はじめに
医療モノです。手術シーンなどでグロテスクな描写をすることもあると思います。
魔法で病気やケガを治す。
こう言うと多くの人はゲームの世界によくある魔法を想像するだろう。
例えば、回復魔法を使うと体力が全回復してケガも病気もすべて治ってしまう。
例えば、誤って毒を飲んでしまっても状態異常を解く魔法を使えば瞬く間に治ってしまう。
もしかしたらこんな魔法が存在する世界もあるのかもしれない。
しかし残念ながらこの世界には、そんな万能な魔法はない。
この世界にある、治療のための使われる魔法は2つ。この2つを総称して「治癒魔法」と呼ぶ。
この治癒魔法をある一定の基準以上のレベルで使えれば、医師として活動することが許される。
『回復』
手をかざした部分のケガや病気を治す。
『病魔退散』
全身に魔法をかけ、身体から病魔を追い払う魔法。
先ほどのゲームの魔法と同じじゃないか?
そんなことはない。『回復』を使っても治らない病気は多い。病気が治ったとしても、衰弱した体力が戻らず、そのまま亡くなってしまう患者もいる。
『病魔退散』を使っても毒はすぐに消えないし、術者のレベルが低いと風邪すら治らないことだってある。
しかし、この世界において「治療」と呼べるのは今も昔もおよそこの二つだけである。
何故か?
魔法で治らないならどうやったって治らない、と皆が思っているからだ。
この世界での医者にあたる「治癒師」と呼ばれる人々ですらそう信じている。
それゆえ治癒師は常に魔法の練習をし、治癒魔法の腕をより高めることだけに全霊をかけてきた。
生命を救うことが出来なかった治癒師は、己の魔力の少なさを嘆き、魔法の未熟さを恥じる。
そして次の生命を救うためにまた魔法の練習をする。
そこに新たな治療法を考えようとする余地はなかった。
そんな世界の片隅に、たった一人「医者」がいる
彼の考え方は、この世界のモノではない。
そもそも彼はこの世界の人間ではないのだから、それも当然である。
医療の概念がないこの世界で、彼は今日も患者を救う。
ある時は「神」と称えられ、またある時は「悪魔」と叫ばれながら……
不定期連載になると思います。
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