第五十七話
部屋の中は二つのベッド。左側にシャルス。右側には助け出した少年がいた。
「セイガ…さん?」
「あぁ、起きてたのか」
声を上げたのはシャルス。清雅が入ってくる前から体を起こしていたが、目を閉じてたので寝ているのもだと清雅は思っていた。
「えぇ、一応は。それで、彼は大丈夫なんですか?」
シャルスが心配そうに聞く。しかし、清雅は少年の方に目を向けることもせず、
「あぁ、大丈夫だよ」
そう言い切り、だがしかし、少し間を開けてから、
「ただ、一つ問題があるなら栄養失調だな。しばらくまともなモノを喰ってなかったんだろうな。痩せ細って体がかなり軽い。それ以外にも色々あるけど、正直俺はそんな詳しくない。分かってるのは取りあえず失血死はしないって程度だな。……俺のいた世界ならこのくらいの症状、数秒で治せる奴らがいっぱいいたんだが……いないもんはしかたないしな。取りあえず、そのくらいだよ」
「そう…ですか。じゃあ、彼はまた元気に動くことが出来るようになるんですね?」
「可能性はある。ただ、確かに言えるのは、ここに居たら確実にこいつは死んじまうって事だな。ここのやつらがこいつを黙って逃がすわけがない。そこで、だ。俺達と来ないか?もちろん、この村を出るまででも良いけど、一緒に旅をするのも悪くは無いと思うぞ?」
言って、清雅はシャルスに手を伸ばす。
「……目的は、あるんですか?」
「目的?何に対してだ?旅に対して言っているなら、無い。シャルス達を誘っているこのに対してなら、大人数の方が楽しいだろ?それだけだよ」
シャルスの警戒の視線を正面から受けながらも、質問に対し心の底から思っていることをそのまま言う。シャルスはそれをどう受け取ったのか、
「……分かりました。彼がまた昔の様に動けるようになるその間だけ、一緒に行かせて貰っても良いですか?」
「もちろん。俺は来るもの拒まず、去る者追わず。のつもりでいるからな」
「じゃあ、よろしくお願いしますね。セイガさん」
清雅の返答を聞いた後、清雅の手を取るのだった。
「じゃあ、落ち着いたらシャルスも下に来いよ?なんか皆が次はどこに行くかって話をしてるからさ」
「はい。分かりました」
清雅はそれだけ言うと、部屋を出て行き、そのまま一階へと戻る。
一階では、フィア達が話し合っていた。
「フィア。今どういう話し合い?」
「あぁ、セイガ。もういいの?」
「問題ないさ。それと、シャルス達も一緒に来ることになった。たぶんしばらくしたらシャルスも降りて来るよ。で?結局どうやって獣人国に行くんだ?」
「えっとね。それについてだけど――――」
「――――獣人国に行くためには一回魔界を通る必要があるんだよ」
フィアが説明しようとした瞬間、遮るようにライラが説明する。
「…………………」
「え、ええっと……じゃあ、魔界を通って獣人国に行くってことなんだな?」
「そういう事。まぁ、そんなに手間じゃないからいいでしょ?」
「いや、別に俺は文句言ってないよな?」
なぜか怖いほどの満面の笑みを浮かべたライラに、思わず清雅はそういう。
「私は別に『文句言ってるんじゃないわよ?』なんて言った覚えはないけど?」
「言った!今言ったよ!?」
「何のこと?」
「うぐぐ……って、なんで俺はこんなことやってんだよ……」
肩を落として清雅がそういうと、
「今それに気づいちゃう?」
と、優奈が突っ込む。確かに今までの事を考えると、どう考えても必要のない口論があったような気がしなくもない。
「……いや、聞かなかったことにしよう」
キリッとした表情で優奈の発言を全力で流した清雅は、テーブルの上に広がっている地図を見ると、ふと疑問がわいた。
「なぁ、この真ん中の島を経由していくのはだめなのか?」
「あぁ、真ん中の島ねぇ……」
清雅の疑問に対し、ライラが悩ましいような声を上げる。
「なんか問題があるのか?」
「あ~……その……この島はかなり危険なのよ」
「危険?どういうこと?」
「その島はね…前行ったときにはかなり死にかけたのよ。まぁ、幸運なことにその時一緒に行った人達は誰も死ななかったけどね」
「ふぅん……じゃあ行くのは危険だな。じゃあやっぱり迂回していくしかないのか」
「そういう事。だから魔界を通っていく方がいくらか安全なのよ」
「なるほどな。じゃあ魔界を通って獣人国に行くってことで決まりだな?」
「うん。そういう事になるね」
清雅が納得していると、階段を降りる音がした。その音に反応して振り返ると、シャルスが降りてきていた。
「おうシャルス。降りてきたか。もう大丈夫なのか?」
「はい。もう大丈夫ですよ。それで、どういうルートで行くんですか?」
「あぁ。それはな――――」
清雅はライラに教えてもらったルートをシャルスに説明する。
「――――なるほど。じゃあ皆さんは獣人国を目指して移動してるんですね」
「今の所はそういう目的になってるな」
「そうですか……でも、大丈夫ですか?私もですけど、彼、この場合すごく足手まといだと思いますよ?」
「そんなこと言ってもな……言っちゃ悪いけど、ルーリスと同じようなのが増えるようなもんだと思えばいいと思ってるんだが……ダメかな?」
「どう考えてもダメだと思いますよ?彼は自分の足で歩けるかも分からないんですよ?」
「問題ないって。正直戦ってるのなんてライラだけだから」
「ちょっと待ちなさいよ。なんで私だけが戦うことになってるのよ」
さらりと清雅が言い放った言葉にライラが全力で突っ込む。
「いつもの事じゃんか」
「それはそうだけど、君も戦ってくれてもいいでしょ?」
「ふふふ。残念だな。俺は戦えないんだ」
「なんで?」
「そりゃあ…皆が俺が戦おうとすると全力で阻止しようとするからだ!!」
特に意味もなく胸を張って言い張る清雅。それを見て、ライラは苦笑いをするしかないのであった。
「まぁ、そんな感じだから問題ない」
「……なんかおかしい気がしますが、まぁセイガさんがいいって言うなら、妥協しますよ」
ため息をつき、シャルスは渋々ながらも納得するのだった。




