第六十三話
橋を渡る途中、かなりの数の魚に襲われた。
普通にドでかい魚から、ウツボの様な鋭い牙を持った長い魚。しかもそれだけでなく上空からはパシアンよりも大きい鳥が上空から降って来た時にはライラが殴り飛ばすまで動けなかった。
だが、それでも何とか対岸にたどり着く事は出来たのだった。
* * *
「はぁ…はぁ…なんで橋を渡るだけでこんなに疲れんだよ……」
清雅はそう言うが、別に肉体的には全くと言って程に疲れていない。ただ、こういう状況に慣れていない…というか慣れているはずもないので精神的に疲れているだけだ。ちなみに、清雅と同じ理由でほとんどは疲弊しているが、ルーリスは走り回る位の体力はあるようだった。というか、それに付き合わされているルーネが可哀想である。
「だらしないわね。これくらいで疲れてたらこの先もっと大変よ?」
後方から聞こえてきたライラの一言に『これ以上まだ何かあるのか…?』と何とも言えない不安に駆られる清雅なのだった。
「ふぅ。別にここはフィアの城に行くまでの間に一回通ったからそこまで驚きはしないけど、やっぱりこの橋は心臓に悪いわ」
少し疲れた表情で言う優奈。そして、辺りをルーネを引っ張りながら走り回るルーリスは、
「お魚さんとかでっかい鳥さんとかいっぱいで楽しかったね!」
と、のんきな感想を言う。
「クロ君。大丈夫?」
「あぁ。大丈夫。これくらいならまだ問題ないよ」
後ろからはおそらくシャルスとクロノワールの二人の声が聞こえて来る。
「それにしてもパシオン。どうして貴方が上空にいたのにあんなでかい鳥がいるのよ」
「さすがに俺の防衛も完璧じゃないって事だよ。諦めてくれ。この橋が一体どれだけの距離あると思ってんだ。それ以前に俺が降りた時点で警戒値が無くなるに決まってんだろうが」
「あぁそっか。確かにそんなもんだよね。まぁ降りて来ても返り討ちに会うのがオチなんだけどね」
「だろうな。お前がいるからどうせそうなるだろうよ」
最後尾と最前の会話に『ちょっと次元の違う会話をしてるな~』とか思ってしまう清雅。それほどこの橋は危険というかびっくりすることが多かったのだ。
「はぁ、何時から私の旅はこんな大所帯で桁外れな人たちばっかりになったんだろ」
「……俺が仲間になった瞬間からだと思うぞ?」
「それは『俺もちょおつおいぞ』って事?」
「…ノーコメントで」
フィアのジト目に思わず目を逸らした俺は悪くないと思う清雅。だが今の発言はフィアの言った様にしか捉えられなかった。
「ねぇ、ルーネは助けなくていいの?」
突如目の前に出て来たシャクナに一瞬驚くが、少し考えてから、
「いや、楽しそうだから良いんじゃね?」
「完全に見捨てたね」
人聞きの悪い事を言うな。と清雅は突っ込む。清雅の言う通りルーネは確かに困ったような表情をしてはいるが楽しんでいるようにも見えた。
そして、ある程度平常心を取り戻して回復したところでライラが、
「じゃ、行きましょうか」
その言葉で全員はゆっくりとしたい語気で立ち上がる。清雅は突撃して来たルーリスに肩に乗られ、そのまま立ち上がって肩車状態になった。その時フィアから向けられた視線が少しだけ痛かった清雅なのだった。
「なぁライラ。そう言えばどこに向かうつもりなんだ?」
「あぁ、そう言えばパシアンには言ってなかったわね」
パシアンの当然とも言える質問にハッ!とした表情でライラは答える。
「獣人国に行く予定よ。このメンバーなら多少無茶しても問題ないでしょ?それに今は貴方がいるしね」
「……なぁ、俺を仲間に入れたのって偶然じゃないだろ。絶対狙ってたろ」
「……さぁ?」
目を逸らしながら言うライラにパシアンはため息を吐き、
「まぁ別に問題ないけどさ……今あそこに行くのは面倒なのは知ってるのか?」
「え?どういうこと?」
「……なんだよ、知らなかったのか」
「何か癪に障る言い方ね。何かあるの?」
ライラがムスッとした表情で言うと、パシアンは呆れたような顔をして、
「今あそこはちょいと戦争準備中だとさ」
思った以上に物騒な単語が出て来た。
「ちょ、ちょっと、どういうこと?一体何があったって言うの?というか、敵国はどこよ?」
「待て待て。そんな一気に言われても俺は一人しかいないから一気には説明できねぇっつの。少し落ち着け」
パシアンはライラをなだめた後、
「まず攻撃対象は人間界だ。理由は奴隷。さすがに我慢の限界なんだそうだ。今吹っかける理由は単純に魔国を滅ぼしたから気が抜けて警戒が緩くなってるからだってよ」
「なるほど…確かに仕掛けるには最高のタイミングよね。でも、この情報ってどこから仕入れたの?」
「つい数日前にあいつが久しぶりに顔を出したから話をしたらそう言われてな。ちなみにあいつも獣人国に向かってるらしい」
「あ~……なんだ、あいつも生きてるのね。全く、あの時のメンバーで今もまだ確認できてないのってあの二人だけじゃない」
「確かに。というか、あの二人は見つけられない気がするんだが」
「それは私も思うわ」
うんうん。と頷く二人。
「まぁそれは置いておいて、そんな面白そうなことが起こっていたなんて…」
「……あぁ、そうか。そう言えばそうだった…」
ライラの一言にパシアンはハッと気付き、しまったと言いたげな表情をし、それとは反対に満面の笑みでライラはこういう。
「これは絶対行かないとね!」
絶対言うと思った。この時全員は一字一句違えることなくそう思ったのだった。




