第三十八話
時は少し遡り、アトランタル城内。
「姫様~!何所に居らっしゃるのですか~!?」
大きな声でそう言っているのは、城で働いているメイドだった。
「あぁ、このままだと私はクビになってしまうかもしれませんね……全く。本当にすぐ消えてしまうのですから困ったものです」
ため息をつき彼女はまた姫様を探し始める。
時間を元に戻し、現在清雅達はライラの先導の元、裏道に向かっていた。
「なぁ、本当にこっちにあるのか?」
辺りは昼間だというのに暗く、人影も無くなっていく。建物もそれにつれてボロボロになっていっているため、不安になってきた清雅は、道を間違えてるんじゃないか?という希望を込めて聞く。
「こっちで間違ってないよ?人影が無くなって来てるのと建物がボロくなってきてるのが良い証拠だね」
「嘘……だろ……?」
一番嫌だった部分が一番の証拠だったという惨劇。その時清雅はそう思ったそうな。
「セイガ。もう諦めよう。私たちはここで死んでしまうのよ」
清雅の右腕を両手で抱えるように持ち、震えながら言うフィアの言葉に清雅は一瞬納得してしまうが、
「いやだよ!?こんな所で死ぬとか死に切れねぇよ!?転生の意味を全て否定するような死に方だよ!?」
とすぐさま反論する。一瞬納得したくせに。とか言ってはいけない。清雅は誰に言うでもなくそう思うが、
「清雅。今一瞬納得したでしょ」
優奈による容赦の無い背後からの奇襲に大ダメージを受ける。
「ソ、ソンナワケナイジャナイカ!オレハソンナコトミジンモオモッテナイヨ?」
震えながら清雅はそう言う。ただし、声も震えてるためバレバレである。
「ふ~ん。そう?私にはそうは思えないんだけどなぁ?」
「私もそう思いますよ?」
優奈の不審そうな声に悪乗りか素なのか清花も言ってくる。これはルーリスも乗ってくるんじゃないのか?と清雅はフィアと同じように左腕に捕まっているルーリスを見る。そこには――――
――――ガタガタガタガタ――――
フィア以上に震えているルーリスがいた。ハッキリ言って良くここまで気が付かなかったなと思うが、清雅自身も負けないくらい震えているのでしょうがないといえる。
「べ、別に俺がどう思おうが良いじゃないか。お前らには関係ないだろ!?」
「まぁ、そうだけども。っていうか、よくよく考えたらなんでアンタも震えてるのよ。あの宿は全く大丈夫だったのに」
「アレは周りが明るかったのと人がたくさんいたからだよ!」
それで良く野宿できたな。とか優奈は思うが、ここでそれを聞いて立ち止まられて進まなくなってライラに置いて行かれるのは嫌なので、今それを言うのはやめておくことにした。
「はいはい。分かったわよ。ほら、さっさと行きましょ」
そういって優奈は震えている清雅の背中を押し、三人を前に進ませる。
その後も清雅たちがギャーギャー騒いでいたが、なんだかんだ言いながらしっかり進んでいたため、ライラにおいて行かれず、目的地に着いたようだ。
「なぁ、本当にここか?」
「ここよ」
さっきも同じようなやり取りを聞いた気がするが、優奈は一々言うのが億劫になっていた。
確かに今目の前にあるのは建物というよりも廃墟で、ライラのあの家よりもボロボロで穴が開きまくっているが、一応屋根が落ちて来たりはしそうに無かった。ただ、周りが暗いので、幽霊とかゾンビとか出てきても納得できそうな雰囲気を出していたので、たぶん清雅はその部分が怖いのだろう。こちらに召喚される前にホラゲーをやりまくっていた優奈からしたら、むしろどんなのが出てくるか少しわくわくしていたりする。
「嘘だ。これは絶対嘘だ。こんな所に入ったら二度と出てこられなくなるんだ……」
「やめてセイガ!私まで不安になっちゃうじゃない!」
「イヤダーーーー!」
前に立ってる三人は随分と楽しそうである。もう、なんというか、関わったらこっちの心臓が持ちそうにないくらい。いや、もしかしたら胃が先にやられるかもしれない。
そんなふうに騒いでいる三人を置いて、ライラは先に進もうとしている。それを見た時、優奈はなぜか前の三人にイラッと来たので、
「アンタたち!さっさと進みなさいよ!進まないならそこをどけぇ!」
と叫びつつ、清雅の背中に飛び蹴りを一撃入れて吹き飛ばす。当たる直前に危険を感じ取ったフィアとルーリスは手を離していたため、清雅だけが吹き飛んでいく。どうやら下へ続く道があるのか、ゴロゴロゴロ――――という音が聞こえ、その音はだんだんと小さくなっていった。そして、数秒の静寂の後、
「「セイガ(お兄さん)ーーーーー!!!!」」
と悲鳴をあげつつフィア達は清雅を追って行く。うまい事ライラの行ってしまった方へ飛んだので、大丈夫だろう。
その光景を後ろで見ていた清花は、
「みんな楽しそうですね~」
と、のんきに言っていた。
「はぁ、そう言ってる清花が一番楽しそうよね。全く。あなたも少しは働きなさいよ」
ため息をつきながら優奈はそういうが、清花は少し困ったような顔をして、
「これでも一応仕事中なんですよね」
という。
「そうには見えないんだけど?一体何の仕事?」
疑問に思った優奈が聞くと、数秒悩んだ後、
「あなたなら言っても良いかな。まぁ、一応確認しておきますが、本当に聞きますか?」
最後の言葉は、異様な威圧感があった。踏み込んではいけないと本能が告げるが、優奈は好奇心に負けてしまい、
「教えてくれる?」
と言ってしまう。それを聞いた清花は、誰にも言わないでくださいよ?と前置きをしてから、
「色々ありますが、一番の目的は、清雅君――――正確には、彼の中にいる人物の監視です」
満面の笑みで答えるのだった。




