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第六十九話

「ライラ。あいつ?」


「そうッポイ」


 眼下には、広場のようなところの真ん中にわざわざ椅子を出して座っている銀髪の青年を見つける。


「パシアン。降りて」


 ライラの声と共にパシアンは急降下する。


「もう降りるわね」


「ちょ、フィア!?」


 優奈の伸ばした手は空を裂き、フィアはそのまま落ちていく。


「完全に頭に血が上ってない?」


「初めて見るわね。あんなフィア」


「よっぽどセイガが気になるんじゃない?」


「一番怒らせたらダメな相手かな?」


「たぶんね」


 全員は、いつもの様子とはまるで違うフィアに驚きつつ、何も考えていないであろうその無謀な行動に不安を感じるのだった。



 * * *



「ふっ!!」


 フィアが地面に手をかざすと同時に発生する爆発。それは落下の勢いを少し和らげるが、それでもあまり変わらない。


 しかし、フィアはそれ以上何もしようとせず、そのまま落ちる。





 ドゴォッ!!





 轟音を上げながらフィアは着地する。


「はぁ…足埋まっちゃった。だから高い所から落ちるのは面倒なのよ。動けなくなるんだもん」


 フィアは呟きながら、鞄の中から一具の弓矢を取り出し、青年に向けてつがえる。


「貴方がさっきのグールを送り込んだ犯人ってことで良いかしら?」


 フィアの質問に、青年は足と手を組みながら答える。


「そうだが、どうする?」


「そう。さようなら」


 容赦なくフィアは矢を放つ。


 その矢は火を纏い、青年に向かって一直線に飛んでいく。


 青年はその矢を片手で払いのけ――――



 手が当たった瞬間に爆発し、黒煙を発生させる。



 青年は素早く煙を払う。


 直後、




 再び弓を構えているフィアと、自分を狙っている無数の炎の矢に気付く。





「…へぇ」


 瞬間、一斉に放たれる炎の矢の軍勢。


「焼かれるわけにはいかないからね。『風よ。我を襲う炎を消し去り給え』」


 青年はそういうと、右手の平に風を生み出し、炎の矢を一掃する。






「――――でも、私の放った矢には効かないわ」






 ドスッ!と突き刺さる真黒な矢。


「な…に……?」


 驚きと痛みに顔をゆがめる青年。


「まだやるの?それとも帰る?」


「ハッ!これくらいで私は止まらない!!」


「…慈悲はもう完全になくなったわ。さようなら」


 再び放たれる炎の矢。


「もう私にそれは効かないよ!!『風よ!炎を消し去れ!』」


 青年の言葉と同時に生まれた風が炎の矢をかき消し――――





「それだけ?」





 その後ろにいたフィアが振るった刃に腕を切り落とされる。


「あがぁぁぁ!!な、なんで前に出てるんだ!?弓兵じゃないのか!?」


「馬鹿言わないで。前衛後衛中衛全部できないで魔王になれるわけないじゃない」


 素早くフィアは剣で切り上げ、バッグの中から短い槍を出しながら青年の腹部に突き刺す。


「『燃え尽きろ』」


「いやだ」


 フィアの炎が生み出される寸前で青年は無数の蝙蝠となり槍から抜け出し、炎を躱す。


 その蝙蝠の群れはフィアの背後に集まり、再び青年の形を取り戻す。


「すばしっこいわね。さっさとやられなさい」


「いやだね。さっきも言ったが、ここでやられるわけにはいかないんだ」


「何か理由があるの?」


「…別に、ただ単に暴れたかっただけだが?今まで散々嫌がらせされた腹いせにね」


「…目標が小さい奴。そこは世界征服とか仰々しくて且つ阿保らしい野望にしなさいよ」


 言いながらフィアは再び矢を放ち、今度は槍を投げる。


「さすがに学習するよ」


 青年は矢を避け――――



 青年のいた所に矢が来ると同時に爆発する。



「距離と速度が分かればいつ爆発させればダメージを与えられるかって、普通考えるでしょ?」


 青年は爆発に気を取られ、一瞬硬直する。その瞬間に槍は青年を貫き、


「残念だけど、私たちに出会ったうえでちょっかい出した罰よ。死になさい」


 青年の心臓部分にフィアの拳が当たると同時に青年は焼かれ――――




「さて。これでいいかな」


 青年だった灰を見つめ、満足げに胸を張る。


「あ、そうだ!セイガは!?さ、探さないと!!」


「フィア、ストップ」


 優奈の声が聞こえ、フィアはその場に止まる。


「ど、どうしたの?なんか私不味いことしたっけ?」


「いや、むしろなんでここまで出来たのかが気になるんだけど。って、それは良いとして、よ。どうやって探す気?」


「え、手当たり次第に勢い任せで?」


「随分と豪快な探し方ね…でも、それだと見つけにくくない?」


「ん~…それじゃあ、どうするの?」


「手分けすればいいじゃない。それに、もし敵が残ってるならその方が手っ取り早く倒せるでしょ?」


「それは良いわね!よし、その案で行こう!じゃ、私こっち行くね!!」


 フィアはそう言って、すぐにいなくなってしまう。


「あ、ちょ!!……人の話を最後まで聞かないとか、いつもなら考えられないわね」


「まぁ、それだけ必死だったんじゃない?」


「正直、フィアがここまで強いなんて思ってなかったわ…どうしよ。もしあの時魔王城で戦ってたら私死んでた?」


「かもね。むしろ、ユウナちゃんのレベルでここにいる時点でおかしいのよ」


「そこまで!?いや、これでも強い方だったよ!?あんまり苦労しなかったし!!」


「ん~…それは、たぶん敵が弱かったんでしょうね。ま、フィアちゃんには勝てないわ」


「そんな~…」


 ライラの言葉に、優奈はショックを隠せないのだった。

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