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第三十一話

「終わったわよ!」


と、優奈が言うと、後ろから迫って来ていた傭兵達を蹴散らしながら清雅が、


「分かった!フィア!ルーネ!清花!急いで逃げるぞ!」


と叫び、廊下に氷の壁を作り道をふさぐ。数人残ったが、即座に倒して村長の家から飛び出るように逃げ出す。


 しかし、外に出たのだが、そこにも追っ手はいた。しかも、傭兵のように頑丈ではない村人たち。


 さすがに村人に攻撃するわけにもいかないと思った清雅は、ふと思いついたことをやってみる事にした。


「お前ら!ちょっと集まれ!」


そう声をかけ、全員が清雅の周りに集まると同時に、清雅は地面に手を当てる。すると、地面から氷が生えてくる。実際は地面と清雅たちの間の少ない隙間に氷を作り、それをだんだんと大きくなるように作っているだけだ。


 そして、その氷が家の屋根と同じくらいの高さになると同時にスクッと清雅は立ち、右手を下から屋根の方向――――前方に振る。すると、清雅たちのいる高さから数センチの所の氷が屋根に向かって伸びる。


「行くぞ!」


 清雅がそう言いつつ戦闘を走る。清雅と清雅にくっついている少女に続いて、フィア、優奈、清花、ルーネの順に屋根の上を移動する。屋根から屋根へ渡る時に氷で橋を作るが、後を追って来れない様に作った足場は全員が渡り終えたのを確認してから破壊している。


 どこに逃げているかというと、あの宿屋だ。おそらく、あの宿屋は安全圏だと清雅は思いそちらへ逃げる。しかし、やはりあの宿屋の周りにも人は居た。さて、あの人々はどうやって退かそうか清雅が悩んでいると、


「清雅君。風。使えますよね?」


と、背後から声をかけられる。ん?と声をあげながら振り向くと、首を傾げている清花が見えた。


「あ~……そういえば使えたな。ん~、あれやってみるかな」


 ぼんやりと、そういえばそんなのがあったな。と思いつつ呟く。その後ろでフィア達が驚いていることも知らずに。


 そして、宿屋の上辺りまで氷を使って移動し、宿屋の前に飛び降りる。というよりも、足場の氷を消して落ちる。そんな事をすると思わなかったフィアと優奈、それと清雅のくっついている少女は悲鳴を上げ、ルーネは想定内だったのか、呆れ顔をしている。清花はルーネと同じように想定内だったのであろう。満面の笑みである。


 地面に衝突する寸前。清雅たちを吹き上げるような突風が吹き、清雅たちの落下速度を減速させる。更にそのせいで周りにも強い風が吹く。周りにいた村人たちは急な突風に思わず目を閉じ、顔を背ける。


 清雅は村人たちが目を背けている間にフィア達を闇で掴み、宿屋の中に放り込む。全員入れた後、自身も中に入る。




「ふぅ、これでしばらくは大丈夫なはずだ。にしても、昨日の実験的なのが活きるとは思わなかったな」


 宿屋の中に入り扉を閉めた後、ホッとした清雅はそう呟き宿屋の中を見ると、フィア達を受け止めている宿屋の主人がいた。


「そんなに慌ててどうしたの?」


「あぁ、朝のアレのせいで追われてたんですよ」


「そう。はぁ、全く。もう少し静かに店に入れなかったの?」


「無理です。これが一番静かな方法です」


 主人の呆れたような表情と声で言われた質問に意味もなく胸を張り、一応敬語で答える清雅。どう考えても胸を張れることではないのだが、本人はそんなことは気にしていない。


「なんかあの人に似ているような……そういえばあの人の名字って……」


「ん?どうかしたんですか?」


「あ、いや、なんでもない。とりあえず、この子たちをどうにかしておいてよ」


「分かりました」


 主人がブツブツと呟いていたことが少し気になりつつも、清雅はフィア達を起こし、部屋の中に連れて行く。




「さて、これからどうしようかな」


 部屋に入り座った後。清雅がそう呟く。


「そんなことを言われても知らないわよ。むしろこっちが聞きたいわね」


 その発言にフィアが答える。ちなみに、ここは清雅の部屋である。


「それを言われたら俺はどうしようもなくなるんだが」


「そんなことより清雅。その子はどうしたのよ」


 清雅の一言をそんな事で片付け、優奈が清雅の影に隠れている少女について聞く。


「あぁ、この子な。さっき俺が分かれた所の牢屋の中にいたんだよ」


「ふぅん。で、その子を連れ出す為になんで私たちを先に行かせたのよ」


「それはだなぁ、大人数だとこいつを余計怯えさせそうだったんだよ」


「なるほどね。それなら良いわ。今回の事は許してあげる」


 フィアの質問に答えつつ、清雅は少女を自分の前に引っ張り出す。すると、そのまま清雅の足の上に座る。


 清雅はそれには特に何も思わなかったのだが、なぜか周り――――主にフィアからの視線が痛い。


「あ~っと、自己紹介できるか?」


 清雅はフィアからの視線に耐えつつ少女に話しかける。すると、少女はこくりと頷き、


「私の名前はルーリスです。よろしくお願いします」


と、ゆっくりとだがハッキリと話す。その時、ルーリスに生えている耳と尻尾がピクピクと動いていた。そして、清雅がフィア達の紹介をして、一人一言ずつ話してから、本題に戻る。


「で?とりあえず行先はこのままアトランタルで良いのか?」


「う~ん、そうしようか。まぁ、中に入る方法は思い付かないんだけどね」


「それで今はいいか。問題は後で考えればいいさ」


「そんなので本当に大丈夫かしら……」


 清雅とフィアがサクサクと決めていくが、実質何も考えていないというのが丸分かりである。それが分かっている優奈は心配するが、それに代わる案が思いつくわけでもないので不安を口にするだけで終わる。

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