第七話
さて、さっきから全く進んでない気がするが気のせいだろう…いや、だって未だに森の中を彷徨ってるんだぜ?どう考えてもおかしいだろう…と、清雅はそう思い、声を出す。
「なぁ、この森ってどんだけ広いんだ?」
「あ、あれれ?この森、そんな広くないはずなんだけどなぁ?」
「ほら、もう日が傾いて朱く輝いてるんだが?」
「あぁ、また迷子…これで3日目…」
「は!?3日目!?なんでそんなに迷ってんだよ!!」
「ふ、ふふふ…おかげで食糧がもうほとんどないわよ……」
「え、どうすんのさ…さすがに腹減ったぜ…」
「ガウ(≪まったくだよ≫)」
「で?食糧の当てはあるのか?」
「いや全然無いわよ?」
「…んじゃ一応聞いておくが食い物は?」
「えっと…干し肉が4枚?」
「…………」
「…………」
「えっと、4枚?」
「うん、4枚」
「……それ平等に分けられなくね?」
「そうね」
「どうするのさ?」
「……あなたが何か捕って来なさいよ」
「え~…しょうがないか…で?何が食える魔物なんだ?」
「えっと…たしかどっかでスライムを食べてる所が在った気がするわよ?」
「え?あれ、食えるのか!?」
「食べれるらしい…ていうか、私も食べさせられたのよね…意外に…おいしかったわ…」
「そうなのか…ま、とりあえず捕って来てみるわ。方法は…分からんが、とにかくやってみるぜ」
「行ってらっしゃい。私はここで待ってるから」
「おう。ってか肉、二枚一応くれ」
「え、まぁ、いいわ。持ってきなさい」
そう言うと、ポーチの中から干し肉を取り出し、それを投げてきた。
「うお、おい、投げんなよ。貴重な食糧なんだろ?」
と言いながら干し肉を受け取る。
「まぁ、取れたから問題ないでしょ?」
「そうだけどさ…ま、いいや、行ってくるわ」
「じゃね~」
そんな感じで見送られながら清雅は森の中に入って行った。
「…さて、どうすっかな……」
≪あいつは魔法のほとんどは効かないけど、どうする?≫
「どうするって言われても…凍らせるか?」
≪出来る?≫
「出来るかどうかって言うか、やらなくちゃいけないんだよなぁ…」
そんな風に、話しながら――――第三者から見るとどう考えても独り言を喋ってるアブナイ人なのだが――――歩いていると、後ろからボトリと音がした後、清雅を囲むようにボトボトと音がし、気付いた時にはスライムに囲まれていた。
「……うわお…これ、無事に帰れるんだろうか…」
と顔を引き攣らせていると、
≪………頑張って≫
そう言い残し、狼は清雅の影の中に消えて行った。
「あの駄犬…逃げやがった……」
と、愚痴ってると、スライムがじりじりと近づいてくる。
「っと、それよりも、先にこっちを解決しねぇとか。まぁ、実験に付き合ってくれよ?液体生物共」
と言いながら飛んでくるスライムを、体を右にずらして避けた。
「さて、まずは氷以外の魔法…雷から試してみるか。イメージは…弾丸だな」
そして清雅は右手の人差し指と親指を立て、銃のようにし、襲いかかってきたスライムに向けた。
「…詠唱ッポイのやってみるか…やるなら中二チックなのが良いから…ん~…『雷よ、我が進む道に立ちふさがる者を打ち砕く弾丸となりて顕現せよ――――ライトニング・バレット!!』」
すると、右手の人差し指が黄色く光りを放ち始め、直後、直視出来ない位に光り、反射的に目とつぶったと同時に、パンという軽い音が鳴り、目を開けた時にはスライムがいた所は、黒い焦げ跡が残っているだけだった。
「うわお、想像以上の高火力だな。…やっぱり俺にはネーミングセンスねぇな…もう詠唱は余りしない様にしよう…ま、とにかく雷も使えたから次は火でもぶちかましますかね」
そう言い、周りを見渡し敵の数を改めて確認してみる。
「一、二、三――え?15体!?そんないるのか!?…倒せるか?」
≪頑張れ~、今の攻撃力を見る限りふざけ過ぎなければ大丈夫だと思うよ~≫
「おい、サボってんじゃねぇよ。お前も戦えねぇのか?」
≪攻撃が効かないのにどうやって?≫
「成程な。じゃあ仕方ねぇか。取りあえず、5体くらい捕獲出来りゃ良いかな」
≪じゃ、頑張ってよ~≫
「はぁ、ま、良いか。…この狼の名前でも考えながら戦おうかな。なんか楽そうだし」
と、この危機的状況でのんびりと狼と喋り、ちょっと余裕ができた清雅は試しに無詠唱で炎の剣を作ってみた。
「……お?意外にアッサリ出来た?」
アッサリ出来たことに清雅は少し驚いたが、とにかくスライムに炎剣を向け、
「さぁ、狩りを始めるか」
――――一方その頃フィアは――――
「あ、そういえば、スライムって味が無いから調味料とか必要なんだった。どうしよ、持ってたかな…ま、無かったら味無しグミよね。まぁ、たぶん味がなくても食べれるわよ…ね」
そんな事を言いながら、一人黙々と焚火の用意をしていた。……今日はここで寝るそうです。