第六十一話
朝が来て、清雅は目を覚ます。ただ、朝と言ってもまだ日が出たばかりで薄暗い時間だ。
状況は昨日寝た時と変わらない。フィアは右腕に抱き着いているし、暗殺者は地面に伸びている。
「……正直この状態が心地いいんだけど、起きないとだよな…」
そう言うと彼はフィアの方を掴んで揺らす。
「フィア、起きろ。朝だぞ?」
「むぅ…あと、5ふん~……」
「ダメ。早く起きて。すぐに出ないといけないんだからさ」
「うぅぅ……やだぁ…ならセイガがつれ……あれ?セイガ?」
自分の言葉に疑問を持ち、意識が覚醒するフィア。そして、清雅の顔を数秒眺め、一瞬で顔を真っ赤にすると、
「あ、あわわ!ご、ごめ、ごめんなさいぃぃぃいいぃ!?」
後半おかしくなったのは、急に立ち上がって清雅から離れようとして後退りをした時に地面に倒れている暗殺者の腕に引っかかって転んだためだ。
逃げる方向的に転びそうだと思っていた清雅はすぐさま助けに走る。その際暗殺者の顔を思いっきり踏みつけた気がしたが気のせいだろう。うん。そうだ。そうに違いない。
「危ないだろうが。別に俺から離れるのは構わないけどせめて周りを気にするくらいはしてくれよ。今回は俺が助けられたけど、いなかったらどうするんだよ」
「あ、うぅ……ごめんなさい。次は無いようにするわ」
「そうしてくれ。まぁ、起きたら突然隣に異性がいたらそうなるのも分からなくはないが、もうちょっと冷静でいようぜ?」
苦笑いをしながらフィアを引き上げ、清雅はフィアの頭を撫でる。それで更にフィアの顔が赤くなったが、清雅は気付いている様子はない。もしかしたら気付いていてわざとやっているのかもしれないが。
「さて。じゃあ行くか」
「え、あぁ、うん……って、違う違う。私が躓いた原因のこいつは誰?」
思わず清雅に流されて進みかけたフィアは清雅を止めて聞く。
「あぁ、そいつは昨日襲撃して来た暗殺者。ちょっと叩いたらそうなったんだけどな。っていうか、本当に爆睡してたんだな。そいつ雷魔法使ってたんだぞ?正直起きたけど無視したのかと思ってた」
言われて昨日の事を思い出すが、どこにもこの男の記憶は無かった。清雅の言う通り爆睡していたようである。
「憶えてないからたぶん寝てたんだと思う。手伝わなくてごめんなさいね」
「いや、俺もお前を起こさないように頑張ったからそれで起きてたら少し悔しいから問題ないさ。んで、そいつはどうしようか。放置する?皆の所に連れて行く?」
「ん~……連れて行きましょ。別に何か欲しい情報とかはないけど、連れて行けばライラ辺りがどうにかしてくれるでしょ」
「そうか。じゃあ連れて行くかな」
そう言って清雅は顔面に踏まれた跡がある暗殺者を片手で掴んで引きずりながら下へと降りて行くのだった。
下に降りると、すでに全員揃っていた。あの少年もだ。しかも自分の足で(杖を使っているが)歩けている所を見ると、相当回復力が高い、もしくはそういう存在なのだろう。そして、優奈の足元にはおそらく清雅達を襲撃して来たのと同じ暗殺者だろう。
「おはよう。そいつは昨日襲撃して来た奴か?」
清雅の質問に優奈は振り返りつつ、
「まぁね。ただ、あまりにも腰抜け過ぎて……はぁ」
どうやらため息が出るほどに残念な相手だったようである。
「そうか……俺たちの所にも出て来たけど、すぐ怒り出す暗殺者としては風上にも置けないようなバカだったよ……うん、いや、別に強い奴が来てほしいって訳じゃないんだけどな?」
「その気持ちは分かるわ…」
遠い目をしながら共感する二人。そして、今までそれを見ていたライラが、
「で、そいつらはどうするの?」
「そうだな……ここに放置で良いんじゃないか?どうせもう襲ってこないだろ」
「そ。じゃあ行きましょうか。これ以上ここに留まるとまた襲われかねないしね」
そう言ってライラ達は行ってしまう。それに続いて清雅達が行こうとすると、
「あ、あの…」
と声をかけられる。
声をかけて来たのはシャルス。その隣には少年がいて、二人ともこちらを見ている。
「どうかしたのか?」
「いえ、その、まだお二方には自己紹介をちゃんとしてなかったなって思って」
思い返せば、確かに自己紹介をしてない。でも、それはライラ達も同じだった様な気がする。
「他の人達には――――」
「もうしました」
「あぁ、なるほどね。じゃあちゃっちゃと済ませちゃいましょうか。遅れたら不味いからね」
そう言って、フィアは一拍置いてから、
「私はフィア=マニュス。よろしくね」
「俺は白銀清雅。よろしく頼む」
さらっと紹介を済ませた清雅達はシャルス達の自己紹介を待つ。
「えっと、私はシャルスです。よろしくお願いします」
そう言って彼女は頭を下げ、隣の少年は、
「僕…は、クロノワール。これから、よろしく、お願い、します」
ゆっくりと、掠れた声で答え、彼もお辞儀をする。
「さて。自己紹介も終わったし、行こうか。もう村を出るだけなんだからさ」
清雅は笑顔を浮かべ二人を連れ出し、その後ろをフィアがついて行くのだった。




