第二十一話
「そういえば……さっき何をしようとしてたの?」
村に向かっている途中でフィアがそう聞いてきた。その疑問に清雅は、
「見たまんまだよ。ただ飛び降りただけ」
「なんでそんなことを?」
「いや、特に意味は無い……理由をつけるとするなら……そうだな、衝撃の緩和実験的な?まぁ、そんな理由だよ」
「ふぅん……それ、やる必要あったの?」
「いや、どう考えても必要ないけど……別にいいだろ?」
そんな他愛もない話を二人がしている後ろで、
「ねぇ清花。あの子は放置したままなの?」
「ふぇ?あぁ、オリュ君のことですか?」
「そうだけど……」
「ふっふっふ、それについては全く問題ないのですよ!何故なら……」
そう清花が目を輝かせながら言い、それに釣られて期待した顔になる。
「何故なら!?」
「この子も人化できるようになったからです!!」
「おぉ~!って、それだけ?」
「それだけって言わないでくださいよ!はぁ、まぁ良いです。さぁオリュ君!見せてあげなさい!」
清花のその声に合わせ、オリュ君の周りに不思議な黒い霧のようなものが発生して、オリュ君が見えなくなる。そして、その霧はだんだんと小さくなっていき、2メートルくらいの大きさになったところで、霧が晴れる。
そこにいたのは、執事服を着ている、頭の上に黒いピンッと立った耳と尻よりも少し高い所から黒い尻尾が出ている美青年だった。
「うわ……執事?」
「そう見えるでしょう?でもそれ、見た目だけなんですよ……」
「なんで?」
「えっとですね……まず言葉をまだ覚えてないんですよね……」
「あぁ、なるほどね。そりゃ見た目だけだよね。まぁ、頑張って」
「はぅ……まぁ、さっきフィアちゃんからもらった首輪を付けといたので、影の中に入っておいてもらいますかね……」
と、清花と優奈が喋りながら歩いており、オリュ君は、清花の影の中に入っていく。
そんな感じで村に入ると、なぜか村の人たちにじぃっと見られている気がした。
「なぁ、なんか俺たち目立ってないか?」
そう清雅が呟くと、
「そりゃ目立つでしょ。むしろこのメンバーで目立たない方がおかしいと思うけど?」
と、優奈が答える。
「ん~……そんなもんかな……まぁいいや。で?まずどこに行く?」
「私は宿をとって来た方が良いと思うけど?」
「私は特にやりたいことは無いかなぁ」
「私は村を見て回りたいです!」
と、フィア、優奈、清花の順で言う。
「ふむ、見事にばらばら……でもないか。まぁ、まずは宿をとるか。その後に村を見て回っても遅くは無いだろうし」
一応目的地を決め、清雅たちはスタスタと進んでいく。
「っと、ここか?」
そう言って立ち止まった所は、確かに宿屋だった。でも、そこは寂れて――――いや、蜘蛛の糸のようなものがあったり、窓がいくつか割れてる部分があるため、どこか廃墟に近い感じがする。というより、廃墟そのものの気がしなくもない。
「多分あってると思うけど……ここしかないのかな……」
と、清雅の後ろに隠れながらフィアが言う。
「何で俺の後ろに隠れるんだよ。別に何もないだろ。ただあんまり整備されてない感じがするだけで」
「うぅ、そう言っても……」
と、フィアがぶつぶつ言っていると、
「もしかして、フィアはこういう所が苦手なの?」
と、優奈が聞く。その声にピクッ!と小さく反応したフィアは、
「い、いや、別にそんなことは無いよ!?」
と、若干うわずった声で答える。
「なるほど、そういうことか。てか、それならよく一人でここまで来れたな」
「そ、それは……って!何でもう決めつけてるの!?」
清雅が頷きながら呟いた言葉を聞いたフィアは、思わず答えかけて気付き、悲鳴じみた声をあげる。
「分かった分かった。とにかくここは保留で、後で宿屋が無かった時に来よう。それでいいだろ?」
「……うん、出来ればそれでお願い」
消え入りそうな声で同意するフィアに、清雅はフィアの頭をポンポンと軽く叩きながら、まだ行ってない方向へ行く。
「ううむ、まぢで宿屋が無いぞ?」
あの後、清雅たちは村を全体的に見て回ったのだが、ここに訪れる旅人は少ないのか、宿屋は見つからない――――というよりも、最初に見た所よりもひどい、廃墟のようなところがあったくらいだった。
「フィアちゃん、しょうがないですよ、今回はあきらめてあそこにしましょう。ね?」
「うぅぅ……」
「フィア、諦めるしかないのよ……頑張って!」
「……はぅ……私、頑張る……」
「おぉ!偉いよフィアちゃん!」
「これから良いことあるよ!」
と、清花と優奈が二人でフィアを説得していた。それを少し離れてたところから見ていた清雅は、
「なんか……アイツらが姉妹に見えるんだが……」
と、ひとり呟いていた。そして、
「とりあえず、さっきのあそこで良いんだよな?」
「んぇ?あ、あぁ、うん、大丈夫だよ」
清雅が聞くと、それに気づいた優奈が答える。
「わかった。じゃあフィア、動けるか?」
「うん、大丈夫」
「よし、じゃあ行くぞ」
そう言って進みだした清雅。フィアは清雅のマントを掴みながらテクテク歩く。その姿を見ながら、清花と優奈がついていく。
そして、再びあの宿屋にやってきた清雅たちは、少しためらいながらも、その扉を開けた――――。




