第四十二話
「はい、皆集合!……って、なんで私が仕切ってるんだっけ?まぁ良いか。ってなわけで、これから街に出るからね。まずは冒険者ギルドに向かうから。そこに登録さえしちゃえばここにもう二度と来なくて済むから!さっさと行ってさっさと逃げよう!」
清雅達はその声を聞いて、自分たちがやっていたことをやめ、ライラの元へ集まる。その時ライラの顔色がなぜか青くなっている気がしたが、突っ込んだら殺されそうだな。と全員が思ったために突っ込まれることは無かった。
そして、彼らは表通りへ出る道を進んでいく。
その時清雅の背中にルーリスが負ぶわれているように飛び乗ったが、清雅がやめろという事は無かったのでそのまま進む。
――――清雅達が去った後、物陰に隠れていた一人の人物が出てくる。
「……あの人たちは、なんであの道を知ってるの?」
その人物は動き出す。目指すは清雅達の向かった方向。
表通りへ出るための道中はごみなどがそこらじゅうに転がっており、通りにくい場所だった。そのなかをライラは一定のペースでスイスイと歩く。慣れているのか清雅も同じくらいの速度でついて行くが、フィア達は滅多にこのような道は通らないので、なかなか進めない。
「ライラ。ちょっとストップ。後ろが止まってる」
パシッと清雅がライラの腕をつかむと、やっと気づいたのか、ライラが振り返り止まる。
「あれ?いつの間にこんな差が出来てたの?てか、なんでこんなに距離が開くわけ?」
「結構最初の方から距離があったと思うけど、だんだんと道が通りにくくなってきたからな。それでだと思うよ?」
「え?この道が通りにくい?う~ん、これでも一番楽な道を選んだはずなんだけどなぁ?」
清雅の返答にライラは首を傾げる。確かにライラや清雅からしたらこの程度の道で通りにくいと言う事は無い。それぞれ理由はあるが、清雅の場合は友人と一緒に山を駆け回ったことが結構日常的だったりしたので、それが主は理由だったりする。
「……あれ?清花さんは?」
唐突にライラがそんな事を言う。は?と思わず声を漏らしつつ振り返ると、確かに清花がいない。
どこ行ったんだ?と清雅は思いつつも、どうせすぐに帰ってくるだろう。と考え、
「まぁ、放置で良いんじゃないか?どうせそこらへんで何かやってるんだと思うよ」
「確かにそう思わなくはないけども……あの人を放っておくと絶対得にならないと思うんだよね。色んな意味で」
清雅の言葉に、真剣な顔をして言うライラ。昔何かやられたのだろうか?と思わなくもないが、深く聞くのはなぜか不味い気がしたので、聞かないことにした。
「はぁ、はぁ、ったく、なんでそんなに早く進めるの?」
ようやくフィア達は清雅とライラに追いつく。なぜかフィアが肩で息をしているのだが、そんなに疲れることは無いはずである。ただ、清雅は無意識に、
「背負ってやろうか?」
と聞く。もちろんその発言にフィアはおろか、優奈やライラも驚く。
「え、えぇ?いや、その、それは……」
「ん?別に背負わなくても大丈夫か?なら良いんだけども」
顔を真っ赤にしておどおどするフィアに、少し困り顔で言う清雅。
「えっと、清雅?それ、本気で言ってるの?」
「は?そりゃ辛そうにされたらこっちも少し辛くなるからな。もちろん本気だぞ?」
「あぁ、これは本気で言ってるわ……」
優奈とライラが呆れた声をだすが、なんでそんな風に言われているのか分かっていない清雅は首を傾げる。
「で、フィアはどうしたいの?たぶん何も考えてないけど?」
「え、っと、じゃあ……ううん。やっぱり自分で歩くよ。あ、ありがとね」
一瞬お願いしようかと思ったが、結局自分で歩くことにした。もちろん、清雅はフィアの中で激しい葛藤があった事は知る由もなかった。
「そうか。じゃあ行こう」
清雅の声に反応し、ライラを先頭に清雅達はまた歩き出す。
「あの人たち、どこから来たんだろう。……あれ?一人消えてる?どこに――――」
「動かないでください」
ピタッ。と清雅達を尾行していた人物は動きを止める。その人物の喉元に、ひやりとしか感覚が走る。それは、例えるならば、氷のような冷たさだった。しかし、とても鋭いのか、冷たさだけでなく痛みも走る。おそらく氷でできたナイフか、冷やされたナイフなのだろう。後者はあまり特が無いため、前者なのだろう。だが、ただ氷の刃を突きつけられているなら問題は無かった。なぜならば、自分を拘束しているこの腕をひねり、その刃を奪い取るだけで良いのだから。この場での一番の問題点は、
足元に真っ黒な刃がいくつも自分の事を狙っていることである。
まるで影が物質化したかのようなその刃は、自分の身体を容易に切り裂けるのだろう。と、今刃を突きつけられている人物は思う。
「一応聞いておきますが、あなたの目的はなんですか?」
有無を言わせない声色で、拘束している人物は聞く。
「っ、彼らに、興味がわいたからですが、それじゃ、ダメですか?」
声からして、女性と思われる拘束されている人物は、声を振り絞って言う。
「……そうですか。別に私はあなたをどうかしようと思っているわけではないので、ダメということは無いですよ。ただ、興味がわいたというなら、冒険者ギルドに来てください。たぶんあなたの地位ではそこに行くのが精一杯でしょうからね。では、また会いましょう。お姫様」
突きつけられていた刃の感覚が消えると同時に、拘束は解け自由になる。お姫様と呼ばれた彼女は、
「今のは、一体……?」
と呟き、さっきまで人が居たはずの場所を数秒眺めているのだった。




