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第三十六話

「いつまで転がってるのよッ!」


と言う言葉と同時に清雅は優奈に蹴られる。うまい具合に蹴りは清雅の鳩尾に入り、ゲフッ!と言いながら腹を押さえて清雅は呻く。そして、そのまま優奈は清雅の襟首をつかみ、ズリズリと引きずりながら歩く。


「首ッ!しまってるッ!は、離してくれッ!これは死ぬってば!!」


 必死で清雅は抵抗するが、うまく力が入らない。ある程度進んだところで優奈は足を止め、手を離す。



「はぁ、死ぬかと思ったわ。ったく、なんてことをしてくれるんだ!」


「襟首引っ張ってここまで連れて来ただけだけど?文句ある?」


 なぜか怒り満ちてる優奈に清雅は気圧され、思わず視線を逸らしながら、


「いえ、ナニモゴザイマセンヨ?」


と震えながら喋る。じゃあ良いわね。と優奈は冷たく言い放ち、さっさと行ってしまう。一体清雅が何をしたというのだろうか。先ほどのを見る限り、ドラゴン狩りをフィア達に阻止されていただけで、全く持って清雅は悪くない。その事に若干不満を持ちつつも清雅は皆の後ろを歩く。






 そろそろ日も傾き、太陽は茜色の光を放ち清雅達を染め上げる。もう夕暮れか。と清雅が思っていると、不意に影からシャクナが出てきて、清雅の頭の上に乗る。


「どうした?何かあったのか?」


 その事が気になった清雅はシャクナに聞く。


「別に何もないよ?ただ出て来たかっただけ。それに、そろそろ私の時間だし」


 時間?と清雅は一瞬考え、夜になるからか。と気付く。闇の妖精なのだから、たぶん暗闇とかでは強いんだろうな。という単純な考えだが、これが案外的を射ていた。


「そういえば、何日歩けばアトランタルに着くんだ?」


 ぼそりと呟いた清雅の言葉に、


「後3~4日って所でしょうか?」


と、何時の間にか隣にいた清花が答える。いたことに全く気付かなかった清雅は思わず体をビクッ!と震わせ、サッ!と距離を取る。それによって、清雅の頭の上にいたシャクナは対応できずに落ちていく。途中でフワッと浮いて地面に当たることは避けたが、頬をふくらまして、明らかに怒ってますアピールをしてくる。


「む~、なんでそんなに警戒するんですか~!」


 シャクナが落ちたことに、見えていない清花は気付かない。


「普通気付かないうちに人が隣にいたら驚くから!で、こんな反応すると思うからな!?」


 清雅もシャクナが怒っているのは見えているが、今は清花に突っ込むのが先である。


「そんなものですか?」


「そんなものなんだよ!」


 プンプン怒っているのを無視されたシャクナは、安置であろうルーリスの方へと飛んでいく。ちなみに、ルーリスはフィアと一緒にいた。


 清雅は、清花にはたぶん何を言っても無駄かもしれない。という事に気付き諦めるが、またやられても自分は言うんだろうな。と思いつつ、清雅は歩き出す。


「まぁ、そんなに歩かなくても5秒くらいで行くこともできるんですけどね」


 清花がそう呟く。


「はい?じゃあこれまでの移動はなんだったんだよ」


「それは、ほら。清雅君にこの世界を知ってもらいたかったんですよ。ええ、もちろん」


「なるほどね。はぁ、そういうことにしといてやるか。まぁ、だとしても俺たちは歩いて行くつもりだけどな」


 清雅が勝手に決めているが、フィア達には聞こえてないのでたぶん問題は無いはずである。


「そうですか?まぁ、清雅君がそういうならそうしましょう。私はこのままのんびりいますよ」


「おう。俺が言う事じゃないかもしれないが、楽しんでいこうぜ?」


「ふふふ。やっぱり清雅君は前向きに行くんですね。さすがはあの子の弟」


 清雅は、『行くんですね』の後辺りが聞こえなかったのだが、特に気にしないことにした。気にしたところで特に何も起こらないだろう。と思いながら。




 はてさて、もうすでに辺りは真っ暗に。月明かりで周りが見えない訳ではないのだが、正直まともな人はそろそろお家に入る時間帯である。ただし小中学生に限る。というか、この世界にも5時までには帰ろうね。とかそんな規則的なものはあるのだろうか。清雅がそんな事を考えながらとぼとぼと歩く。そして、ライラが一向に休もうとしないのもとても気になっていた。昼を食べた後からずっとこの調子なのだ。おかげでルーリスは歩き疲れて今は清雅の背中で背負われたまま寝ている。更にフィア達もへとへとである。しかし、この状況で清花とライラだけが、なぜか平気そうな顔をしていた。シャクナも平気そうだったが、こいつはそもそも動いてない。うらやましいじゃねぇかこの野郎。


「はぁ、一体いつまで歩き続けるつもりなんだ?」


 歩き疲れて、ついに耐え切れなくなった清雅がそう呟く。ついでに、寝ている子供は重いんだよ。とも言いたかったが、行ったら誰かに殺される気がしてならなかった。その誰かは分からないのだけども。すると、隣を歩いていた清花が、


「あらら?もう疲れちゃったんですか?」



と茶化すように言ってくる。逆にお前はなんで全く疲れてないような表情なんだよ!と清雅は突っ込みたかったが、ここで突っ込むとたぶん動けなくなる。仕方がないのでため息をついて清花の発言を全力で聞かなかったことにする。


「う~ん、ここら辺でいいかな」


 不意にライラがそう言い、家を出す。おぉ!これで休める!と、心の中でガッツポーズをしながら清雅は喜ぶ。


「皆。今日はここまでにしよう。見る限りみんなボロボロだしね。ほら、さっさと入った入った!」


 ライラは全員を家の中に放り込み、最後に自分が入る。そして、扉に鍵をかけた後、全員に鍵を渡して料理を出す。全員は食べ終わるとすぐさま割り振られた部屋に行き、泥のように眠るのだった。


 ちなみに、夕食に出て来た料理はドラゴンのステーキで、塩と胡椒で味付けされただけのモノだったが、しっかりとした歯ごたえにもかかわらず数回噛むだけでサッと肉はとけていく。更に、溢れ出す肉汁は脂っぽくなく、それでいて足りない訳でもない絶妙な加減で濃い味にもかかわらず後味はさっぱりしている料理だった。

最後の方がどう見ても手抜きかもしれない。というかそうにしか見えない。

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