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第五十五話

「……ん…くあぁぁ……っと、あれ?俺、なんでこんな所で寝てんだ?」


 清雅は起きると、辺りを見渡す。そこは先ほど寝たのと同じ宿屋の一階で、イスの上に座って寝ていた。


「おはようセイガ。疲れは取れた?」


 声をかけられ、振り向くとフィアが隣に座っていた。


「ん?あぁ、フィア。おはよう。なぁ、少し聞いていいか?」


「なに?」


「その、俺さ。ここにたどり着くまでの記憶が無いんだよ。だからさ、シャルスとその恩人って、助けることってちゃんとできた?」


 その質問に思わずフィアは硬直する。


「え?ちょっと待って。本当に覚えてないの?」


「あぁ、さっぱり憶えてない。最後に憶えてるのは何か頑丈そうな扉の前にたどり着いた時くらいなんだよな……」


 表情を見るに、嘘を吐いている様子は無かった。つまり、本当に憶えていないという事。だが、寝る前はしっかり記憶があったはずである。なら、寝ている間に何かがあったというのだろうか。


「ん~……まぁ、二人ともちゃんとここにたどり着いたわよ。ただ、今もまだ二階で寝てるけどね」


「そうなのか。ありがとな。ところで、フィアは何をやってたんだ?」


「うぇ?な、なにって?」


「いや、一人でいるから、何か用事があったのかなって思ってさ」


「い、いや……別に用事は無いけど……」


 フィアは確信する。こいつマジで憶えてないな、と。憶えていたらおそらく何をやっているのか聞いて来はしないと思ったからだ。


「(っていうか、なんか寝る前と雰囲気が違うんだけど……気のせいかしら?)」


 ふぅむ。とフィアは悩み始めるが、清雅はフィアの悩みなど全く気にしていない様子で、


「じゃあ、ちょっと二人の様子を見てくるよ」


「え?あ、うん。行ってらっしゃい」


 清雅の言葉にとりあえず笑顔で返答するフィア。清雅はそのまま二階へと上がっていく。


「……やっぱり、何か雰囲気が違う気がする。なんだろう、この感覚」


「どうしたの?」


「ひゃあ!?」


 唐突に背後から声をかけられ、フィアはビックリして飛び上がる。慌てて振り返ると、そこにはニコニコと笑うライラの姿が。


「って、何時の間に戻ってたの?」


「今さっきだよ?具体的にはセイガ君が二階に上がっていくくらいの時」


「そ、そう。で?外はどんな感じだったの?」


「ん?あぁ、その事ね。本当に一人残らず気を失ってたよ。しかも、外傷がほとんどないっていうオマケ付き。やっぱりあの子、ただの人間じゃないでしょ。あの人と同じか、それ以上か。って所かな……」


「ふぅん……所で、ずっと気になってたんだけど、『あの人』って誰?」


「ん~……あの人はあの人だよ。君も知ってるはずだよ?有名人だし。っていうか、君が知らないはずは絶対ないよ」


「え、断言できるの?」


「もちろん。むしろ知らない方が珍しいんじゃない?あの二人は」


「二人?一人じゃないの?」


「えっとね、あの人自身は一人だけど、二人で一人のようなモノだったからね。まぁ、とにかく、君の知ってる人だし、おそらくセイガ君も知ってるんじゃないかな?あんな名前、そうそう忘れないだろうし。しかもセイガ君と同じ名字だしね」


「同じ名字…?そんな人、私は知らないけど?」


「そうなの?ん~……あの二人はほぼ伝説なんだけど……あぁ、そうか。文献だと名前とかが伏せられちゃうのか。じゃあしょうがないね。……あれ?そう言えばあの人、名字を変えてたっけな。まぁ、どっちにしても名前を伏せられてちゃ分からないね」


「むぅ……別に、名前の伏せられてない文献だってあるわよ。でも、私の覚えてる限りそんな名字の人は知らないわよ?大体、何時の人よ」


「大体……何年前だろ。結構昔だから忘れちゃった。ただ、魔国最古の人のはずだよ?」


「……嘘でしょ?」


「いやいや、なんで私が嘘を吐く必要があるのよ。その必要性皆無でしょ?」


「いや、そうだけど……ねぇ、ライラさんの言い方的にどう考えてもその人と直接会ったような言葉なんだけど……」


「そうだよ?っていうか、私、その人のパーティーの一人だったし。一応魔国の創設者の一人よ?」


「……それこそ嘘でしょ?」


「だから嘘じゃないってば。全く、どうして信じてくれないのよ」


「いやいや、まって、それならあなたは三百年以上生きてるって事になるじゃない!」


「だからそうだってば。一応私は人魔なんだからね!?」


「……え?ちょっと待って?今なんて言ったの?」


「だから――――あ。やば」


「ねぇ、今人魔って言ったわよね?どういうこと?」


「……いやぁ、そのぉ……聞かなかった事に出来ないデスカネ?」


「ダメ。言って」


「えぇぇ~……出来れば答えたくないんだけどなぁ……別に人を襲ってる訳でも無いし、迷惑なんかかけてるつもりもないんだけど……それでも?」


「むぅぅぅ……まぁ、そこまで言いたくないなら良いんだけど…確か魔国にも人魔はいたはずだから」


「ふぅ。ありがと。今それが他の人にばれるのはちょっとダメなのよ。だからまだ黙ってて?」


「分かったわ。……でも、一つ聞いていい?」


「ん?何?」


「もしかしてさ、その『あの人』ってのも人魔?」


「いや?あの人は普通の人間――――魔族だったわよ?でも、力が特異過ぎて、今でも生きてるんじゃない?」


「えぇ~?何その強そうなの。一体その人は何者なのよ……」


「さぁ?私も百年近く一緒にいたけど全く分からなかったわ。分かったことと言えば、この世界の人間じゃないって事くらいかな」


「うそぉ……じゃあどの世界の人間なのよ」


「知らないわよ。知ってるとしたら清花くらいじゃない?っていうか、私的にはセイガ君も知ってる気がするんだけど」


「……なんでそう思うの?」


「そりゃあ、あの人と同じ雰囲気がするからよ。更に言えば、服装も見たことない物でしょ?」


「……確かに、それは私も思ってた。でも、その『あの人』ってのと同じ世界だって確証はあるの?」


「いや、それは無いよ。あくまでも可能性の話だから。まぁ、会わせてみれば分かるかなって思って私もこの旅に参加したんだけどね」


「そうなの?……じゃあ、私もその『あの人』を探すのを手伝う事にするわ」


「そうしてくれるの!?ありがと!じゃあよろしく!」


「うん、よろしくね。ライラさん」


 二人は一つの目的の為に、手を取り合うのだった。

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