」


 そう言うと清雅はヘルハウンドに向かって雷を落とす。


「無理。当たらないよ」


 声が聞こえ、その言葉の通りにヘルハウンドが雷をかわす。


「んなっ!!」


「エンは雷より速いもん。当たらないよ」


「そうかよっ!」


 清雅は持っている剣を横に振るい、人を斬ろうとする。


 しかし、それは空しく空を切る。


 改めて見ると、その人物はフードを深く被っており、顔が見えないが、明らかに小さく子供のように見える。


「すばしっこい…なら、その機動力を()ぐ!」


 地面を伝ってフードの人物に向かう氷。


 しかし、当然のように避けられ、弓矢による反撃まで飛んでくる。


 清雅は風で横殴りにし矢を払うと、雷撃を放ちつつ一気に距離を詰める。


 フードは雷に気を取られ、雷を槍で散らしたときにはすでに清雅は正面にいた。


 縦に振るわれた一撃。それは紙一重でかわされるが、フードをギリギリ捉え、頭から外す。


「ッ!?」


 清雅は思わず距離を取る。


「ミスした…斬られるなんて…」


 邪魔になったフードを外しつつ、()()は言う。


 中学生くらいの身長で、紫色の後ろで結ばれている髪と烈火のごとき赤色の瞳。肌は若干黒い、そんな少女だった。


「お前、強いな。だから、本気出す」


「ここまで本気じゃない宣言かよ…」


 直後、放たれた一本の矢。清雅はそれを見ると、姿勢を低くして前へと走り出す。


 それを見た少女はすぐさま槍を清雅に向かって突いてくる。


 清雅はそれを紙一重でかわし、剣を横に振るうが、少女はふわりと、想像以上に高く跳んで回避する。


「グッ…!」


 少女は回避した時、低い姿勢のままだった清雅の背中を踏みつけていったのだ。


 そのせいで清雅の姿勢は崩れ、転びそうになる。


 清雅はそのまま転がり、振り向くより先に前へ更に転がる。


 直後、先ほどまで清雅がいたところに矢が刺さった。


「ケホッケホッ……さて…俺だけで勝てるか…」


 起き上がりつつ、彼は呟く。


「エン。援護、お願い」


 少女は大きなヘルハウンドに声をかけ、また清雅に向き直った。


 二人は一度深呼吸をし、しっかりと相手を見据えた後――――







 両者の攻撃が走る。

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