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龍の御使い  作者: おでん
第一章 神と龍とサラリーマン編
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その四 龍と俺とお伊勢参り

第一章 神と龍とサラリーマン

その四


 起きたら目の前に全長30センチ前後のちっこい東洋風の龍が浮かんでいた。


 「え?ドラゴン?・・・やっぱり夢か・・・」


 東司は寝起きが良いわけではないが、それは単にぐずぐずと微睡むのが好きなのであって、寝ぼけるタイプと言う訳ではない。

 起きれないタイプと言う奴であり、ぶっちゃけ人はそれを駄目人間と言う。

 なので「夢か」と言いつつも、思考自体は普通に回転し始めており、夢と言うにはあまりにもハッキリしすぎている事に戸惑う。


 その違和感を確認する為、二度目する事を取りやめ取り敢えず龍から眼を離し周りを見渡してみる。

 どうやら畳敷きの和室っぽい部屋で布団に寝ていたらしい。

 和室っぽいというのは高い天井にシャンデリアがぶら下げられているからだ。

 ここはどこのかぶれの家だと思わず苦笑した。


 その時だった。

 今まで全く動かなかった龍が突然動き始め、右腕に咬みついてきた。

 「うわっ、いたっっ!!」

 軽いパニック状態に陥りつつも、左腕を動かして龍を腕から払おうとするが、うまく振り払う事が出来ない。というか、龍が咬み付いている腕ごと動いて避ける為に触る事すら出来なかった。

 三度目のチャレンジが失敗に終わり、普通に振り払うのは難しい、何か方法!?と思ったとき、唐突に腕から痛みが無くなった。龍が咬むのを止めたのだ。

 龍は部屋の入り口の当たりまで、すいーっと離れていく。

 それを横目に見ながら咬み付かれた場所を確認した。

 二つの小さな浅い穴のような咬み痕。ただし穴が空いている割には僅かに血が滲んでいるだけだ。


 毒!? 毒はあるのか!? いや、蛇の毒は咬まれた直後から激痛があるって聞いたぞ?

 夢? やっぱり夢なのか? いや? 痛かった。さっき確かに痛かったぞ?

 夢なら痛くないとは限らない? そうだほっぺただ。つねってみるか?

 いや、咬まれた痛みの方がほっぺより上だろ。

 より痛い事? いや、痛いのは嫌だな。他になんか無いか?


 と焦りつつ自分の思考に潜っていると、急に声を掛けられた。


 「初めまして、服部東司様。」


 咬み痕から目を上げると部屋の入り口に和服を着た女性が正座し、畳に指を突きながら頭を下げていた。

 「え!? あ、どうも!・・・えーと・・・初めまして?・・・えーと・・・」

 「私は名前をユーフラン・ライエン・ユラユラと申します。」

 女性は顔を上げ微笑みつつ名乗る。

 腰まで伸びる艶やかな黒髪。十二単ではないが艶やかな着物姿。

 姫という言葉が自然と思い浮かんでくる。

 「あ、どうもご丁寧に・・・えーと俺・・・じゃなくて、私は服部東司で、じゃない、と申します」

 正直ちょっと狼狽える。さっきから展開が急すぎるし、夢なのか何なのか訳分からないし、女性はすんごい美人だし!!(ここ重要) つーかすんごい美人だし!!(以下テンプレ)

 一万ボルトだけど百万ボルトで、最後の天使がアリスな訳ですよ。

 ハイスイマセン。自重しよう。

 パニクってるな。なんだかテンションの浮き沈みが激しい。

 落ち着け落ち着け・・・


 「えーと、済みません。ユー・・・えーと」

 「ユーフランとお呼びください。服部様」

 「あ、はい。ユーフラン・・・さん。・・・これは夢・・・じゃなくて、えーと・・・ここはどこでしょうか?」

 状況と展開が理解の範囲を超えており、何を聞いたら良いのかが浮かんで来ずに、ついつい”何を聞いたら良いでしょう?”と聞くところだった。やばいやばい。


 「はい。服部様のご質問には全てお答えさせていただくつもりですが、まず最初に二つ謝罪させてください。」

 「え?謝罪?・・・ですか?」

 「はい。まず最初に、先ほど腕を咬んだ事をお詫び申し上げます。」

 へ?噛んだ?・・・何の事だ? そんなボーナスタイムあったっけ?

 「先ほどの龍が私でございます。服部様とお話しさせていただくのに必要でしたので、血をいただく為に咬ませていただきました。」


 サキホドノリュウ??

 ・・・

 先ほどの龍が私!?

 え! えぇぇぇ!?

 はぁ!? 何それ!? ファンタジー!?

 やっぱり夢か!? 夢なのか!?


 「血をいただく事で言語と共にその他の知識も授かりました。この姿も服部様の知識を参考にさせていただいております。」


 ・・・・・・


 「あーー・・・おかしいと思ったんだよ。つーか、なんなんだろこの夢。きれーなおねーさんは分かるけど、龍が出てきて咬まれるとか、俺はフロイト先生に何を求めてるんだ? 自分がわかんねー・・・」


 「服部様。混乱されるのは分かりますが、これは夢ではございません。」

 ユーフランさんのまっすぐな目に魅入られ、一瞬にしてパニック状態が解除される。

 それは彼女が人間ではないという事を告げているにも関わらず、その目は嘘をついていないと信じられる、信じさせられる目だった。


 そして彼女の綺麗な唇から、決定的で壊滅的な事実が告げられる。


 「ここは・・・異世界でございます。」


 ・・・


 イセカイ?


 ・・・


 伊勢かい?

 なんちゃって


 「うはははっ、うまい事言った!! 山田君座布団持ってきてー!」


 あーはっはっはっ

 パニック復活!

 もう訳わかめ・・・。

 

 

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