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第十話

「ん…む?」


 清雅の意識がぼんやりと浮上してくると、右半身に違和感があった……なんていうか…何かがあるような…そんな感覚に戸惑いながら、本当は開けたくないまぶたを薄らと開けると――――


「すー…すー…」


 小さな寝息をたてながら寝ているフィアがいた。


「………あれ?なんでこいつはここで寝てんだ?」


 そうつぶやいた清雅は、自分の腕を枕にしているフィアを見てから、ため息をつき――――取りあえず、どうしようもないとさとった。そして、フィアが起きるまで何か暇をつぶせるものが無いか探すが、特に何もめぼしいものは無かった。そして、そういえばこっちに飛ばされたときにポケットに説明書があったな。という事を思い出し、ポケットの中を空いてる左手で探る。


 幸いというべきかどうかは分からないが、説明書は清雅のズボンの左ポケットに入っていた。


 何が書いてあるのかな~?と、期待半分諦め半分で開いてみる。そこに書いてあったのは――――




 清雅君の使える魔法属性一覧




 【火】【水】【風】【雷】【光】【闇】【??】【??】【??】




 清雅は、まさか親切に魔法一覧が書いてあるとは思わなかったので、思わず食い入るようにまじまじと見る。だが、この【??】が謎だった。これは一体どんな属性だ?と清雅は疑問に思うが、今は可能性があまり思いつかないので期待するだけにしておく。


 すると、右側――――フィアに動きがあった。それに反応して清雅が目を向けてみると――――清雅の腕に噛みつこうとしているフィアがいた。……え、ちょっと待って、本当に噛みつく気――――




 ガブリッ!


―――――ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!




 そんな絶叫が、アルマの森に響いた。


 その後、絶叫によって起きたフィアが、うるさい!と言いながら殴りかかってきたが、清雅は何とか躱せた。そのせいで、枕代わりにしていた狼に手をついて、思いっきり噛まれたのだが。




 五分後、少し落ち着き、昨日の残りのスライムを食べながら


「お前らなぁ、少しは加減ってもんをしろよ……」


と、半泣きになりながら文句を言ったら、


「知らないわよそんな事。私が気持ちよく寝ていたのを起こしたセイガが悪いわ」


「ガウ!≪そうだそうだ!≫」


と言う、明らかに私は悪くないわよ宣言。いや、たしかに、寝相が悪かっただけなんだけどな?でもやっぱり、俺は悪くない訳だよ。しかも、意外にも血が出てたし……もちろん、狼は完全にとばっちりだな。清雅は心の底から諦めを含んだ涙を流しながらそう心の中で口を漏らす。


「ぐぬぅ……で?とにかく、この森を抜けないといけないんだが…フィアが先導すると、このまま一生出られる気がしないから、俺が前を歩いても良いか?」


「むぅ、一生出られないってのは不服だけど…まぁ、良いわよ」


と、許可は貰った後、さっさと食べ終わり、出発することにした。




 出発したは良いが……


「なぁ、こんなにスライムってデカかったか?」


「あ~…これは~あれよ、スライムが集まって大きく膨らんだ感じよ」


「なるほど……あれがキングなスライムってやつか……」


「キングな、じゃなくてビックな、じゃないの?」


「まぁ、どっちでもいいけどな」


 そう、会話から分かるように、目の前には、3mをゆうに超えるスライムが立ちはだかっていた。もういい加減にスライム以外が出てきても良いんじゃないかな?まぁ、狼が出てきたからスライムだけじゃないんだけども。と心の中で突っ込む。


「はぁ、フィア、こいつは捕獲か?それとも、排除しちまっていいか?」


「楽な方で良いわよ」


「そうか」


と言われたので、清雅はとりあえず、試したい魔法をやってみることにする。


 とにかく、現在進行形で迫って来ているスライムと清雅達の間に、小さい竜巻を創り出し、次に火球を生み出す。そして、その火球を――――竜巻にぶつける!!


 すると、予想通りに竜巻は火をまとって徐々に大きくなり、スライムにぶつかった後、スライムを細切れにさせながら巨大になり、そして、スライムがいなくなったと同時に消滅した。


 よし、魔法は組み合わせる事が出来るのは分かったし、スライムも倒せたから一石二鳥だな。と、キリッ!とした表情で清雅はスライムの消滅した道を見る。


「さて、進むか」


「え、まだやめた方が良いと思うけど」


と、フィアが上を見ながら言ってくる。


「は?なんで――――」


と言って、フィアの方に振り返り、その場に止まると同時にボトリ、という音が複数、背後からした。


「…あ~、またこのパターンか……」


そう言いながら背後を確認すると――――ほら、やっぱりいたよ…スライムの群れが…てか、あの炎で燃え尽きなかったのかよ。意外に耐えるな~…清雅はそうブツブツと呟いた後、


「もうさ…」


 もう一つ、ぼそりと呟きながら手を前に出す。そして――――


「しつこいんだよ!いい加減にしろぉ!」


と叫び、スライムを凍らせ、その氷に向かって、止めと言わんばかりに雷撃を落とす。


「はぁー、はぁー…くそ、驚く位にオリジナリティーの欠片もねぇ…」


 さすがに、ただでさえも魔力を使う凍結に加え、雷撃まで使ったのだから、さすがに体力も減る。魔力値がバグってても、体力には全く変わりがないのだ。


「まったく…やっぱりセイガは規格外ね。もしかしたら勇者より強いんじゃ…」


と、のんきにフィアが近づいてきたので、


「お前も手伝ってくれてもよかったじゃねぇか…」


と清雅が文句を言うと


「嫌よ。疲れたくないもの」


 思いっきり拒否られた。その拒否がこれまでの攻撃の中で、地味だが一番強烈だったかもしれない。


「まぁ、とにかく行かないの?」


「くそ、何かお前に言われるのは泣きたくなるが…まぁ、行くか…」


 そんな感じで進み始める。




 これでちゃんと森から出られるのだろうか。と不安になる清雅なのであった。

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