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第五十二話

 シャルスの必死の制止のおかげで頭が冷えた清雅は、どうにか『神を倒してやるぜおらー」と言ってた馬鹿どもを気絶させるだけに留めた。


「はぁ、はぁ……これだけやっておけばもう逆らいはしないだろ……」


「あ、あぁ、こ、この人、やっちゃいましたよ。ついに犠牲者が…!」


 シャルスはそう言っているが、自分も途中から馬鹿二人を倒すのを楽しんでいたので人の事をあまり言えない。


「ふぅ。もういいや。とりあえず目的の恩人救出をしよう」


 清雅はようやく落ち着いたのか、目的を思い出して進み始める。





 進んでいるうちにだんだんと人が多くなっていくが、そのほとんどは清雅の後ろの光の球に目をくらませてまともに清雅を見る事すら敵わなかった。ただ、シャルスはその人の量を見て、人数が少ないように感じたが、特に言うべきではないと思ったので黙っていた。


 そして、しばらく歩いて行くと、異様な雰囲気の扉があった。


「……この先、だな。この先から血のにおいがする」


「で、でも、この扉、魔法がかかってません?それに鉄製だからそう簡単には開けられなさそうですし…」


 シャルスがそう言っている間に、清雅は少しのためらいもなく扉を蹴り破る。その扉は一瞬ガラスが割れるような音がすると同時にガゴンッ!という重い音と共に開く。


「よし。これで大丈夫だな」


「え、えぇ~?い、いやいや、そんな馬鹿な。そんな簡単に開くわけが……」


「ほら、どうした?行くぞ?」


「……まぁ、開いたから問題ない……ですよね?」


 シャルスはどこか嫌な予感がしつつも清雅の後を追う。




 清雅達は扉の奥へ奥へと進んでいき、最奥にたどり着いた時、鉄格子の向こうにあるモノを見た。


「なん、ですか、コレ…!」


「……予想と同じくらいにはひどいな、これは」


 そこにいたのは、両手を縛られ、両足を壁に繋がれ、全身に痛々しい傷が無数にあり、そのほとんどから血が出ている、常人なら吐き気を催すようなモノだった。しかも清雅が出していた光の球のせいで、その傷が更にひどく見える。その状態から確認できる範囲で、その人物が男であるというのが分かるくらいだ。


 清雅はすぐさまシャルスの目をふさぎ、それを見れないようにした。


「良いか?俺が良いって言うまで絶対目を開けるなよ?分かったな」


「は、はい……」


 清雅の言葉に、シャルスは震えた声で答える。そして、清雅は邪魔な鉄格子を炎を生み出して溶かし、中へと入ってその男の前へと行くと、


「かなり痛いかもしれんが、耐えてくれよ…!」


 水魔法で血を洗い流す。すると、男は、


「うがあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


と叫ぶ。清雅は苦しそうな表情になりながらある程度血を洗い流し、即座に魔法を使って傷を治す。すぐに傷はふさがったが、出血量を見るに、今生きているのが不思議なくらいに血が足りない。清雅は少し考え、躊躇いつつも、


「ぶっつけ本番だが、成功してくれよ…!!」


 水魔法を使ってその男の血液を複製して増やす。それを数秒していると、男の顔色もだんだんとだが良くなっていく。


 その時に改めてその男の容姿を確認すると、キラキラと光を反射する銀髪に、長く閉じ込められていたからか、やせ細っている。見た目的には清雅より明らかに幼く、現代ならギリギリ小学生か中学生になったばかりの少年だった。


 内心、どうしてこんな酷いことをする必要があったのかと考えるが、おそらくそこに意味が無いであろうことを清雅は知っていた。


「……これくらいで良いか…?」


 清雅はそう呟き少年から離れると、すぐさま周りの血を全て洗い流し、


「シャルス。もういいぞ」


 そう声をかけると、シャルスは勢いよく振り返って少年に抱き着く。


「う、うぅぅぅ…一体、この人が何をしたっていうんですか……この人はただ、皆を守っただけなのに…!!」


 シャルスが泣きながらそう言うと、


「……あ…ぅ……」


と、少年はかすれた声で反応する。シャルスはそれに気付くと同時に、少年の顔を見て、


「だ、大丈夫ですか!?私です、シャルスです!!」


 泣きながら彼女は必死で問う。少年はそれに対して答えようと声を出そうとするが、


「ぁ……ぅ……ぅ……」


 おそらく長い間声を出していなかったのだろう、声をうまく出せないでいた。その様子を見て、清雅は後ろからシャルスの肩に手をかけ、


「シャルス。立て。さっさとここから逃げ出すぞ」


「で、でも…!」


「でもじゃねぇよ。ここにいつまでも留まってたら見張りの連中が来る。だからさっさとここから出て、続きは外だ」


 清雅はそう言うと、水の刃を創り出して、少年の手足を縛っている鎖を切断する。


「ほら、行くぞ」


 清雅は少年を担ぎ、シャルスの手を引いて牢屋を抜け出すのだった。

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