第三十九話
――――ゴロゴロゴロゴローッと清雅は階段を転げ落ち、ズダーンッ!という音をたててすぐ前にあった壁にぶつかり止まる。
「うわ!びっくりした!だ、大丈夫?ていうか、なんで転げ落ちてくるの?」
階段を降り切った時に横を通り過ぎて行った清雅に驚いたライラは一瞬ビクッ!と震えるが、すぐに落ちて来たのが清雅だと気付くと、駆け寄って心配する。
「だ、誰かに蹴られた……たぶん優奈……うあぁ……視界が回ってる……き、気持ち悪い……」
ぐるぐる回る視界が辛く、清雅はそのまま目を閉じる。数秒後再び目を開けると、視界はある程度元に戻っていた。
「うぅ、階段に落とされるとは思わなかったな……なんでか知らないけど痛くないんだけどね」
「なんだ、意外と元気そうね。って、清花と一緒だからひ弱なわけないか」
クラクラとする意識を抑え込み、清雅は座る。それを見てライラは一人で何かを納得する。すると、上からものすごい勢いでフィアとルーリスが降りて来て、清雅を見つけるなり飛びついてくる。ライラはそれを躱せたのだが、ぼんやりしていた清雅は飛び掛かられた衝撃で二人が降りて来た事に気付く。
「うおぁ!?ちょ、ど、どうした!?」
「だって清雅が急に消えるから!」
「心細いのー!」
プルプル震えながら二人は言う。それを聞いて清雅は二人が震えている理由を理解する。
「あぁ。確かに上の雰囲気はきついよ。……思い出したらダメだ。俺も動けなくなる……」
言いながら清雅はプルプルと震えだすが、深呼吸を何度かして落ち着く。
「いつまでそうしてるの?ほら、そろそろ行くわよ」
恐怖心を押し込めたあたりでライラにそう言われる。
「ん、分かった。ちょっと待ってくれ。っていうか、優奈と清花がいない気がするんだけど?」
清雅は返事をした時に二人足りない事に気付く。清雅に言われてライラも気付く。
「あ、本当だ。ん~……まだ上にいるのかな?はぁ、仕方ない。もう少し待つかな」
ライラはそう言いつつ階段に座る。
場所は階段の上に移る。
優奈は清花の目的を聞き、優奈は一つの疑問を口にする。
「清雅の中にいる人物の監視?どういうこと?」
「言葉通りですよ。清雅君の中にはもう一人います。まぁ、気付いてるのは指で数えられる位ですけどね」
やはり笑みを浮かべたまま言う清花に優奈は何故か背筋が凍るような不気味さを感じた。
「一つ聞くけど、なんで私に教えてくれたの?」
ゴクリ。と息をのむ音が聞こえる。
「ん~……特にこれと言った理由は無いですよ?ただ、あなたなら誰にも言わないかなって思っただけです。だって、あなたは気を強く見せてるだけでしょう?」
ビクッ!と優奈の身体が震える。
「な、何の事よ。別に私はそんな事してないけど?」
「そうですか?まぁ、あなたがそう言うならそういう事にしておきましょう。だけど、さっきの事は絶対に言ったらダメですよ?言ったら、お仕置きしますからね?」
変わらぬ笑み。しかし先ほどとは違う、心臓が凍るかと思う位の鋭い視線。しかし、その視線はすぐに解かれ、とてつもない重圧から優奈は解放される。
「さ。早く行きましょう?皆待ちくたびれてるはずですから」
重圧から解放されたにもかかわらず動けない優奈の横を通り過ぎて行く清花。そして、清花が通り過ぎてから数秒後、優奈はやっと動き、清花たちを追う。
清雅は、コツコツ……という足音で、誰かが降りて来た事に気付く。
「ん。降りて来たか?」
休憩してから3分も経ってないが、階段から落ちた時のダメージは回復しきっていた。
「あ、ホントだ。ん~、清花さんかな?」
清雅の声に反応しライラは階段の上を見る。
「清花が先?なんか順番変わってないか?」
「別にそこは問題じゃないと思うんだけど?」
そもそも最初から問題は無いな。と、清雅は未だに離れないフィアに答え、
「っつか、問題はお前らの方だと思うんだ。いつまで俺に引っ付いてる気だ?」
「せめて明るい所に出るまで」
「いつまでも?」
清雅の突っ込みに真剣な声と表情で答えるフィアとルーリス。
「そうか。って、フィアは良いとして、ルーリスのそれはダメだ。フィアが離れたらお前も離れなさい」
「いーやーだー!」
足をバタバタと動かし、首を振りながら清雅の言葉を全力で拒否するルーリス。そのやり取りをしてる時に、清花が階段を降り切る。そして、正面にいる清雅を見て、
「えっと、これ、どういう状況ですか?」
と、困惑した声を出す。それに答えたのは、清花が降り切った階段に腰掛けていたライラだった。
「上で誰かが清雅の事を蹴り飛ばしたんでしょ?まぁ、清花さんじゃないと思うからたぶん優奈ちゃんなんだろうけどさ。で、あの二人がその後全速力で清雅に飛び掛かっただけ」
「あぁ、なるほど。そういう事だったんですか」
「それで納得できるのね……」
後から降りて来た優奈が、(途中からしか聞いていないが)ライラの言葉を聞いた清花の反応に突っ込む。
「それだけ聞ければ大丈夫ですよ。大体の事は分かりますよ?あなたも分からなくはないと思いますけどね?」
よく意味が分からないので優奈は首を傾げるが、
「別に深く考える必要はないですし、気付かないならそれでも大丈夫ですよ」
と清花が言うので、まぁ良いか。と考えることをやめ、とりあえず清雅達に全員来た事を伝える。
「あ、来たのか。じゃあ行こう」
清雅が張り切って行こうとした直後、ハッ!と気づく。
「ライラが道を知ってるんじゃんか。俺が前を歩けるわけないな」
優奈はバカだ。と頭の中で思い、その横を、はぁ。とため息をつきながらライラが通って、清雅達の前に出て皆を先導するのだった。




