第一話
少年は学校が終わり、家へと向かっていた。歩いていると、目の前を黒猫が通って行った。
(そういえば、黒猫が目の前を通ると不幸が訪れるって聞いたことがあったような無いような。)
と、思いながら歩いていると、十字路に出た時である。横から猛スピードで突っ込んで来たトラックに、彼ははねられて、意識を失った。
ふと目覚めると、少年は真っ白い空間にいた。見回すと、少し離れた所に、白いから確信はないが、机と椅子らしき物に座っている人物は…
(女性…か?つか、此処は?は!もしや、最近小説とかで流行りの…転生の間…か!?)
その女性は黒髪ロングの、10人中10人振り返る美女だった。そして、女性はこちらに気付いたのか、椅子から立ち上がり、此方に歩いてくる。
さすがに座ったままは悪いかな、と思い、立ち上がると、すでに女性は目の前にいた。
「すいません。あなたが死んでしまったのは、私の所為です。」
ここまで聞いて少年は、俺は死んだんだろうなぁ、と考え、この女性は神とかで、この前小説で見たような、「うっかりシュレッターにかけちゃいました。」的な奴だろうなぁ、と思った。で、何があったかを聞くと、
「私がおやつを食べながら仕事をしていたら、うっかり紅茶を零してしまって、それで慌てて外に干して、仕事に戻って、一段落して干した紙を見に行ったら、無くて、また慌てて近くの部下に聞いたら、「あぁ、あの紙ですか。ゴミだと思って捨てましたよ。」って言われちゃいました…てへへ。」
「笑えねぇよおい!いや、俺も他人事なら笑っていたけども!!」
まだシュレッターにかけられた方が納得できるほどにひどかった。
「ですよね。じゃあ、転生させるんで、それで許してくれませんか?」
あはは、と苦笑いしながら言われたのだが、普通許されるとは思わない。だが、少年はそれよりも、転生先の世界が気になった。
「転生…何処の世界だ?」
「貴方達で言うなら、よくあるファンタジー世界ですよ。」
ファンタジー…か。
「それって、魔王VS勇者的なあれ?」
「そうそう、それですよ。」
「ふむ、じゃあ、魔王サイドでも大丈夫か?」
「ん~、ちょっと待ってくださいね~。」
「あ、了解。」
と言い、待ち時間の間に少年は自分の着ているものと持っている物を確認する。まず、学校帰りだったため、学生服を着ている。靴はスニーカーなので、向こうに飛ばされたとしても問題はないだろう。持ち物は学生鞄を持っていたはずなのだが、どうやらこっちに来る時には持ってこれなかったようである。別に何か特別なものが入っているとかはないので、無くても問題は何もない。ポケットの中も何もないため、どうやら少年の装備は今着ている学生服とスニーカーだけのようだ。
それを確認した後、ふと気づく。
「そういえば、聞きそびれたんだけど、此処は何処で、貴方は誰だ?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?ここは私の私物空間で、私は、一応神様をやっている、天川清花(あまかわ きよか)です。」
と、女性改め天川清花は、此方の方を見て、笑顔で自己紹介をしてくれた。
それよりも驚いたのは、ここが彼女の私物空間ということだ。こんな広い空間を持っているとは思わなかった。たぶん、神の中でも上位の神なのだろう。
「よし、準備が終わりました。魔王軍ということで、それなりの能力も付けておきましたので、頑張ってください。」
「おう。行ってくるぜ。」
そして、そこで彼の意識は途切れた。
「はぁ。やっと成功した。これでもう少し楽しめそうですね。さて、そろそろ私も遊びに行きますかね」
誰もいなくなった空間で、天川清花は笑みを浮かべつつひとり呟くのだった。