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龍の御使い  作者: おでん
第一章 神と龍とサラリーマン編
7/20

その七 小説家になろうと思ったら神だった

第一章 神と龍とサラリーマン

その七


 小説家になろう!


 「へー面白いな。こんなの有ったんだ。」

 彼はラノベが好きだ。

 このサイトを見つけたのも、某ラノベ出版社で”ウェブで大人気”というポップ付きで出版された小説の続きをいち早く読もうとして、たどり着いたのだ。

 比較的読むのが早い範疇に入るであろう彼が、ランキング上位や文字数が多い小説をあらかた読んだのは約一ヶ月後。

 もちろん彼の趣味に合う小説。合わない小説。あんまり趣味じゃないかなー、と思いつつも、ついつい展開が気になってお気に入りに入れている小説。諸々有ったが、色々な世界。色々な設定。色々なキャラクター。そう言ったものに大量に触れる事が出来るのは、来月出る新刊の前に既刊を読み返したりお気に入りを読み返したりで読書欲を解消していた彼にとって、新鮮かつ刺激的な、そして何より幸せな体験だった。

 人は刺激になれると、刺激が無い状態に不満を感じる様になる。例えそれが本来の状態であってもだ。もちろん一・二ヶ月そのまま我慢していれば元に戻ったのだろうが、何の因果か彼の脳裏に「自分でも書いてみるか?」という(無視すりゃいいのに)考えが湧いたのだった。


 異常に設定に凝るのは中二の証と言うが、「中二(笑)」と笑うのは高二病、「高二(笑)」と笑うのは大二病、どれも楽しく読めばいいじゃん」と思っている彼は中二上等とばかりに設定を考え始めた。正しく中二の鏡だ。


 ”小説家になろう”で、彼が読んだのはファンタジー系が多く、続きを待っている事で飢えている彼が「なら俺も書く」とばかりに選んだのもファンタジー系だった。


 んー、異世界に転生した男が神に貰ったチート能力で暴れまくる王道ものにするか。王道こそ正道だよなー。

 あー、でも某幻想砕きさんみたいに、通常の能力自体は普通で、一つの反則能力で活躍する感じのが良いかも? 全く同じって訳にもいかないし、どうするか・・・

 神の力の内、数種類が使えるけど、使ったら倒れちゃう。とか良いかもな。

 うん、強力だけど、弱点にも成って良い感じ。

 あっ、でも倒れたところを狙ってくる敵とか出した時、フォロー出来る能力を考えた方が良いかな? んー要検討にしよう。

 次は魔法だな。読んだ中だと取り敢えず四大元素に光・闇、あとは時と幻って設定も多かったな。ついでだから、なんか隠しも入れるか? いや、逆に絞って見るのも手かもしれん。

 取り敢えず四大元素をググるか。

 ”古代ギリシャのタレスは万物の根源に「アルケー」という呼称を与え、アルケーは水であるとした。その他、アルケーは空気であると考えた人、火であると考えた人、土だと考えた人たちがいた。”(出典ウィキペディア)

 ふむ・・・いっそタレスさんに従って、四つに絞っちゃう方が一周回って良いかもなー。

 場所としては基本地球だな。世界の名前はテラ?ガイア?んーありがちだなー。やっぱオリジナルにしたいな、これも要検討と。

 じゃあ、種族はどうしよう。人間・エルフ・ドワーフ・おっと、忘れちゃいけないダークエルフだな。あとは・・・リザードマンに、妖精もいれるか。なんか他に無いような種族をいずれ出したいなー。これも要検討だな。

 竜もだすとして、どういう立ち位置にするかなー。敵?味方? んー・・・


 設定を考える時間は楽しかった。考えれば考えただけ、面白いと思ってもらえると思える設定や展開を思いつけたと感じた。

 充実した、集中した、そして、とてもとても幸せな時間だった。


 そして彼は六日間掛けて世界を考え、一日の休みを置いて、勇者の冒険談に取り掛かる。


 初めて書く小説。町の描写、行動の描写、会話の描写。それどころか文末一つとっても、読むと書くでは大違いだと感じた。

 読んでただけの時は簡単そうに見えてて気づかなかったが、難しかった。苦しかった。自ら読み返せば読み返すほど、心は折れていく・・・。


 そして彼の挑戦は第五話で終わった。

 第六話として勇者は帝国を倒し、奴隷として扱われていたダークエルフを解放し、邪教信者として亜人間を弾圧していた宗教を正し、元の世界に帰りました。という投稿を最後に掲載終了したのだった。

 結局、彼の考えた設定の多くは明かされる事も無く。そのうち出すつもりだった凝りまくったつもりの、古えの龍の存在も複線を匂わせただけで、結局日の目を見る事は無かった。


 掲載終了後、神は読むだけの人に戻った。


*****


 それは二万六千年ほどの間、待ち続けていた。

 特に何をするでもなく、宿命づけられた邂逅の為に。

 何故それが宿命なのか、分からない。知らない。興味がない。

 ただ、感じるだけだ。自分を縛るそのルールを。

 宿命というルールにも二万六千年と言う長き時にも、何も感じなかった。

 何故なら宿命の時まで感情を持たないルールだったから。

 ただただ、ユラユラと湖にたゆたう。


 だが、宿命の時が来たにも関わらず、宿命の邂逅は訪れなかった。

 邂逅無きまま更に千年が過ぎた。

 ルールから外れたそれの元に訪れたのは宿命とは関与しない者だった。

 本来なら彼等はそれの元に辿り着く事は出来ない筈の者達だった。

 だが千年の月日が、彼等に神のルールに沿ったまま神の思惑を飛び越えさせる力を与えた。

 そして彼等は宿命の者が与える筈の名前をそれに与えた。


  湖底にただよう貴婦人。


 ユーフラン・ライエン・ユラユラ、と。

 (貴婦人)・(湖底)・(ただよう)


 そして、ユーフランは自我を得た。

 

 

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