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第七十四話

 珍しく雨。この世界に来てから初の雨。


「雨とか、懐かしく感じてしまうのは俺だけだろうか?」


「セイガだけだと思うよ?」


 フィアの突っ込みが清雅の心に突き刺さる。


「いや、でも、事実そんなに降ってないだろ?」


「それはそうだけど…あんまり降られたくないから嫌な気しかしないわ」


「そうだそうだ!私は雨が降ってると動けなくなるもの!雨反対!退場を願う!」


 後ろから元気の言い声が響く。というか、元気を通り越してうるさい。


「そもそも、なんであいつがいるんだ?」


「いや、セイガが許可したからでしょ?」


 そうだった…と、落ち込みながら呟き、朝の事を思い出す。



 * * *



 目を覚ますと、フィアの渾身の一撃を食らった。


 昨日別々の部屋で寝ていた気がするが、気のせいだったのだろうか…


 そして、拳の威力に耐えきれず、清雅はベッドから落ちる。


「あ~…誰だこんないじめを仕掛けた奴は…出てこい。怒らないから…」


 もちろん、出てくる人がいるわけなかった。


「はわわ…セイガがなんでいるのよ……」


「ここ、俺の部屋なはずなんだが…」


「え…?」


 フィアは周囲をキョロキョロと見渡し――――


「私の荷物がなくて、セイガの荷物がある…!ここセイガの部屋だ!!」


「うん。俺が間違ってなくて良かったぜ」


「でも、なんとも思ってない感じのセイガは蹴る」


「なんで!?」


 二、三度清雅を蹴り、フィアは部屋を出ていく。


「うぐぐ…とんだ災難だ…いや、三人もいたからハーレム状態で嬉しかったには嬉しかったんだが」


 そう呟き、自分の影と天井を睨む。


「あはは…やっぱりばれてた?」


「むしろさっきの人にばれなくてよかった…」


「そもそもなんでお前まで居るんだよ」


 影の中にいたのはルーネ。そして、天井にいるのはプリムローズだ。


 二人とも清雅にバレると同時に清雅の近くに出る。


「いやぁ…ここが一番安全かなって思って。まぁ、まさかあんなに人が来るなんて思わなかったけど…」


「大体いつもそんな感じよ。本人は全く気付かないで爆睡してるけど」


「貴方もその中の一人でしょ」


「まぁね」


 さっきから不穏な言葉が出て、寝ている間に一体何があったのか不安になる清雅。


「なぁ、俺が寝てる間に何人来たんだ?」


「……私たち含めて5人くらいかな?」


「……あと二人誰だ…」


「ルーリスとライラかな?」


「……その二人は?」


「ルーリスは壁際にいたよ?」


「今もそこで寝てるじゃない」


 言われて見て見ると、そこには確かにルーリスがいた。


「……お~い、何してるんだ~?」


「いやいや、プリムローズも言ってたけど、セイガのそばって案外安心できるのよ。よくわからないけどね。それで皆ここに集まるの」


「意味わかんねぇ…俺が何したよ」


「深い理由もなくなんとなく助けるところじゃないじゃない?」


「雰囲気とか?」


「そんなので安心されても…」


 清雅はため息を吐き、プリムローズを見ると、


「で、根本的にお前はなんでここにいるんだよ」


「え…?ダメ?」


「いや、お前はこの村に住んでるんだよな?」


「別に、居心地が良いから居ただけだけど?」


「……じゃあ、なんで俺達と居るんだよ」


「居心地が良いからでしょ?」


 何を当たり前なことを。と言わんばかりの表情に頬をひきつらせる清雅。


「ねぇねぇ、私も貴方たちについてって良い?」


「……何か企んでるのか?」


「何もない村よりも、何かに巻き込まれやすそうな貴方たちに貴方たちについていく方が面白そうじゃない」


「そうか…面白そうなら仕方ないな。それに勝る理由無しだ」


「……もしかして、セイガ?この子も連れていくの?」


 ここまで静かに聞いていたルーネが突っ込む。


「うぐっ……別に問題はないだろ?」


「別に良いけどさぁ…どうなっても知らないよ?」


「まぁ、さすがに人数が多すぎる気がしなくもないけど、大丈夫だろ」


「それで本当に良いの?後で困っても知らないよ?」


「ん~…その時はルーネ母さんに任せるよ」


「え!?私に投げるの!?」


 ルーネ悲鳴を上げ、満面の笑みで清雅は押し通す。


「ちなみに、拒否権は…?」


「まぁ、あるけど……どうなっても知らないぜ」


「酷い!よく分からない何かを盾にされた!!」


 よく分からないけど、何か大変なモノだと本能的に察したルーネは、悔しそうな顔で清雅を見る。


「はぁ…フィアが何て言うか…」


「あぐぅ……そこを突かれるとダメージでかいんだが…」


「そんなに怖いの?フィアって」


「いや、清雅が怒られるのが嫌なだけだと思う」


「えぇ……」


「まぁ、元魔王だけどね」


「えぇ!?ちょ、なんで魔王がそんな扱いな訳!?」


 プリムローズの反応は正しいかもしれないが、このパーティーにとっては、


「フィアより強いのが多いからじゃね?」


「どんなパーティーよ怖すぎるんだけど!?」


「勝手に集まってきただけだけどね」


 気付いたら大人数になって、いつの間にか強い人が多くなっていったというのが真実だったりする。


「よし。じゃあ最終確認だ。俺達と来るのか?」


 清雅は右手を差し出し、


「……行くわ」


 プリムローズはその手を取るのだった。

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