第七十二話
暗い森の中を走り抜け、清雅達は洞窟の前にたどり着く。
「ここか?」
「うん。ここ」
そこは、まさに悪魔の洞窟といっても良いだろう。
洞窟の上部には鍾乳石が垂れ下がっており、まるで怪物の口のような造形をしていた。
「いやぁ…雰囲気あるな」
「ふざけたこと言ってないで行きましょ」
「おう」
ルーネの先導の元、洞窟の中へと入って行く。
「しかし…案外何もないもんだな」
「何言ってるの?後ろから五匹くらい迫ってきてるよ」
「は?」
ルーネに言われ、耳を澄ませてみる。すると、確かに何か音が聞こえる。
「…羽ばたく音…?何だ?」
「蝙蝠だとおもう」
「ケイブバット?でも、それなら羽ばたく音が大きすぎるような…」
一度三人は振り返りながら立ち止まり、向かってくる存在を視認する。
それは、確かに蝙蝠だった。だが、その大きさは清雅と同じかそれ以上の大きさを持っており、その瞳は深紅に輝いていた。
「デビルバットじゃない!!あいつら苦手だから逃げる!!」
「フィア!?ったく、何が面倒なんだよ!?」
蝙蝠たちを見ると同時に逃げ出したフィアとルーネに驚きつつも二人を追う清雅。
「あいつらはめちゃくちゃしぶといの!!生命力が高いから中々死なないの!!だから後でまとめて吹き飛ばすから今は奥に行く!」
「あぁ…なるほど…あいつと同じくらいには強いのかな?」
先ほどぶっ飛ばした悪魔を思い出しながら走り続け――――
「っとぉ!広い所に出たな…」
「で、本体のご登場って事ね…」
かなり広い場所。大空洞ともいえるその場所の奥には、全く同じような容姿の悪魔がいた。
「後ろに…二人もいるな」
周りと違い、腰ほどまでの高さがある台のような場所に二人は寝かされていた。
背後からは、先ほどの蝙蝠が迫ってきているようで、音がどんどん大きくなる。
「んじゃぁ…ルーネ。どっち行く?悪魔か、蝙蝠か」
「蝙蝠位なら私一人で十分。この広さがあれば余裕ね」
「そうか…なら、任せたぞ」
「えぇ、任せといて」
そして、ルーネはそのまま反転し蝙蝠たちを待ちかまえ、清雅とフィアは悪魔に向かって走り出す。
「フィア。援護を任せる」
「了解。怪我はしないでよ」
「当たり前だ」
フィアはその場に立ち止まり、素早く弓を取り出して引くと、鏃に火がともる。
「『燃やし穿て』」
ゴゥッ!と音を立てて放たれた赤い閃光は、走っていく清雅の真横を通り抜けて悪魔の右肩に刺さる。
「ナイス!おまけに燃えろぉ!!」
至近距離まで近づいて、炎を纏いながら放たれるアッパーは、吸い込まれるように悪魔の顎にぶつかり、勢いよく吹き飛ばして天井にぶつける。
パラパラと落ちてくる砂埃や石粒などが当たるが、風を操って飛ばす。
「あっさり終わっちゃった?」
「んなわけねぇっての」
フィアの疑問に苦笑いをしながら清雅が答えると同時に収束落下してくる悪魔。清雅はそれを一歩下がって避け、目の前に来るであろうタイミングを狙って、燃える拳を振るう。
ドゴォッ!!と音を発して殴られ、斜めに地面に突き刺さる悪魔。
「凍てつけ!!」
清雅が悪魔を踏みつけると同時に地面から突き上げるように氷が生まれて悪魔を貫く。
「フィア!!」
「分かってる!『食い尽くせ!炎の魔狼』!!」
放たれた矢は、一瞬のうちに狼へと変化し、氷の頂上に居る悪魔に食らいつき、悪魔と共に消滅した。
「ふぅ……なんか、さっき会った奴より弱いような…?」
「考えても仕方ないでしょ。ほら、二人を連れて帰るわよ」
「あ、うん。それもそうだな…って、ルーネは?」
清雅が入口の方を見ると、片っ端から出てくる蝙蝠を食い殺していく狼が見えた。
「………うん。心配ないな。あるとすれば腹壊しそうってくらいだな」
「大問題じゃない」
「うん。じゃあ、俺も手伝ってくる」
「行ってらっしゃい」
清雅は、走ってルーネの元まで行くと、出てきた蝙蝠を冷気を纏った蹴りで吹き飛ばす。
「大丈夫か?」
「全然大丈夫だけど…どうしたの?」
人に戻りながらルーネは聞いてくる。
「いや、なんかまだ時間かかりそうだったから加勢しに来た」
「そうなの?じゃあさ、一気に吹き飛ばせない?私だと一体ずつしか無理なの」
「おぅ、分かった」
清雅はそういうと、風を操って竜巻を作り、
「『ファイア』!!」
下から上に向かって一気に広がる火。竜巻と混ざって生み出されるそれは、まさに炎の竜巻。勢いよく蝙蝠たちを巻き込み、焼き殺していく。
「よっし。これでいいかな」
「ん~……うん。もういないよ」
「おし。じゃあ二人を連れて帰るか」
「そうだね」
二人はフィアのもとへ向かい、清雅が黒ノワールを、ルーネが優奈を背負ってまた走り出す。
「ん~……でも、やっぱり弱かったんだよなぁ…むしろあれに捕まるっていうのは無いと思うんだけど…」
「まだ言ってるの?」
「そりゃ気になるし…」
「それは私も思う。なんか匂いが違う感じがした」
「むむぅ……一体何なんだ…?あの悪魔。さらった意味も分からないし……」
「特に何か奪われてるようには見えなかったしね」
「むしろ、何かを付けたとか?」
「「…………」」
その可能性に気づき、少し考えて、
「ライラなら分かるかな」
「そうね。聞いてみましょう」
そうして、三人は急いで走る。




