その六 ぼんきゅっぼんな魔法少女は終わりを望む
第一章 神と龍とサラリーマン
その六
「なんじゃなんじゃ東司。呆けおって。せっかく儂が許しを請うておるのじゃ、『許してほしけりゃ俺の物になれ』くらいは言わんかや。」
ユーフランさんはにやにやと笑いながら、うなだれている俺をいじってくる。
つーか驚愕の事実だ。
「俺、謝られてたんだっけ?・・・」
いや、ホントにそうだっけ? なにかが違ってるような・・・
「んむ? そうじゃよ? 今なら謝罪を盾に、獣の様に体をむさぼられても致し方なし。と、思うとる程じゃよ。・・・じゃがの・・・せめて最初くらいは優しくしてたもれ?」
神妙な顔をして上目遣いでこちらに流し目をくれるユーフランさん。
うっ・・・可愛いやんけ・・・
でもね、確かに可愛いのは可愛いんだけど。
「口元だけにやけてんぞ。」
「おおっと、失敗失敗、じゃ」
ユーフランさんは口元に手を当てて、上品にクスクス笑う。
わざとやってやがんな? 正直分かってはいても可愛いと思っちゃうのが悲しい・・・。
俺は嘆息を漏らしつつ言った。
「まぁ謝罪は良いよ。体も何も求めません。」
正直もったいない気もしないでもないけど。状況が状況だし、相手は神様だしで、とてもそんな気にならんのですよ。・・・いや、本当にもったいねぇ・・・
もったいないお化けが脳内に化けて出る前に話を進めよう。
「それより確か二つ謝罪があるとか言ってた気がするけど、まだ何かあるの?」
「んむ・・・東司が、何故この世界にいるのか、と言う話じゃ。」
「あぁ、そういえば・・・て事は、ユーフランさんがやったって事かな?」
「残念ながら違うの・・・。そんな事がほいほい出来るのは神だけじゃよ。」
「へ?・・・あれ?さっき龍神とかなんとかって、言ってませんでしたっけ?」
「んむ。つまりあれじゃ、言うならば、儂は下級神じゃ。で、東司を連れてきたのが絶対神ということじゃ。まぁ、絶対神とはゆうても、更にその上がおるのかどうかは分からんがの」
あー・・・神様にも階級があるのか・・・まぁ、有っても不思議は無いか。あれ?でも待てよ?
「でもそれなら、ユーフランさんが謝る事じゃないんじゃ?・・・あぁ、上司の失敗を押しつけられた? みたいな物ですか?」
うわぁ・・・神とは言っても中間管理職みたいな苦労があるって事なんかな・・・世知辛いなぁ・・・
「というか、やった当人・・・いや当神?は来ないんですか?」
「まぁ来んじゃろうなぁ・・・というかじゃ、儂もあった事もなければ、話した事も無いからの」
「はぁ?・・・ あれ?・・・ 済みません。良く聞こえなかったので、もう一度言ってもらえます?」
「つまりじゃ、人にとって儂は神様じゃ。ここから動かずとも人の営みを知る事も出来るし、奇蹟や大洪水を起こしたりも簡単じゃ。でじゃ、その神たる儂から見て神様ということじゃ。一応、神がおる事だけは分かるし一方的に話しかける事は出来るがの。・・・まぁ、儂が人からの呼びかけに応えなかった様に、一度も見た事も声を聞いた事も無いと言う訳じゃ。こう言うのも子は親を見て育つと言うかのう。」
まぁ儂は人の親ではないがの、と呟くユーフランさん。
「なるほどね。・・・あれ? じゃぁ俺をこの世界に連れてきたのが絶対神だって何で分かったの?」
「んむ。それは三つ理由があっての。一つは東司が何の予兆も余韻もなく、儂の目の前に現れたからじゃ。単純に突然現れたとゆうとるのではないぞ? 仮にじゃ、人や儂と似たような存在がそれを行ったとするじゃろ? すると東司が現れる前には予兆が、現れた後には余韻が生じるのじゃ。そんな事が出来るのは儂より遥かに上位の存在、つまり神の御技じゃろうということじゃ」
なんつーか、数多のフィクションに埋もれて育った世代だし、大体は理解できるな。
「しかもじゃ、東司がこの世界に現れたのはこの場所なんじゃが、その時ここは単なる水の中じゃったのじゃ」
「水の中?」
「んむ。水の中。つまり水中じゃ」
「そのまんまやん! いや、そうじゃなくて」
俺は周りを見渡す。部屋に窓はあるが、全て障子で覆われている為、外を見る事はできないが、特に水浸しだった様子はないように見えるが・・・
「この家は東司が来てから建てたんじゃよ。」
「建てた?・・・え? どうやって?」
「東司と似たような見た目の種族の住む家を参考にしての、マジカル、マジカル、るるるるる、じゃ」
それで良いのか神様・・・
「まぁそんな話はどうでもいいじゃろ。見たければいつでもやってやるしの。」
いや? 結構どうでも良くないぞ?
黒髪ストレートでぼんきゅっぼんなマジカル少女・・・
すっごい笑えるか。すっごいセクシーか。
うわぁ・・・すっごい見てみてぇ
俺が脳内のユーフランさんに、カボチャみたいなミニスカフレアスカートを穿かせている間も話は進んでいく。
「でじゃ、当然水中じゃから、本来なら東司は溺れておったはずなんじゃが、東司がこちらに来た時に体全体を包み込む特殊な力場に覆われておっての、それで溺れずに済んだ訳なのじゃ。・・・む、東司。聞いておるのかの?」
脳内の想像がティロってフィナーレを迎え始める当たりで妄想から呼び戻される。
「ん。・・・もちろん聞いてます。てーか俺にそんな力はないよ? ふつーに一般人だったし」
「うまくごまかしとるが怪しいのう・・・魔法少女辺りが怪しい気がするんじゃがの・・・」
うぐっ・・・やべぇぇ、つーか、やりにきー・・・
冷や汗を流す俺をジト目で見ながら話を続けるユーフランさん。
「まぁ東司のゆう通りじゃ、東司の力と言う事はおそらくないじゃろう。神たる儂の力すら一切通さぬ、正に絶対防壁じゃったからの。」
「あぁ・・・だから絶対神が関わってると?」
ユーフランさんがゆっくりと頷く。
「ちなみにじゃ、東司がこの世界に現れてから、七時間その状態で寝ておったよ。おそらく中では生命維持に必要な要素は何らかの形で補給されとったんじゃろうて」
それこそ正に神のみぞ知る。じゃ、とドヤ顔するユーフランさん。
いや、そんなにうまくないから・・・
「そして最後の理由じゃが、・・・同時にこれがもう一つの謝罪せねばならぬ事なのじゃ」
唐突に真剣な顔になり、漆黒の瞳で俺の眼を見つめながら、ユーフランさんの唇が言葉を紡ぐ。
「儂が神に頼んだのじゃ」
「儂を終わらせるか、儂を終わらせられる者を送ってくれ、と」
俺を見つめるその瞳が、いつの間にか深紅の龍眼へと変わっていた。