第十四話
「なんだ……あれ…?…」
そう、清雅は無意識に呟いた。そしてその狼のようなものがこちらへ向かって歩いてくるのが見える。
「おい!フィア!なんか変なのが外にいるぞ!?」
と、フィアに声を掛ける。すると、
「見れば分かるわよ……ていうか、声が大きいわよ」
と、耳を抑えながらこちらへやってきた。
「あ、あぁ、ごめん。で、こいつはなんだ?」
「ん~、たぶん魔獣だと思うんだけど……」
「ん?魔獣?」
「そう、魔獣。あ、ここら辺の説明をしてなかったわね。まぁ、後で説明するわ」
「お、おう。分かった。で?あれはどうするんだ?」
「そうね、ここが壊されたら困るから、倒しに行くわよ」
そういい、フィアはテクテクと扉へ歩いていく。置いて行かれてもやることが無い清雅は、フィアの後を追い、外へ出る。
宿の扉を開け放ち外に出ると、すぐ左にさっきの怪物がいた。
「むぅ、予想以上にでかいな…」
そう言う清雅は、見上げるようにそれを見るのだが、どう見ても周りにある家よりも高い。
「ん~、こいつ、なんなのかしら……」
と、清雅よりも先に出ていたフィアが呟くと、
「あいつはオスクリダーリュコスってやつよ」
という声が隣から聞こえ、その方向を見ると、勇者御一行がいた。
「へぇ~、そうなのか……って、いつからそこに!?」
「さっき会った時と同じよ」
「マジデスカ。ソウデスカ」
清雅はそう呟きつつ、清雅は勇者達の気配に気づけなかった自分を悔しく思う。
「で、あんたたちは何しに出て来たわけ?」
と、不意に後ろからフィアが声を上げた。
「そりゃこいつの討伐に決まってるでしょ?そっちは?」
「奇遇ね、私たちもよ」
と、勇者とフィアが話しているのだが、何か火花が散っている気がする……あ、これは巻き込まれるぞ?と清雅が考えていると、最初宿に入るときにぶつかった鎧の男がいた。そしてその男と清雅は目が合い、思わず頭を下げてしまった。と、そんな事をしていたら、フィアが
「セイガ!こいつより先にあれを倒すわよ!」
「はぁ!?いきなり何を言っているんだ!?」
「良いから行くのよ!!」
「そ、そんな馬鹿な~~!!」
と叫ぶ清雅は、フィアに引きずられつつ、どうやってあれを倒すか考えていた。つか、こいつ、そんなに強いのか?それにしても、この魔剣、使えるんだろうか……とかも思っていた。そう考えていると少しは落ち着いた。
「さて、じゃあ、倒すんだろ?」
「え、あ、うん。でも、一応言っておくけど、私あいつの弱点とか知らないからね」
「上等だ。そっちの方が燃えるじゃねぇか」
「そ、そう?まぁ、とりあえず、その魔剣は、もし扱えるなら使って。無理ならいいから」
「了解。じゃ、行くぞ」
と清雅が言ったと同時に、上から何かが落ちてくるような音がした。
「ん?何だ?」
と言いつつキョロキョロと辺りを見渡すと、人がフワフワと降りてきていた。
「……えっと、フィア……あれって…人だよな?」
「へ?……あぁ……うん、あれは人のはず……うん、たぶんそう」
そんなことを言いながら、清雅達は完全に放心していた。そして、その人物が地面に降り立つと、キョロキョロと辺りを見渡し、そして清雅達を見ると、こちらへ歩いてきた。それを見て思わず後ずさる清雅とフィア。
「ちょっ!なんで逃げるんですか!?」
と、近づいてきた人物が叫ぶ。
「いや、だって、あれから降りてきた奴なんて、なんか危なそうじゃないか」
「えぇ!?」
「それはこっちのセリフだよ!?」
「そんな!私のどこが危ないんですか!?」
「雰囲気的な面でだよ!?」
っつか、と言葉を切り、相手を指差してから、
「お前、清花じゃねぇか!!」
そう、それは、村娘のような服装をした清花だったのだ。
「あ、分かっちゃいました?」
そう言い、清花はチロリと舌を出す。
「うん、分かっちゃったよ!」
と叫んでると、隣から腰を突かれ、振り返るとフィアが首を傾げながら、
「知り合いなの?」
と聞かれたので、清雅は一度清花の方を見て、そして数秒考えてから、
「……うん、まぁ、知り合いっちゃあ知り合いかな」
「ちょっと!今の間はなんですか!?そんなに認めたくないんですか!?」
「もちろん」
「なんで!?ひどいです!!」
「うるせぇ!俺が死ぬ原因を作った奴を知り合いと認められるかぁ!!」
「あれは不可抗力ですよ!?」
「いやいや……そもそもお前が飲み物を置いたまま作業をしてたのが原因じゃねぇか」
「あうぅ……」
と言い争ってたら、また突かれる。そして、さっきと同じくそちらを見ると、今度はさっきと違い、頭を抱えているフィアが、
「あ~、終わった?」
「え、あ、うん。たぶん終わったはずだけど」
「そう?じゃあ、とりあえず、そこの魔獣を何とかしようよ」
その一言で、清雅達はあの狼もどきの事を思い出した。
「あ~、なぁ、清花、あいつをどうにか出来ないか?」
「分かりました~。じゃ、ちょっくら行ってきますね~」
そう言って清花は狼もどきの方にスタスタと歩いていき、何かを話しかけると狼もどきは微かに頷き、森の方へ歩いて行った。そして、それを清花が見送ると、こちらへ歩いて来る。
「ちゃんと森に帰しましたよ~」
「お、おう」
「じゃあセイガ、宿に戻るわよ」
「ん、了解」
「あ、ちょっ、待ってくれよ!」
そんな感じで、清雅達は宿に戻る。




