第七十五話
そんなことがあって、今はプリムローズも一緒に旅をすることになったのだ。
「吸血鬼の弱点なんて覚えてないぜ……雨って流水扱いなのか…いや、確かに動いてるけれども」
「それなりに強いんだけどね。まぁ、真祖じゃないならそんなものでしょ。いくら純血でもね」
「そんなもんなのか?」
「そんなものよ。吸血鬼は晴れてる夜の王だからね。昼間と雨の日は無能よ」
「建物の中なら普通に戦えるからね!?」
「屋内じゃないと使えないってことは、俺達の旅では役立たずってことだから」
「な、なんですって~!?」
「……本当に、なんで連れてきたの?」
「なんでだろうな」
たぶん、ノリと勢いだったんだよ。なんて、口が裂けても言えない清雅は、目を逸らしながらそう言う。
「なぁ、そういえばさ、あの箱はどこから出てきたんだ?」
あの箱とは、現在ライラが背負ってプリムローズが入っている、宝箱のような箱のことだ。
「ライラがどっかから持ってきたんだと思うよ?」
「色々持ってるな……っていうか、フィアもなんか大きな箱持ってんじゃないのか?」
「出そうと思ったときにがすでにあの箱に入ってたから」
「そうか……なんか、今のあいつを見てると、吸血鬼ってよりもミミックだな……」
「どうみても宝箱だしね」
宝箱の隙間からこちらを見ているプリムローズを見て、即死魔法でも放ってきそうだ。と思う清雅。
「小さいコイン落とすかな?」
「アイテムもらうために狩り尽くさなくちゃいけなくなるだろ」
突然混ざってきた優奈の言葉に速攻で突っ込む清雅。
「初期の頃は即死トラップと勘違いするほどの隠密スキルだからね……成長してから、よくヒャッハーしたよ」
「するなよ怖いよつか挑むのかよ」
「命中率の低い攻撃なんか怖くないね!」
「二人の会話が全くわからないけど、ミミックは油断してたら一瞬で殺されるよ?」
「「…………」」
頬がひきつる二人。
「ちなみに、死因は?」
「頭を挟まれて一瞬で、こう、コロン……と」
「「ひぃぃぃ!!」」
ある意味即死魔法の方がマシだと思うが、確かにその方が楽だよな。と変に納得する。
「それにしても……本当にミミックみたいよね……ミミックの中って小さい子どもみたいなのがほとんどだし」
「え……?」
「そうなのか……?」
「そうだけど……知らなかったの?」
「「全くと行って良いほど」」
「そう……じゃあミミックがどういう魔物かも知らないわけね?」
「そういうことになるな」
清雅の言葉に同意するようにうなずく優奈。
「はぁ…いい?ミミックは、幼くして死んでしまった子どもの霊よ。だから、彼らはかくれんぼの気分で隠れていて、見つかると恥ずかしいのと悔しいので攻撃してくるのよ。だいぶ理不尽に聞こえるけど、子どもの頃なんてそんなものでしょ?」
「攻撃の動機がそんなものだったなんて…」
「ヤバいな……もうミミックと戦えないかもしれない」
「あめ玉で見逃してくれるのが唯一の救いね」
「あめ玉で良いんだ……」
やっぱり子どもなのか。と納得し、お菓子でも買おうか。と考える清雅と優奈。
「うぅ……そんなかわいいミミックを私は……!」
「まぁ、そのミミックの攻撃で死にかけた魔王がいるけどな」
不意に聞こえたパシアンの声。
「え?死にかけたの?え?見つけられなかったの?」
嘘でしょ?と言いたげなフィアの言葉に、ライラが答える。
「戦う?今ここにいるし」
「ど、どこに?」
フィアが聞くと、ライラは満面の笑みで、
「私よ私。私がミミックよ」
一瞬、空気が凍る。
「いや、だって、箱無いじゃない」
「背負ってるじゃん?」
「あ…それでその箱が…」
「ちなみに、私はちょっと特別なミミックよ?成長してるのはそれが原因だし」
「そ、そうなの…?」
「うん。そうだよ?それで……戦ってみる?」
「絶対嫌!!」
全力で拒否しつつ清雅の後ろに隠れるフィア。
「いやぁ……ミミックって成長するとこうなるのか…でも、霊なんだろ?食事とか必要ないんじゃないか?」
「いやいや、必要だよ?食事は全部魔力に変換されるからね。食べないと存在してられないのよ」
「そうなのか…食事って全部魔力になるのか…ふむ。んじゃ次の疑問。箱から出ても大丈夫なのか?」
「問題ないよ?全体的に半分しか出ないけど、支障は無いかな」
半分……全体的にということは、ステータス半減している、ということなのだろう。もしそうなのだとしたら、彼女の本気は今の倍ということになる。
「強すぎじゃない?」
「最強の一角じゃないの?」
「何言ってるの。私じゃ勝てない人なんていっぱいいるわよ。初代魔王二代目魔王が良い例ね。あの二人はちょっと桁外れだった……」
「ちなみに二代目の方がそいつに殺されかけてたからな」
「魔王に反逆!?」
「それは初めて会った時でしょうが!パシアンも同じようなことやってたでしょ!?」
「お前ほど致命傷を与えたのは勇者だけだろうが」
「あの人が弱かった頃に与えた傷なんて、今だとかすり傷でしょ!?」
「それと同じくらい成長したお前のセリフじゃないな」
「そんなこと無いし。安定の負け組だし」
「はぁ…だから自覚無い奴は嫌なんだ。羨ましいったらありゃしない」
「むぅ……もういいよ。この話は。なかったことにしよう。それが皆のためだよ。うん」
「初代と二代目がすごい気になるけど、いいや。また今度聞こう」
そういえばシャルス達が静かだったが、何をしていたのかと言うと、雨に当たらないように必死に木陰を移動してたらしい。




