第四十四話
清雅達はギルドの中へと入っていく。入口には受付の人達がおり、その奥には広い酒場。そのさらに奥に掲示板があり、おそらくそこに依頼書などがあるのだろう。
ライラは迷うことなく受付へと向かう。その後ろを清雅達はついて行くと、受付にいた女性がこちらに気付き、
「ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用件でしょうか?」
と声をかける。ライラは、
「あぁ、今日はあの子達のギルドカードの発行をお願いしに来たんだけど、良い?」
と答える。すると、受付の女性は笑顔で、
「分かりました。では、ギルドカードを発行したい方はお名前を言ってくださった後この水晶に触れてください」
と隣にある水晶をライラの前に出す。それと同時にライラは清雅達を見る。清雅はその視線を受けて、自分が最初かな。と思いライラの隣に行き、受付の人にフィアに名乗った名前を名乗ってから水晶に触れる。すると、淡く水晶が輝く。
「お待たせしました。これが一枚目ですかね。では次の方どうぞ」
そういうと、受付の人は清雅に一枚のカードを手渡す。それは水のような青い色をしていた。
「(ふぅん。これがギルドカードか。それにしても、意外と簡単に手に入るんだな)」
そう思いながら清雅は水晶の前から退く。
カードに書いてあったものは、
セイガ=シロガネ
ランク:D
というとても質素なモノだった。
清雅はそれを見た後顔をあげる。すると、もう終わったのか、全員が清雅の方を見ている。
「終わったのか?」
と清雅が聞くと、フィアが、
「ルーリスのはどうするのよ」
と言ってくる。清雅は言われて気付くと、ルーリスを起こす。
「ん……ふぁぁ~、ふぅ。っと、皆どうしたの?」
「あぁ、お前のギルドカードを作りたくてな。とりあえずそこの水晶に手を乗せてくれ」
「分かった」
タタタ。とルーリスは受付の前に行き、水晶に触れる。名前はすでに清雅達が言っていたので、おそらく大丈夫だろう。そして、
「はい。終わりました。これをどうぞ」
と受付の人がルーリスにギルドカードを手渡す。色は清雅達と同じ青色だった。
「ありがとう。じゃ、行くよ」
ライラは清雅達にそう声をかけ、ギルドから出て行く。
「よかったんですか?今なら声をかけられたと思うんですが」
清雅達が立ち去ったギルドの受付で、女性はそう誰かに声をかける。ただ、清雅達を見送ったまま顔を動かしてないため独り言のように見える。すると、
「別に、良いんです。あの人達の名前を知る事ができたなら。後はお父様にでも相談して連れてきてもらいますし、ギルドに所属されたのですから、支部全域に声をかけたら数日で見つかるでしょう?まぁ、それでもしばらくは何もしませんけどね。するとしたら今出てる指名手配を解除してもらうくらいでしょうか」
と、女性の横から声が上がる。それは、つい先ほど清花にお姫様と呼ばれた少女だった。
「確かにそれはそうですが、あの人達はたぶん捕まえられないと思いますよ?」
「なんでそう思うの?」
お姫様の質問に、受付の女性はお姫様の方を向いて柔らかい笑みを浮かべつつ、
「それはですね、あの人達の中に3人ほどドラゴンを軽く倒せるような人が居ますもの」
と、軽やかな声で言う。彼女の言い放った言葉の重みを本当に理解できたものはその場におそらくはいなかったのだろう。ただ一つ分かるのは、彼らはもはや人とは呼べない恐ろしい者達だ、という事だけだった。
そんな会話があった事を知らない清雅達は、ギルドからある程度離れた時、ふとフィアがある事に気付く。否、気付いてしまった。
「ねぇ、今、ギルドカードを作る時、本名を名乗っちゃったんだけど、私達、指名手配、されてたわよね?」
その一言に、その場の空気が凍る。ギギギギ、と機械的な動きでライラは振り返ると、
「いや、大丈夫だよ。確か名前までは表記されてなかったはずだし」
と、顔を真っ青にして言う。どちらかというと清雅達に言うのではなく自分自身に言い聞かせているように見えなくもないが。
「そ、そうよね。名前の情報が無いならばれるわけないだろうから、追ってくるわけないよね」
うんうん。と納得するように頷くフィア。
「なぁ、さっさと逃げれば考えなくて済むんじゃないか?」
清雅が何気なく言った言葉にフィア達はピクッ!と反応し、
「それだ!」
そう言うが早いか、出来るだけ不自然に見えない様に早歩きで先ほどの路地へと向かう。
スタスタスターッと早歩きで移動したライラ達は路地裏に入ると走り出すが、最初と同じようにライラと清雅は同じ速度で進んで、それ以外の人物は置いて行かれかけている。
「ストップ。ここはさすがに歩くしかないって」
「くぅ……!優奈ちゃんとルーリスちゃんはまだわかるけども、フィアちゃんと清花さんはどう考えてもおかしいでしょうが!まさか、今の魔界はゆとりなのか!?」
「どうしてその結論に至ったんだよ」
清雅の静止の言葉を聞いたライラが言った事に思わず清雅は突っ込む。
「だって、私達がいた時はこの道を最低20分で走り抜けるわよ?っていうか、20分もかかるのなんていなかったから実質10分くらい?いや、一人遅いのがいたような…?」
ブツブツと文句を言っていたライラは、途中から考え始めてしまう。そして、ライラが我に返った辺りでフィア達がやっと清雅とライラに追いつく。
「うぅむ……このままの速度で移動するのはさすがに見つかる可能性が上がるから……よし!清雅君!皆を抱えてついて来て!」
「無茶言うな!」
ライラが名案だと言わんばかりの表情で清雅に命令する。清雅は当然突っ込むが、ライラは聞く耳を持たず先へと進んでいく。
「あぁ~…クソ、皆、ちょっとだけ我慢してろよ?大丈夫だ。数分乗り物に乗るだけだから」
清雅はそういうと、フィア達が唖然としているのを無視して闇を使いフィア達を覆うと、それを掴んで風を使って持ち上げる。そして、
「うららららら!」
と声を上げつつ全力で走り出す。そして、ライラはそれに気付くと、少し驚いたもののすぐさま清雅と同じくらいの速度で走り出す。二人はその速度を保ったまま路地を走り抜け、最初に通った地下通路への入り口があるところまでたどり着いたのだった。




