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世界に一人だけの医者  作者: 香坂 蓮
Karte 5 日常 
21/34

同居騒動

日常を描く章です。なかなかキャラクターが思ったように動いてくれない(>_<)


12月25日 追記

5章が完全なる説明の章となってしまいました。はっきりいって面白くないです。非常に申し訳ないのですが、医療用語に興味のない方は読み飛ばしていただいた方がよいかもしれません。

「そうそう……そんな感じで顎を持ち上げて……」

「ふむ……こんな感じでよいのか?」


 少し垂れた大きな瞳を細めながら、一人のエルフがドワーフの少女の唇に自らの唇を近づける。

 二つの唇が重なり合おうとするその瞬間……。


「すと~っぷ!」


 ドワーフの少女が目を開け、顔を真っ赤にして飛び起きる。


「なんじゃいソフィア!それでは出来ぬではないか?」

「れんしゅう!ほんとにちゅうはだめ!」


 ソフィアは慌ててリュウの後ろに逃げ込んだ。


「何を照れておる。女同士なんじゃし接吻の一つや二つ構わんじゃろ?」

「まぁまぁ……まだ若い子にそんなこと言ってやるな」

「むっ?わらわだってまだ80歳と少しじゃぞ?」

「こいつはまだ19歳なの!」


 不服そうなアダルジーザをリュウは呆れたようにたしなめる。


「むぅ……ではリュウよ!お主がソフィアの代わりになってくれ」

「俺が!?」

「それもだめ!」

「なぜじゃ!?それではわらわが“人工呼吸”の練習が出来ぬではないか!そもそもソフィアは関係なかろう!?」

「でもせんせはだめ!」

「嫌じゃ!わらわはリュウに接吻するのじゃ!」

「だめ!ちゅうはぜったいだめ!」

「待て待て!今は人工呼吸の話だ!」


………………

…………

……


 ラージョンの片隅にある『シルベスト病院』が、こんな感じで今まで以上に賑やかになったのには理由がある。


 こんな言い方をすると何か語るべき深い事情があるように思えてくるが、なんのことはない。

 まとめるならば、「アダルジーザが『わらわも一緒に住む!』と言い出したから」である。その時のことを思い出すだけでも混沌(カオス)だとリュウは心から思う。



「えっと……今なんとおっしゃいました?」

「むっ?聞き取りにくかったか?体調が治り次第、こちらで一緒に生活させて頂きたい、と申したのじゃが?」


 思いもよらないアダルジーザの提案にリュウは思わず目が点になった。


「いやいや困りますよ!どうしたんですか急に?」

「聞くところによるとお主は我々の常識からはかけ離れた方法で病人を治しているそうじゃないか。実際わらわの核病も今まで誰も想像すらしなかったような方法で治してくれたしのう。実に面白い!わらわはその知識が欲しい。一緒に暮らし、お主の元で修行することでその知識を余すことなくわらわに伝授して欲しいのじゃ」


 アダルジーザの一点の曇りもないキラキラとした視線に思わずリュウはたじろぐ。


「……アダルジーザさんは高貴なお方なのでしょう?このような小さな病院にはふさわしくないですよ」

「わらわが高貴?まったくそんなことはないぞ?わらわは一介の教師にすぎぬ」

「えっ?……お姫様じゃないんですか?」

「わらわが……姫!?はっはっはっ!お主は本当におもしろいのう!なぜゆえそんな勘違いをしたのじゃ?」

「 “わらわ”ってお姫様が使うんじゃなかったでしたっけ?」

「ふむ……言われてみれば自らを“わらわ”と呼ぶ者は珍しいからのぉ。このような勘違いを生んでしまうこともあるのか……」


 アダルジーザは「なるほど」と言った顔で呟く。


「“わらわ”とは子供のように未熟な自分、という意味じゃ。エルフとして長い時を生きていると何かと傲慢になる者が多いからのぅ。自分自身への戒めじゃよ」


 なるほど……勉強になる。

 “わらわ”といえば江戸時代あたりの姫君を思い浮かべるリュウは素直に感心する。


「……そうじゃなくて!急に引っ越しとなっても大変でしょう!ここはかなり狭いですし……。それにお仕事はどうされるのです?」

「ふむ……まったく問題ないな!わらわはむしろ狭いほうが落ち着くのじゃ。学校についてはビアンカとグラートの二人に任せておけば問題ない。まぁたまに講師として顔を出すくらいはしなければならんじゃろうが」


 ここまで言い切られてしまうといっそ清々しかった。

 満面の笑顔を浮かべるアダルジーザをビアンカはもはや諦めたかのような顔をして眺めている。


「お主にとっても悪いことではないと思うぞ?なにしろエルフが使える魔法は幅広い。最近ではあまり使われていないような古い魔法も知っておる。間違いなくなんらかの役には立つと思うがのう」


 正直それは魅力的な話である。

 まだ自分が知らない魔法で治療に応用できるものがあれば、医療水準がより一層高くなるというものだ。また、一般生活においても多様な魔法が使えることは非常に便利である。


(まぁもう一人くらいならなんとか住めるか……)


 そんなことを思いながらソフィアの方を見る。

 視線に気づいたソフィアはわずかに微笑みながら、小さく頷いた。


「分かりました!私の持っている知識をあなたに伝授する代わりにあなたの知識を我々に伝授して頂く、ということにしましょう」

「ありがたい!それでは身体が完全に治り次第、引っ越しの準備をさせてもらおう」


 そう答えたアダルジーザの顔は、まるでおもちゃを与えられた子供のように輝いていた。


多くのお気に入り登録、評価を頂き感激しております!これを励みに頑張って執筆していきたいです。

本当にありがとうございます(*^_^*)

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