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第五十三話

 先ほど蹴り破った扉を清雅達がくぐって出てくると、そこには数人の村人と冒険者らしき人物達が。


「あわわ……どうするんですか!?完全に通路をふさがれてますよ!?


「あ~……やっぱりこうなるよねぇ……というか、ここまで妨害が無かったってのが不自然だもんな。ハハハ!面白くなってきたな!」


「ちょっ…!面白いってなんですか!?面白い事なんて何もありませんよ!?というか全く笑えません!!」


 シャルスの悲鳴が清雅に届いたのか、清雅はため息を吐き少年を背負ったままシャルスを抱え、


「じゃあここから逃げるぞ。この場でのケンカは少し被害が出過ぎそうだからな」


 そう言い清雅は走り出し、瞬時に村人と冒険者たちの間をすり抜けて階段を駆け上がる。その途中清雅は、


「地上に出たらシャルスはこいつを抱えて全力で宿屋に走れ。そうすれば後はあいつらが何とかしてくれるだろ。俺は適当に村人たちを足止めしておくさ」


「わ、分かりました。あの、清雅さんも、気を付けてくださいね?」


「……あぁ、分かったよ」


 清雅がそう言ったあたりで外に出る。そこには清雅が予想していたのと同じかそれより少ない村人や冒険者たちがいた。


「やっぱりこれくらいはいるよなぁっと、じゃあシャルス。行くぞ?」


 言うと同時、清雅は宿屋の方向へ走り出す。途中清雅達を村人たちが襲うが、わずかな隙間を潜り抜けかすり傷一つ負うことなく切り抜け、


「シャルス!」


「お気をつけて!」


 二人はほぼ同時に動き、シャルスは清雅の背負っていた少年を背負い宿へ走り、清雅はシャルス一人では背負えない少年を影を使って支えつつ光を分散し自身の後ろとシャルスに付け、村人たちの前に立ちはだかる。


「さぁ、さっきシャルスには面白くなってきたって言っちゃったけど、今回ばっかりは笑っていられないな。ここまで惨い物を見せられて黙ってられる程俺は人間が出来てねぇし、もし俺がそんな人間ならたぶんここには立ってない。だから――――」


 清雅の全身を闇が覆い、ロングコートのようなモノと手袋。そして目元を隠した後、右手に一メートルほどの氷の剣を生み出し、


「――――俺はテメェらを全員まとめて叩き潰す」


 清雅の背後にあった光の球が消え、残ったのは果てしない闇を携えた悪魔のみ。その怒りはライラの気迫をはるかに凌駕する。


「あ、あぁぁぁぁぁぁ!!」


 恐怖に震えながらも一人の冒険者と思しき男が清雅を倒さんと己の剣を振るう。しかし、


「馬鹿にしてるのか?」


 音も置き去りに清雅の剣は振るわれ、男の剣は真ん中から消える。


 そして、剣を折られたと気付く暇も無く非情にも返す刀が男を襲い、その男の意識はそこで途絶える。


「……次は誰だ?まぁ、武器を取ったやつらは残さず消し飛ばすけどな」


 清雅は邪悪な。あまりにも邪悪な笑みを浮かべ、それと同時にその場にいたほとんどの人物は自ら意識を手放す。


 と、ここで先ほど牢屋の中で振り切った人物たちが牢屋から出てくる。


「な、なんだこれは…!」


「残念だったな。お前らは会っちゃいけない相手に会っちまったんだ。いや、正確には知られちゃいけない相手、か。まぁいい。とにかく、自分たちのやったことを後悔しながら楽しい楽しい悪夢を見るが良い」


 迫る。黒い悪魔が。過ちの化身が。
















「はぁ、はぁ、はぁ……あと、少しで…!」


 シャルスは必死で走り、宿屋が見えるほどの所までたどり着く。――――と、そこで彼女は気付く。宿屋の所に一人、清雅の仲間ではないであろう巨大な剣を背負っている男が立っていることに。


「……なに……あの人……」


 その人物からは明らかに強者の気配がした。冷や汗が噴き出る。最後の最後。ここでミスをして捕まる訳にはいかない。そして、シャルスはその男に見つからない様に宿の中に入る方法を考え始めた。



 その時である。男がこちらに気付く。



 大前提が全て吹き飛んだ。威圧感が向けられる。恐怖で足がすくむ。今までそこまで重く感じなかった少年の体重が何倍にもなったような錯覚がした。


 一歩。男がこちらへと歩む。それだけで意識が暗転しそうだった。しかし、少年のためにもここで倒れる訳にはいかない。なんとしてもここを突破して宿の中へと入る。ただそれだけをシャルスは考え始める。


 二歩。瞬間。シャルスの思考は真っ白になる。たった二歩で数十メートルの距離を詰められた。しかも、ほとんどは二歩目で詰められた。シャルスの表情が絶望で染まる。


「そ…んな…?」


 気付いた時にはもう遅い。男の手には先ほどまで背負っていたはずの剣を持ち、シャルスに向かって振るわれる。そして――――









 ガキンッ!!と、男の剣は突如シャルスの頭上から現れた氷の剣に止められる。






「……何をしてやがる……この野郎」


 剣を止めたのは目元が全く見えない全身黒づくめの人間。だが……


「セイガ……さん…?」


「すまないな。遅くなった。本当はもっと早く来れるはずだったんだけどな」


 黒づくめの男――――清雅は、そう言うと、男の剣を跳ね上げる。


「さぁ、お前は早く行け。そしたら俺もすぐに行くからさ。しっかりそいつを連れて行けよ」


「はい……分かりました…!」


 シャルスは清雅に言われ、すぐさま宿に向かう。男はそれを見送ると、清雅に向き直り剣を向ける。


「私は、貴様を待っていた」


「……俺を?」


「そうだ」


「へぇ…?そうか。で、理由は?」


「あぁ、貴様の仲間に負けた時からな……」


「…仲間に?……あぁ、お前、もしかしてこの前会った……あ、あ…アルフレッド?」


「アルベルトだ!」


「あぁ、そうそう。アルベルトアルベルト。って、いやいや待て待て。一体俺が何をしたってんだ?」


「……いや、ただの逆恨みさ。貴様は何も悪い事はしていないさ」


「へぇ……?そうか。俺はテメェの逆恨みのせいで足止めを食らったと。……なるほどな。それで、足止めは分かった。で?お前は何をしたかったんだ?」


「貴様を……倒したかっただけさ」


「……分かった。つまり戦いたかっただけなんだな。いいぜ?受けるよ。俺は魔物とは戦った事はねぇけど、人間を相手に戦った事は数百、数千とあるからな。かかって来いよ。相手をしてやる」


「フフフ、足をすくわれるような事にはならないことだな」


「そんなことになれば良いな…!」


 清雅はそう言うと、至近距離で氷の剣を振るい――――

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