第五話
「フィア~?どこに向かってんだ~?」
「一応村が無いかな~…って思って歩いてるのよ~」
…一応言っておくが、清雅とフィアの間は3m位ある。さっき拗ねてから差は縮まってない。清雅はその差を縮める気はないようだが。
すると、不意にフィアが立ち止まり振り返る。
「どうした?急に立ち止まって」
「…………なんでもない」
そう言って再びフィアは歩き出した。俺はその間も歩いていたので、追いついた。
「そうか」
…にしても…神様…俺にどんな能力を渡したんだろ…と清雅がぼんやりと考えていると、突然頭の中に、
≪悩めるあなたの心の中に直接侵入!光り輝く女神清花ちゃん参上!≫
と声が響いてきた。声色からして、本人であろう。
≪…聞こえてますか~?≫
いや、どうやって返事をするんだよ!と心の中で突っ込む。
≪これで会話するのは、言葉を思い浮かべて相手に送ろうとすればいいんですよ。まぁ、少しコツが要りますけどね≫
清花の助言に従い、清雅は言葉を思い浮かべて清花へ送る想像をしてみる。
≪一体何をやってるんだ?≫
≪え、えぇ!?もう出来るようになったんですか!?私なんて出来るようになるまで結構時間かかったのに!具体的には清雅君が転移してから今さっきまで!≫
≪何やってんだよ!?暇か!?暇なのか!?≫
≪だって転移させたら上司にお前も行って来いよって強制的に追い出されたんですもん!!≫
≪そりゃ暇になるわな!!≫
そんな感じで清花と話して(?)いたら、隣から回し蹴りをくらった。焦ったが、すぐさま体勢を立て直し、隣――――フィアの方を見ると、なぜか頬を膨らませていた。どうやらご立腹のようだ。
「ど、どうした?フィア」
「…迷ったから…八つ当たり?」
「いや、そこは俺に聞くな」
「うん、じゃあ八つ当たり」
「…強調されてもなぁ…で?お前は何を基に街…村?を探してたんだよ」
「へ?地図を基にだけど?」
「…どこに地図があるんだよ!!」
「ここよ」
そう言ってフィアはポーチの中に手を突っ込んで、ガサゴソと何かを探し、目当ての物があったのか、それを引っ張ると、何回かに折られた紙が出てきた…だけではなく、それ以外にも色々落ちてきた…たとえば、木の枝とか、腕輪とか、時計とか、明らかに入らないであろう椅子とか机とか…
「…………なんで入ったの?」
「……まぁ、そんな事より、まずは村…街?を探そうよ」
「むぅ、フィアがそう言うなら仕方ない」
「あれ?意外ね。あなたなら聞いてくると思ったのに」
「だって聞いたらなんかぶつぶつ言われそうなんでな」
「そう。取りあえずこの地図を見なさい」
「おう」
そう言ってフィアの持っている紙―――――地図を覗き込んだ。そこに書かれていたのは、北東、南東、南西、北西の四か所に大きな大陸があったのと、紙の中央がなぜか黒くなっていた。
「……で、ここはどこだ?」
「あぁ、えっとね、この左下のこの島よ…って、そんな事も知らないの!?」
「…悪かったな知らなくて!」
「はぁ、なんかもう、何を知らなくも驚かない気がするわ」
「…まぁいいや。で、どこを目指しているんだ?」
「一応この上の島、人間が主に住んでる島ね、ここを目指して歩いてるわ」
「ふむ、で、今どこを向いているか分からない、と」
「…………そうよ」
「…えと、大体で良いけど、この森ってどこらへん?」
「ここらへんかな」
そう言ってフィアが指差した所は、島のど真ん中だった。
「……どうやったら迷う?」
「……私が歩いたから!」
「……そうか、すまん、これ北に歩くだけだよな?」
「そうよ?で、歩いてたら良くわからなくなったのよ」
そうドヤ顔で言うフィアは、どこかかっこよく……ないな。うん。
「……とにかく北に歩けば良いんじゃ?コンパスとかねぇのか?」
するとフィアが、まるで、そんな事思いつかなかったかのように見てくる。そしてそのままポーチの中に手を突っ込み探し始めた。
「……コンパスは……えと……あ、あったあった」
そう言って取り出したコンパス(意外にも元の世界と同じ形状だった)を見てみると、
「…なぁ、どっちが北だ?」
「この赤いのが向いてる方よ」
「……さっき北に向かってるって言ってたよな?」
「……うん」
「……さっきの進行方向…南だけど?」
「……このコンパス、壊れてるのよ」
んなバカな事あるか。そんなに認めたくないのかよっ!と清雅は心の中で突っ込む。
「……このコンパスに従う気は?」
「無い!」
おおう、こいつはひでぇ。呆れつつ清雅はそう思う。
「……まぁ、とりあえず進もうぜ」
「そうね」
そう言って清雅達は歩き始める。歩き始めてからふと、清花が今どこにいるのかが気になった。
≪で、そっちは今どこにいるんだ?≫
≪やっと返信来ました!!…じゃなかった。えっと、森の中?清雅君に近い所に飛ばされましたけど?≫
≪そうか、じゃあスライムに襲われてるんだな。ま、頑張れ≫
≪えぇ!?助けてくれないんですか!?≫
≪こっちも忙しいんでな≫
そう言って(?)清雅は放置することにした。正直あの神様ならここまで自力で来ると思ったからである。
……あ、そういや能力聞き忘れたな。ま、たぶんいつか会うだろうからそん時に聞けばいいか。清雅は今更そう気づいたが、突き放すように言ってしまったので、聞くにも聞けなかった。