第三話
清雅。いや、清雅達は、落とした説明書を取って森の中を進んでいた。途中でなんとなく開いた時に、『傷付けないで下さいよ!?高かったんですからね!?』とか書かれていたが、無視してポケットの中に突っ込む。
とにかく、清雅がフィアについて行っていると、いきなり右側の茂みが揺れて、清雅達は驚いて一歩下がった。
そして、そこから現れたのは…緑色の液体で、ノロノロと移動する、それはまさに…
スライムだった。
清雅達はホッとし、フィアは気付いたように清雅の方を見てくる。
「えっと、まさかと思うけど、魔物を倒したことがないとか言わないよね?」
清雅は「う゛っ」と言って、目を逸らす事しか出来なかった。そんな清雅をジト目で睨む魔王様…ちょい怖いです。そう思いつつ清雅がそのまま固まっていると、フィアは「はぁ。」とため息を吐き、呆れた表情で、
「本当に、どうやってここまで来たのよ…はぁ、とにかく、アイツを狩ってみて」
「え~っと、どうやって?」
「へ?何言って…」
そこまで言ってフィアは、はっ!と気付いたように、
「ま、まさか、魔法…いや、魔力を知らないとか言わないわよね!?」
清雅はまた目を逸らした。チラッとフィアの顔を見ると、口をひくつかせて、笑っていた。多分、呆れて何も言えなくなっているんだろう。
そしてフィアは、盛大にため息を吐き、
「はぁ、分かったわよ、まず魔力の感じ方から教えるわ」
「え?ちょっと待て、もしかしてあいつ、魔法を使わなくちゃ倒せないわけ?」
「はい?何を言ってるの?当たり前でしょ?スライムなんだから」
「え、物理攻撃は?」
「へ?そんなこと出来る訳無いでしょ?どうやって殆どの物質を溶かす生命体を物理で倒せっていうの?人間からは、熟練冒険者ですら何人か重症を負って、倒せたら良いかなって位のモンスターよ?」
「ちょ、ちょい待ち、あなた様は一体なんていうモンスターで戦闘経験を積ませようとしてるんですか!?」
「え?そんなの、冒険者指定でA~S級指定されてるモンスターだけど?」
「ごめん、よく分からない。そのA~Sってなんだ?」
いや、分かるよ?分かるけどさ、何て言うか、聞かなくちゃいけない使命感?みたいなのがあるんだよ。と清雅は心の中で誰へとは言わない言い訳をする。
「そ、そこから!?」
と話し合っていると、スライムが眼前を通り過ぎて行った。
清雅もフィアも顔を真っ青にして、スライムの方を見ると、スライムは騒いでいたのが五月蝿かったのか、さっきよりも早く動いている気がする。
「はぁ、まぁ、今回は私が倒すわよ」
そう言ってフィアが手を横に振るうと、フィアの背後に数十、いや、数百本の炎の矢が出現した。
そして、フィアが手を挙げると、矢が全てスライムの方に向き、数cm下がった。そして、手を振り下ろすと、炎が赤い光のように見えるくらいの速度で放たれ、スライムに全ての炎の矢が刺さる。
炎の矢を余さず受けたスライムは、シュゥゥゥ…という音を立てながら気化していっている。
「ま、こんなもんかな」
とかフィアが言っているが清雅は、
(おぉぅ、無詠唱とか有りかよ…)
と思い固まっていた。
「ちょっと?聞いてるの?おーい?」
「お、おう、ごめんごめん。無詠唱ってありなのかよ…っと思っただけだ」
「ふふふ、すごいでしょ。地道に頑張ってたら出来るようになったのよ!」
と、ドヤ顔で言っているが、清雅はそれよりも魔法の出し方の方が気になっていた。
「なぁ、魔法ってどうやるんだ?」
「え?あ~…っと~…あ、あれよ、どうなって欲しいかイメージして、そのイメージを魔力を込めて言葉にするのよ。うん。たぶん。きっと。」
「(お、おいおい…最後ので不安になったんだが…それよりも…)えっと、魔力ってどんなものなんだ?」
「………はぇ?」
清雅の言葉に、フィアは何言ってるんだ?と言わんばかりの顔をする。
「「はぇ?」じゃないんだが…教えてくれない?」
「……あ、う、うん。(こいつ…なんで魔力を知らないの!?)」
「…(なんか酷い事思われてる気がする。)えっと、で、どうすれば分かる?」
「え、えっと…じゃ、じゃあ、まず目をつぶって、力を抜いて意識を集中させてみて?」
「おう」
とりあえず清雅はフィアの言葉に従ってみる。
「えっと、どんな感じ?」
「え~っと、胸の辺りを中心に身体全体に温かい何かあるような…でも、不快感は無いな」
「よし、じゃあそれが魔力よ………え?身体全体に?」
「え?あ、うん、そうだけど?」
そう言った瞬間に、フィアの目が点になり、硬直する。
「お、お~い、フィア?大丈夫か?」
「…ハッ!え、えと、じゃあ、それを手の平に集めるイメージをして?うまく出来るとこんな感じになるわ」
我に返ったフィアはそう言うと、フィアの手の平の上に、赤黒く輝く光の球が現れた。
「やってみて?」
「おう(えっと、たぶんこんな感じか?)」
イメージ的には、胸の辺りにある温かい何かを手の平の上に集める感じだと考える。
すると、手の平に、とてつもないくらい馬鹿でかい、無色の球が出現した。なんで無色なのに見えたか。それは、その球があるであろう場所が歪んでいたからである。
「…えっとっと?」
「…えと、えと…」
清雅達はこの魔力の球を見て、完全にフリーズしていた…