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第六十六話

 振り返った先にいたのは、金髪で長髪な色白の美少女。鮮血の様な真っ赤な瞳に同色のゴスロリ服を来た少女がそこにいた。


「…お前は?」


「ただの人ならざる者。貴方達には関係ないでしょう?」


 にやにやと笑う少女。何か不気味な気配を感じる。


「ねぇ清雅…もしかして彼女、人魔かもしれないわ」


「見りゃわかる。って言うか、あいつ自身が言ってただろ」


「そうだけど…なんか、普通のとは違う気がするの」


「……まぁ、用心するに越したことはないか」


 清雅が警戒心を強めると、少女はこちらへ歩み寄ってくる。


「ねぇ、貴方達、旅の方よね?ここに何しに来たの?」


 一瞬、少女の瞳が強く光ったような気がするが、とりあえず聞かれた質問に答える。


「俺は観光のつもりだ。ただ、それ以外の目的の人間も居る。これでいいか?」


「え?あ、そ、そうですね…では、次に、貴方は誰?」


 また、少女の瞳が強く光る。今度はその事を確信した。


「そう言うのはまず自分が名乗ってからだろ?って、昔友人に言われた」


「え?え?な、なんで効かないの?」


「お~い。人の話を無視しないで~?」


「え!?あ、はい!えっと、わ、私はプリムローズよ。貴方は?」


「白銀清雅。セイガ=シロガネでも構わない」


「え?どっちです?」


「……名字はシロガネで名前がセイガ。まぁ、好きな方で呼んでくれ」


「はい。分かりました…って!なんで!?なんで私が受ける側なの!?いつもはもう傀儡にしてる筈なのに!」


「…なぁ、ちょ~っと聞いていいか?」


「はい!?なんですか!?」


「傀儡って~…何の事だ?」


「え…?あ、あの…もしかして、口走ってました…?」


「もうバッチリ。思考がダダ漏れだな」


「うわぁぁぁぁ!昔の癖が直ってないぃぃ!!」


 なんか、楽しい子だな。と、和む清雅。その後ろでフィアは少しばかり震えている。


「フィア?どうしたんだ?」


「い、いや…なんか、さっきから霧が濃くなってきてるのよ。何かしら…これ」


 言われて見渡してみると、確かに霧が漂っている。


「ん~…吹き飛ばせばいいか?」


「え?あ、たぶんそれで大丈夫かも。お願い」


「了解」


 清雅は瞬時に風を操って、辺りの霧を吹き飛ばす。


「え?あれ!?私の霧が飛んで行っちゃう!!ま、待ってよぉ~!!」


 なんだか、急に威厳的な何かが無くなったなぁ…と思いつつ、清雅はプリムローズに近づくと、


「『私の霧』ってどういうことだ?」


「え…あの…そのぉ………」


 涙目になりながら、プリムローズは語り始めた。



 * * *



 曰く、あの霧は彼女の種族の特性である魔性の霧。効果としては、あの霧に包まれている人物は時間経過によって判断力を奪われていくらしい。もちろん、人によって必要な時間は変わる……らしい。


 そして、彼女の種族というのは吸血鬼。しかし、彼女自身は吸血鬼の中でかなり変わり者らしく、精神攻撃に弱いらしい。ただし言葉に限る、というのが付くが。


「それで、なんでこんな所にいるんだ?」


「えっと、ここは私がもらった土地だし…むしろ、私からしたら貴方達の方が異物なのよ!!」


「ふぅん?貰った土地ってのが引っ掛かるが…とりあえず、俺達をどうしたいんだ?」


「それは……ん~…ちょっと血を抜かれてもらおうかな…って感じですかね?」


「『感じですかね?』じゃねぇよ!!何さらっと殺そうとしてんだ!!」


「えぇ~?でも、皆私に血を抜かれるの、嫌がりませんよ?」


「それはさっきの霧が原因だろ!?」


「え~?そんなことないですよ~?」


「じゃあ他に何があるんだっての!」


「ん~…じゃあ、一回噛まれてみればわかりますって」


「……まぁ、良いか」


「じゃ、ちょっと失礼しますね」


 勝った!と言わんばかりに一瞬頬を緩めるが、それは誰にも気づかれる事は無かった。


 ガブリッ!と噛みつかれると同時に、清雅は顔をしかめる。


「……普通に痛いんだが…」


「!?」


 数分経ってからぼそりと呟いた清雅の一言に、プリムローズは驚いて離れる。


「え…?あれ?毒が効いてない…?」


「あぁ…神経毒か何かだったのか…まぁ、原因は分かったし、良いか」


 噛まれたところに手を当て、治療をする。


「ん~っと、最後に質問。なんで太陽に当たっても大丈夫なんだ?」


 清雅のその質問に、プリムローズは凍てつく。


「…へぇ?固まるってことは、何かあるんだな?」


「それはちょっと…言えないですね…」


「そうか……じゃ、無理にでも教えてもらおうか」


 清雅は瞬時にプリムローズの足を氷漬けにし、その場に縛り付ける。


「…氷を使えるなんて、規格外の存在ね。私の霧も毒も魔眼も効かないし…!!」


 バリンッ!!という音と共に氷が砕け、彼女の背中から蝙蝠のような翼が生え、ギリギリ手の届かない所にまで飛ぶ。


「私はもう帰らせてもらうわ!じゃあね!!」


 そう言って、プリムローズが飛び去ろうとし――――





 即座に打ち出した雷で撃ち落とす。


「キャアアァァァァ!!」


 フラフラと落ちてくるプリムローズのおおよその地点で待ち、受け止める。


「じゃ、帰るか」


「ちゃっかり持ち帰るのね」


 冷ややかなフィアの視線を受けながら、彼らは宿に戻る。

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