第五十四話
左から右へと振るわれた氷剣をアルベルトは後ろの下がり回避。直後反撃とばかりにアルベルトも剣を振るうが、返る刃でアルベルトの剣は弾かれる。その威力にアルベルトは思わず剣ごと飛ばされかけるが、全力で留まる。しかし、すぐにそれが愚策だったと気付く。
唐突に走るがら空きの左脇腹への痛み。ミシッ!と嫌な音が鳴る。瞬間アルベルトは飛ばされ、何時の間にか作られていた氷の壁に当たり、崩れ落ちる。
「……おら、起きろよ。俺はそう簡単にはやられねぇぞ?俺を倒すって大口叩いたんだ。それ相応の覚悟はあるんだろう?」
「ク……!やはりそう簡単にはいかないか…なら…!」
そう言うと、アルベルトは懐から何かを取り出す。それは手の中にすっぽり収まるほど小さな朱い宝石だった。そして、アルベルトはその宝石を剣にある窪みにはめる。カチリッという音と共に宝石ははまり、同時、剣から炎が発生し、刃を包む。
「へぇ…炎の剣ね。こっちが氷の剣だからか?まぁ、関係ないな。全部まとめて叩き伏せてやる」
「なら…行くぞ!」
そう言い、アルベルトは燃え盛る剣を手に、清雅へ切りかかる。
対し清雅は、燃え盛る炎を気にせず氷の剣を振るう。
炎の剣は氷の剣と衝突し、キイィィィンッ!!!という甲高い音と、ジュワァァァァアッ!!と、氷の剣が蒸発する音がする。それは打ち合うほどに大きくなり、数十と打ち合った瞬間、バキィッ!!という音と共に清雅の剣が砕け散る。
「あ、砕けたか……まぁいいや。本当は使いたくなかったけど、フィアから貰ったのを使うかな」
と、喋っている間にも近づいてくるアルベルトの剣。しかし清雅は冷静に、腰に下げていた魔剣を引き抜き炎の剣を弾き飛ばす。
「はぁ、なんでこんな事の為にこの剣を振るわなくちゃならないんだ。こんなもん、仲間が危険な時だけで十分だろうが。ただのケンカなんかに使うモンじゃねぇな」
そう言うと清雅は剣に魔力を込め始め――――
「だけど、お前を倒すために使うなら理由はあるか。お前に恐怖を与えられたあいつの為にこの件を振るう。だから、お前はいい加減に倒れろよ。傲慢な事だが、力の無いあいつの代わりに俺がお前を倒す。じゃあな。さっさと俺の前から消えろ」
巨大化した10メートル近くの剣がアルベルトに迫る。
「う、うぉぉぉぉおおああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
アルベルトは叫びつつ振り下ろされた剣を受け止めるが、
「まぁ、最後は呆気なく終わるよな」
突如全身に流れた電流に意識を刈り取られた。それと同時に魔剣は元のサイズに戻り、一度払うように剣を振った後鞘に戻す。
「はぁ。それにしても、なんでこいつは俺のいる場所が分かったんだ?……いや、まさか、な?」
嫌な黒幕を想像したが、今は考えるべきではないだろう。と考えを振り払い、皆が待っているであろう宿屋に向かう。
清雅が宿の中に入ると、フィアが一人、ぽつんと座っていた。
フィアはこちらを向いておらず、気付いていないようだった。清雅は他の奴らは部屋かな?と考えつつ、フィアの元へと歩いて行き、
「ただいま。フィア。待っててくれたのか?」
そう声をかけると、フィアはゆっくりとこちらを向き、
「お帰り。まぁ、待っていたわ。皆は部屋でシャルスと男の子の介抱をしてるわよ」
と、満面の笑みで返事をしてくれる。
「そうか。じゃあ後はあいつらに任せておいても良いか」
言いつつフィアの隣に座る。
「見に行かないの?」
「後でな。今はここに居たい」
「そう……」
その言葉を最後に、会話が途絶える。
何かを喋った方が良いのだろうか?とフィアは考えるが、不意に清雅がテーブルの上に伏せ、目を閉じてしまう。
「……もぅ、ここで寝るくらいなら自分の部屋に行きなさいよ」
「ヤダ。それだと一人になっちまうだろうが」
「一人は苦手?」
「まぁな。一人は…寂しいからな。誰かが近くに居てくれると嬉しい」
「ふぅん……じゃあ――――」
フィアが何かを言いかけた時、誰かが降りてくる。
「む?誰だ?」
清雅が体を起こし階段の方を向くと、ライラが来る。
「あ。清雅君戻ってたんだ。てっきりまだ戻って来てないのかと思って加勢しようかと思ったんだけど、その必要は無かったッポイね」
「あぁ、全然大丈夫だ。傷一つないよ。それに邪魔して来た奴らは皆まとめて無力化してきたから」
「そうなの?……ちょっと面白そうだから見に行って来ようかな」
「まぁ、見に行っても襲われることは無いと思うけど、一応注意はしておいた方が良いぞ。っと、その前に一つ聞いても良いか?」
「ん?何?」
「いや、シャルスともう一人の事なんだけど」
「あぁ、それね。とりあえず二人とも無事だよ。まぁ、男の子の方はほぼ生きてるのが不思議なくらいの出血で今にも死にそうだったけど、そこは優奈ちゃんが解決してくれたよ。それで今そこのフィアちゃん以外皆で二人の様子を監視中。っと、このくらいかな」
「そうか。ならいいや。ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ、私は遊びに言って来るね~」
そう言ってライラは外へと出て行ってしまった。
「……はぁ、全く。なんでタイミング悪く降りて来るかなぁ……」
「ハハハ。まぁ言葉を遮られたのは嫌だよな。で、なんて言おうとしてたんだ?」
「え?えっと、そのぉ……やっぱり何でもないッ」
「そうなのか?まぁ言いたくないなら良いけど」
そう言うと、清雅は再びテーブルの上に伏せてしまった。
「むぅ……もう少し粘ってくれても良いじゃない」
フィアは少し拗ねたように頬を膨らませつつぼそりと呟き、隣で伏せてる清雅の頭を突くのだった。




