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第五十八話

「それで、これからどうするんですか?」


 シャルスの当然の質問に清雅が考えるが、


「いや、もう寝ちゃおうよ。どうせ今日はもうやる事は無いし、何か仕掛けて来るにも清雅がほとんど倒しちゃったじゃない。だから今日はもう攻めて来たりはしないわよ。それに、もう夕方よ?」


 えっ?と驚く清雅とシャルスは、窓を見て二度驚く。


「ほ、本当だ…本当に夕方だ!い、何時の間に!?」


「あんた達、何時間寝てたと思ってるのよ。お昼だったのにぐっすり寝ちゃうし、そのままこの時間まで起きないし…どうしてゆっくりしてられるかなぁ…」


 呆れ気味にフィアがそう言うと、清雅が妙に良い表情で、


「そりゃ、お前たちがいるからな!安心してられるさ!」


「……どうしてそう簡単に恥ずかしい事言――――」


「――――なんたって全員超強いもの!物理的な意味で!」


 瞬間、フィアが右拳でボディーブロー。優奈が背後に回って背中に中心に肘鉄。ライラが顔面に躊躇なく左拳を放つ。


「ハブァ!?」


 恐ろしい威力を一斉にくらった清雅は全身からバキイィ!!と良い音を発して崩れ落ちて行く。


「ふん。これはやられて当たり前の事よ。女性に向かって『怪力だ』って言うのは少し失礼でしょうが」


「あ、あい…ずびばぜんでぢだ…もう次はしない…と思いまふ」


 その一言で清雅はフィアに頭を思いっきり踏まれ、気を失うのだった。


「……毎回一言多いのよ。いい加減学習しなさ…あれ?起きてる?」


「いや、完全に気絶してるね。どうする?清雅をこのまま放置するのはダメだし……誰が運ぶの?」


 真剣に全員は考えるが、ライラはきょとんとした表情で当たり前のように言う。


「決まってるじゃない。気絶させた人が運ぶでしょ?」


 その一言で、全員はフィアの事を見て、


「え、わ、私が運ぶの?」


 …無言の威圧ほど怖いものは無かった。と彼女は後に語るのだった。


















 清雅が目を覚ますと、辺りは暗くて何も見えない。


「(夜か?ってか、俺また寝てたのか…あれ?なんで俺寝たんだ?だって下で会議してたはずじゃ…うっ、頭がいてぇ…なんか、思い出したらダメな気がする。やめておくか)」


 とりあえず、目が覚めてしまったのでどうしようかと考えながら体を起こそうとして、ふと気づく。


 右隣でフィアが寝ており、ついでに言うと腕をがっしりと掴まれている事に。


「……こいつ、なんでここで寝てるんだよ…まぁ役得だけども」


 ぷにぷにと空いている方の手でフィアの頬を突く。しばらくそうやって遊んでいると、うめき声をあげ、起きるのか?と思ったら、ずっと頬を突いていた指を噛まれた。


「……痛くない。でも、なんかこの状況は不味い気がする」


 正直もう少しこのままでも良いかな。と考えるが、ここで起きられても気まずいので指を引き抜く。


 はぁ。とため息をついて仰向けになると、ふと嫌な予感がして体を起こす。フィアは清雅が体を起こすと、反射なのか、手に力を込めてくっ付いてくる。


「おぉぅ。こんなにがっしりと掴んでいてくれてるのは少し嬉しいけど…襲撃されたら左腕一本で戦うしかないか。フィアを起こすのは忍びないしな」


 右手を動かしてフィアの背中に腕を回して抱き寄せると、その体勢が気に入らないのか、手を離して清雅の身体に抱き着く。


「う、うぅむ……これである程度は動きやすくなったけど……なんか恥ずかしいな。つかフィア。お前起きてるんじゃねぇのか?」


 清雅の疑問に答えるのは、静かな寝息だけだった。


「……寝てるのか。まぁ別に構わないけどさぁ……さっき言った通り役得だし。さてどうしようか。すっかり目が覚めちゃったし、でもやることないし」


 ベッドに腰を掛けるように座り、フィアの体に負担をかけない様に運んで清雅と同じように座らせる。


 すると、窓際の天井板の一枚がスッ、と外れる。


 ほとんど、いや、全く音がしなかったにも拘わらず清雅はそれに気付き、その天井板の外れた先にある空間を睨みつける。


 すると、そこから一人、真っ黒な装束を纏った人物が降りてくる。その人物の右手にはキラリと光る金属があり、それが余計に清雅に警戒させた。


「……誰?こんな時間に人の部屋に忍び込むなんて」


「ッ!貴様、起きていたのか」


 声的に男のようだった。


「生憎ね。それと、俺は簡単に殺されるつもりなんてないぞ?それに、俺はこの状態でお前を倒せる自信があるけど、それでもやる?」


 絶対的な自信を持って清雅は宣言する。それに対し、おそらく清雅を暗殺しに来たであろう人物は戦闘態勢に入ると、斬りかかってくる。


 清雅は瞬時に氷剣を作ると、振り下ろされた短刀を受け止める。


「ほら。こんなに簡単に受け止められた。どうするの?まだやる?」


「ふ、ざけるなぁ!」


 暗殺者は明らかに怒っており、その怒りのままに剣を振り下ろし、


「『雷神よ、我が剣に雷撃を帯びさせ給え』!」


 突如として雷を纏った剣が氷剣に当たるが、雷はそれ以上流れず、そのまま霧散してしまう。


「なッ…!?」


 暗殺者は驚くが、科学的に考えれば納得できなくはない。なぜなら、氷はほとんど電気を通さず、その条件が当てはまるように清雅は氷剣を出している時は常時冷気を放出しているからだ。ただ、氷も若干電気を通すと思う人もいるだろうが、そもそも氷に電気を流してる時点でほとんどの電力は失われており清雅自身に被害をもたらすほどではなくなっているのだ。つまり、清雅には効かなかった。


「もう少し学習してから来い。これは水じゃなくて氷だぞ!っと」


 清雅に押し返されて暗殺者はよろけ、その瞬間を狙って闇魔法で生み出した影で後ろから殴りつけて昏倒させた。


「ふぅ。全く……こんな挑発に乗るって短気すぎるでしょ。それに、大声を出すのは厳禁だっつの。それでフィアが起きたらどうしてくれるんだこの野郎」


 悪態を吐きながらも清雅はフィアが起きていないことを確認し、


「まぁ、他の所に行った奴らもみんな倒されちゃっただろうし、もう少し休むかな」


 そのまま清雅は倒れると、再び目を閉じるのだった。

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