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第二話

 さて、彼が意識を取り戻した直後、風切り音が響いてきたが、無視した。


 辺りを見回すと、山しか見えない。定番のドラゴンは見えないな...と少し残念に思う。


 次に上を向くと、太陽は一つ。太陽が二つとかはなかった。


 そして、少年は一度深呼吸をし、出来るだけ意識しないようにしていた下を見ると、うん、やっぱり現在進行形で地面が近づいているじゃねぇか☆と少年は頭の中で突っ込む。――――ちなみにこの状況を理解するまで、体感では30秒くらいだが、実質5秒もかかってないだろう。


「って、冗談きついぞクソヤロウ!!」


と叫びながら、反射的にズボンのポケットに手を突っ込んだ。すると、あの空間では何も無かった筈なのに、右ポケットの中から、文庫本サイズの説明書と書かれた本が出てきた。


「何だこれ!あ、もしやあの神様が言ってた能力の説明か!?」


 もしかしたら、この状況を打破できるかも。と思いページをめくると、都合よく、「飛ぶ方法」と書かれたページが出てきた。


「ラッキー、えっと、何々~?…飛ぶ方法は~…「こう、ふわって感じです!」…「ふわっ」じゃねぇぞゴラー!!!!」


 そう叫んだ時には、すでに地面に激突寸前、俺は、もう一度神に会うんだ。と思い、少年は潔く落ちるのだった。


 彼は、チュドーンという、盛大な爆発音と共に地面に激突し、土煙をこれまた盛大にたてながら倒れた。その際、説明書から手が離れ、近くに落ちた。いや、そんなことよりも、


「は、ははは、良かった、い、生きてたぜ、あ、あ~、怖かった…あのクソ神め、許すマジ。」


 この瞬間、少年の中で清花への評価は急激に下がったのである。


「にしても、此処は一体…?」


「え、えっと、大丈夫?」


 ん?と言いながら振り返ると、俺の胸くらいの高さの身長に、赤みがかった黒髪ツインテールに、深紅のマントと黒いポーチを持った少女がいた。


「あぁ、俺は大丈夫だ。」


「そう?音的に相当高い所から落ちたように思うんだけど。」


「ま、まぁ、俺は丈夫なんだよ、うん。」


 いや、あの高さから落ちて、丈夫の一言で済むとは思えないけどな。


 とりあえず、立って話すことにしよう。


「ん、と、とりあえず、此処は何処で、君は誰だ?」


「えと、此処は魔界、レントアルシオンの、アルマの森のはずよ。で、私はフィア=マニュス、一応魔王よ。」


「そうか、えっと、俺は、白銀清雅、いや、セイガ=シロガネだ。セイガって呼んでくれ。」


 異世界なら名字と名前は逆か。と清雅は途中で気付き、訂正して名乗る。


 にしても、魔王か。最初に会えたのは神様補正だとしても、なんで森の中に?しかも、一人でいるのだろうか。と清雅は考え、


「えっと、フィアでいいか?」


「まぁ、いいけど。」


「(え、いいんだ。)じゃ、じゃあ、なんでフィアは、魔王なのに、こんな所を一人で歩いているんだ?」


「う、そ、それは…一か月くらい前に、勇者に城を崩されて、その時、どさくさに紛れて仲間と一緒に逃げ出したんだけど…途中で仲間とはぐれてね…城と仲間の損失に嘆きながらなんとなく歩いて、とりあえず野生の魔物を狩って、食糧だけはなんとかしてね…特に目的もなく歩いてて、たまたまこの近くを通った時に、物凄い爆発音がしたから、此処まで歩いてきたのよ。」


 …城を崩されて逃げる魔王…これいかに。いや、戦うとかしないんだ。つか、そんな性格なら人間サイドにちょっかい出さないんじゃね?あれか?先代魔王がやらかした感じか?ま、そこらへんは後々分かるか。清雅はそう思うが、彼女が魔王なのだから、まずは間にならないと魔王軍にしてもらった意味がない。


「なるほど、つまりフィアは城を壊されて仕方なく旅をしている訳か。」


「あぅ、改めて現状を言われると、泣けてくるわ…まぁ、否定できないんだけどね…」


「じゃあ、その旅に俺も一緒に行って良いか?」


「へ?なんで?」


「う~ん…俺、実はここら辺の地理が分からないんだよ。」


「へ?でも、空から落ちてきたよね?」


「あ、あぁ、あれは落ちたというか…落とされたというか…ま、まぁ、とにかく、分からんもんは分からん!!」


「いやいや、分からない事をそんな威張って言われてもねぇ…」


「あはは…ま、まぁ、ダメか?」


「う~ん、私的には問題ないけど…本当にいいの?私、仮にも魔王だし…理不尽な攻撃を受けても知らないわよ?」


「おう!その程度なら全然問題ないぜ!」


「そう、じゃあ、行こうか。」


そう言って、フィアは笑顔を見せ、清雅ははまだ見たことのない、未知の大地に胸を弾ませ、興奮を抑え切れずに、思わずにやけてしまうのだった。

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