第四十三話
最初より幾分か歩く速度を落としたライラ達は、一時間近くかけてようやく表通りに出る事が出来た。
「よし、やっと出れたわ」
ライラは背伸びをしながらそういい、その後ろから清雅達が出てくる。
「ふぅ。あんなに通りにくい道は夏休みに旅行行った時以来だな」
清雅はのんきにそんな感想を漏らしながら表通りを見る。その隣で、肩で息をしている優奈がいた。
「はぁ、はぁ、あんた、良くあんな道をルーリスちゃんを背負ったままこんなに時間をかけて通って疲れた表情を見せないわね。しかも…って、夏休みの旅行以来って、一体どこに行ってるのよ」
優奈はそう言いながら、手の甲で叩く。が、力があまり入っておらず、ペチッという軽い乾いた音が響くだけだった。ちなみに、清雅に背負われているルーリスはいつの間にか寝ていた。
「大丈夫か?もう今にも倒れそうな感じだが」
「私は、まだ大丈夫よ。それよりも、フィアを助けなさいって」
優奈に言われてフィアの方を見ると、身体がふらふらと不自然に揺れており、すぐに倒れそうだった。と清雅が思うと同時にフィアが清雅に向かって倒れかかってくる。咄嗟に受け止めた清雅は、フィアの額に手を当てる。
「……熱は無いみたいだな。おい、フィア、大丈夫か?」
清雅に問われ、フィアは朦朧とする意識の中、
「ちょっと、疲れただけよ。そんな不安そうな顔をしなくても、大丈夫だって」
「そうか?なら良いんだけど」
清雅がそう言っている間にフィアは立とうとして――――
「――――って言うと思うなよ?」
清雅はそれを阻止するようにお姫様抱っこをする。
「うぇ?え、えぇぇ!?な、何するのよ!お、降ろしてよぉ!」
「いやだ。倒れるくらいに疲れてる奴を歩かせるほど鬼じゃないし、何よりも俺はそれを許せない。お前がなんで無理してるのかは知らないし知る気もないが、俺の前で倒れるほど歩くんじゃねぇよ」
暴れるフィアを抑え込みつつ清雅はそういう。すると、隣から、
「清雅、それさ、言うのは良いんだけど、場所を考えよ?」
と、優奈の突っ込みが入る。ん?と清雅が思って周りを見ると、そこにいる一部の人達が清雅達の事を見ていた。
「……ライラ。さっさと行こうぜ?出来ればこっから逃げたい」
「こっちは正直君から逃げたいんだけどね?」
少し顔を青くしながら言う清雅に向かって、ライラははっきりと言い切り、清雅は少し心にダメージを負う。
「と、とりあえず行くぞ!」
「はいはい」
少し泣きそうになりながら清雅はそう言い、やれやれと言ったようにライラ達は目的地に向かって歩き出す。その頃にはフィアは静かになっており、耳を真っ赤に染めて顔が見えない様に清雅にくっついていたのだった。
「(たぶん恥ずかしすぎて顔を出せないんだろうけどね……まぁ、嬉しいのもあるだろうから何も言わないけど、とりあえず頑張れ~)」
と、優奈は心の中でフィアに対して、謎の応援を送るのだった。
しばらく歩いていたらいつの間にか清花が後ろを歩いており、全く違和感が無かったので気付くのがだいぶ遅れてしまったらしく、清雅がいつからいたのか聞いたら半泣きで文句を言われた。
「皆に気付いてもらえないのは一番悲しいんですけど……」
「いや、清花さんわざと気配消してたでしょ。正直途中でフィアちゃん達が遅れなかったら気付かなかったくらいにさ」
そんなことないですよ?ととぼけるように言う清花に、ライラは苦笑いしか出来なかった。
「で、清雅はいつまで二人を抱えてる気?」
優奈はやっと呼吸が整ったのか、いつも通りの声で言う。
「いや、ルーリスは寝てるし、フィアは降ろしたら無理しそうだから降ろすに降ろせないような状況?」
「む、無理なんてしてないって言ってるじゃないの!だから早く降ろしなさいって!!」
清雅の言葉に反応したフィアはジタバタと暴れ出す。
「言ったな?じゃあ二度と無理すんなよ?したら今度は……な?」
どこか不穏な雰囲気を纏わせながら清雅はフィアを降ろす。その言葉を聞いたフィアは、心底無理はしない様にしようと思うのだった。
「これでフィアは降りたとしても、ルーリスは寝てるから無理だよな。まぁ、フィアよりは色んな意味でマシだから良いんだけ…どっ!?」
「ちょっとセイガ?それはどういう意味かな?」
清雅が喋っている途中で、フィアは真っ黒な笑みを浮かべながら両手で清雅の首をだんだんと力を入れつつ絞めあげる。
「あ、ぁの……す、すいま、せんでした」
首を絞められてるせいで声がかすれていたが、清雅が素直に謝ると、フィアは頬を膨らませながら首を絞めていた手を離す。
「分かったなら良いわ。次言ったら、うっかり殺しちゃうかもしれないから……ね?」
最後の方はドス黒い笑みを浮かべてフィアは言う。その笑顔に清雅はゾッとして、次は気を付けようと思うのだった。そして、
「二人とも、何やってんのよ」
その様子を見ていた優奈は、冷静にそう突っ込むのだった。
その後は特に何事も無く進み、ようやく冒険者ギルドの前へと着いたのだった。




