第六十七話
「ちょっとぉ!!どこに連れて行くきよぉ!!」
途中で起きたプリムローズは暴れるが、清雅の力に勝てず、かといってジタバタすると落ちそうなので声を挙げて反抗していた。
「別に、変な所じゃないって。宿屋だよ」
「なんで私を連れて行くのよ!!」
「また襲われても面倒だし、一緒にいた方が監視しやすいし、みんなが知ってた方が良いだろうし」
「私一人なんだけど…絶対信じてもらえないよね…」
「セイガに捕まった時点でいてもいなくても変わらない気がするけどね」
「フィア…それ、どういう意味?」
「言わなくても分かるでしょ?」
「…なんか、変な誤解を受けてる気がして仕方ないんだが」
「そんな事ないわよ」
フィアの意味深な満面の笑みに顔を引きつらせる清雅。何かしたっけな…と考えるが、思い当たる事は無い。
「まぁいいや。さて、着いたぞ」
宿屋の中に入り、中を見渡すと、ルーネと目が合い、
「…セイガ?私の事を虐めたいの?これ以上子供な嫌よ?」
「私子供じゃないよ!?」
「そういう子に限って子供っぽかったりするよね」
後ろからひょっこり現れたライラがプリムローズの頬を突く。
「うわぁ、プニプニしててかわいい!」
「ルーリスにしてたりする?」
振り向きながら清雅が聞くと、
「ルーネが鉄壁すぎて無理!勝てない!」
「しっかりお母さんやってるんだな。ルーネ」
「押し付けてるのはセイガだよ?」
「あ、はい。すいません」
ルーネに背後からがっしりと肩を掴まれて笑みを浮かべて言われ、恐怖でカタカタと震える清雅。
「それで、その子は?」
「あ、あぁ…さっき拾った。というか、襲ってきた」
「ふぅん?じゃあさっきの霧はこの子のか」
にやりと笑いながらライラは更に頬を突く。
「うみゅみゅ…認識操作もついてるはずなのにぃ…」
「経験が全く違うのよ。魔法なら色々くらったし、耐性だってついてるわ。幻覚魔法位で揺らぐ私じゃないわ」
「うぅ~…何よこのチームぅ…完全に外れじゃないのぉ…!」
若干涙目になっているプリムローズ。
「で、その子をどうするの?」
「特に考えてないよ?」
「…いつも通りって事ね」
「なんだそのいつも通りって」
「メンバー追加?」
「え、連れてくの?もう子供の世話は嫌よ?」
「子供じゃないよ!?これでも百年以上は生きてるからね!?」
「そんなに!?」
見た目小学生くらい。それにもかかわらず百歳以上という驚愕の事実に思わず声を上げる清雅。
「そんな驚くことでもないでしょ?私だって見た目通りの年齢じゃないわよ。それに、この子人魔じゃない。百年くらいなら普通よ」
「そ、そんなものなのか…」
「そんなものよ。っていうか、それだけ生きてるなら私とパシアンを知っててもおかしくないんだけどなぁ?」
「え、パシアン…?パシアンって、あのパシアンですか!?」
ライラの質問に反応するプリムローズ。
「あぁ、名前を出せばわかりはするのね」
「そりゃ、三百年前の魔王直属四天王の一人じゃないですか!!分からないわけないですよ!」
「おぉっ!その頃を知ってるんだ!」
「いえ、親から聞いただけで、私は二百年前くらいに生まれたからその頃を知りませんよ」
「そう。じゃああなたの親は知ってるのね?」
「一応は。でも、何十年か前に失踪したからどこにいるか知りませんよ?」
「そっか、残念。もしかしたら他の人も知ってるかと思ったけど、それなら諦めるしかないわね」
ライラはがっかりしたようにため息を吐き、またプリムローズの頬を突く作業に戻る。
「…そんなに気に入ったらライラにあげよう」
「え、良いの?」
「私の扱いが荷物になってるんですけど!?」
「ほら、受け取れ」
「おぉ!やったぁ!ふっふっふ。これで安眠は確実ね!」
「私が眠れなくて死んじゃう!睡眠不足になっちゃうぅ!!」
プリムローズが泣いているように見えるが、それ以上にライラが喜んでいるので問題無しである。
「セイガってたまに非情よね」
「一の幸せのために十は切り捨てる覚悟で生きてるぞ」
「最悪ね」
「もちろん被害は相手にしか出さないがな」
「微妙な所ね」
清雅が言うと同時に即座に突っ込むフィア。
「なぁ、俺、何かしたっけ?」
「ううん。何もしてないよ?」
「ほ、本当に?本当に何もしてない?なんか怖いんだけど…」
「本当に何もないって。別に、さっきから私の影が薄すぎるなんて思ってないって」
「思ってるじゃん!確かに俺は何もしてないけど!会話に参加してもいいんだよ!?」
「流れ的に、ねぇ?」
フィアに言われ、清雅は苦笑いになる。
すると、
「ええっと、どういう状況です?」
「ライラさん、その子は?」
シャルスとクロノワールが帰って来た。
「ん?あぁ、セイガが拾ってきたの」
「「え?セイガさん、何してるんです?誘拐ですか?」」
「違う!誘拐してない!俺とフィアはそいつに襲われたから撃退して捕まえてきただけだ!」
「「やっぱ誘拐じゃないですか」」
「被害者こっちだよ!?」
清雅がうなっていると、フィアが助け舟を出す。
「セイガの言ってることは事実よ。その子に襲われたし、撃退したし、まぁ、その後連れてきたのはどうかと思うけど」
「途中から弁護諦めてない?」
「だって、事実だし」
「それもそうね」
結局、清雅が少女を拉致した、という事で話はまとまってしまった。




