第七十三話
今回は短いです
村に戻ると、ライラ達が待っていた。
「ただいま…って、なんか俺たちよりすごい状況じゃね?」
清雅は軽く言うが、地面がえぐれ、ひっくり返り、謎の黒い液体のようなものが広がっている光景は、恐怖を感じさせるには十分だった。
「いやぁ、どうやって音を最小限にして返り血を寝てる娘達にかからないようにするかが一番苦労したね」
「お前、ほとんど何も考えてなかっただろうが」
「はぁ…はぁ…なんで私までこんな事しなくちゃなのよ」
様子を見るに、この惨状の原因の主はライラらしかった。大体予想通りである。
三人の中心となっている場所には、ルーリスとシャルスが寝ていた。
「本当に返り血一つないな」
「あったりまえでしょ。私を誰だと思ってるの?」
「………パワー馬鹿?」
「酷くない!?」
いや、だって、そんな雰囲気しかしないし。とは突っ込まない心優しい清雅。
「そ、それで、何があったんだ?」
「たぶん清雅達と同じ奴だと思うよ?あの黒い奴」
「そうか…でも、簡単に撃退出来たように見えるけど…?」
「あれくらいならなんとかなるよ。良く戦ったし」
「え?昔はああいうのがいっぱいいたってこと!?」
ライラの言葉に驚いたように声を上げるフィア。
「いやぁ…あのときはすごい強いのがいっぱいいたわよ~?」
「まぁ、それ以上に仲間が強すぎて敵になるようなのがいなかったけどな」
「パシアン。それは言っちゃダメじゃない?」
珍しく突っ込むライラ。
「それで?そっちはどうだったの?」
ライラの質問に、清雅は笑顔で、
「完璧だ。ちゃんと無傷で連れて帰ってきたぞ」
そう言って、三人はライラの前まで行って背負ってきた二人を二人をおろす。
「よしよし。大丈夫だね。しっかし、どうしようか。宿屋も無くなっちゃったし」
「そういや、あいつらのせいで追い出されたんだったな…」
「全く、迷惑な話だ」
パシアンはため息を吐き、ライラの方を見る。
「どうするんだ?」
「とりあえず、動ける人は手伝って。荷物とそこで寝てる四人を抱えて少し待機。もう私の部屋を使いましょ」
「了解」
ライラに言われるままに行動して、家を生成し終わるまで待ったあと、中に入る。
* * *
「で、これからどうしようか」
頬杖をつきながら、清雅は聞く。
今、この場にいるのは清雅とフィアだけ。パシアンは外で見張り。その他は寝ている。
「行き先は変えないで行くでしょ?ルートも最短で。でも、問題はあの黒い悪魔よね」
考えても、答えは出ない。そもそも、なんであの悪魔が現れて、二人をさらって行ったのか。不可解。そういわざるを得ない。
「ライラに確認した結果も、優菜とクロノワールに異変は無かったし」
「う~ん…なんだろうねぇ…」
「……もしかして、情報の回収?」
「……なんの?」
「優菜のじゃないか?」
勇者の力の情報。それを研究すれば、勇者のような力を持った怪物が出来上がるかも知れない。ということだろうか。
「なんにしても、さらった奴は容赦なく叩きのめす。完膚なきまでに」
「……珍しく、怒ってる?」
「そりゃ、知り合いをさらわれて怒らずにいられるか」
若干怖い顔をしている清雅を見て、フィアはぽつりと、
「……清雅のそういうところが良いと思うのよね」
「褒めてくれてありがとう。これからもそう言われるように頑張るよ」
心の中で思っていただけのつもりだったらしく、顔を赤くさせながらフィアは、
「うぇ!?い、今声に出てた!?」
「バッチリ。まぁ、嬉しいから良いけどな」
「あわわ…お、おやすみ!」
「おぅ、おやすみ。じゃあな」
すごい勢いで走っていくフィアを見送り、清雅はその場に一人残される。
「悪魔の正体…誘拐理由…なんもわかんねぇけど、ま、なんとかなるか」
特に理由もなく、漠然とそう思うのだった。




