その十六 ノービータも良い出来でした。
第二章 めぐりあい?宇宙編
その十六 ノービータも良い出来でした。
Q:
私の友達の知り合いが、竜の御使いだって人にお布施しなさいと言われているらしいのですが、この「竜の御使い」とは一体なんでしょうか? 何故お布施しないといけないのでしょうか? どなたかお分かりになる方教えてください。
A:
神、もしくは神と表現するしかないような魔力を持つ生命体である四体の竜より加護を受けた者の事を言い表します。
過去に加護を受けた事のある者は、記録に残っている限りで七人。
加護を受ける理由はハッキリとしておらず、ある者は偶然に竜とあって気に入られた。ある者は寝て起きたら加護を受けてた。年老いて死の間際に竜に死にたくないと祈ったら加護を受けた等と言った具合で、種族にも受けた人格にも授かり方にも統一性がない為、単なる気まぐれではないかとも、一定の魔力波長によって竜の興味を引けるのではないか、与えた人間に成して欲しい事があるからではないか等、様々に言われています。
ただはっきりしているのは、いずれの場合も加護を受ける事で長命頑強健康になり、強大な魔力を帯びる様になる事です。
良くこの手の話だと、加護を受けたと詐称する者が多く発生するものですが、”御使い”に関しては近年その手の話は非常に少ないです。何故なら魔力を量れば一発で真贋が分かるからという理由です。
およそ一般的な人間の魔力が二千。人間より魔力が多いエルフが一万から三万。そして平均は低いが上下幅の激しい人間の内でも一握りの天才と呼ばれる者が五万とも十万とも言われてますが、加護を受けた御使いは過去の記録から最低でも一千万以上と推測されています。桁違いですね。
ただ今回の場合、御使いだぜって名乗っている人がいるということでしたが、おそらくは偽物でしょう。
何故ならば彼等ほどの魔力があれば、その魔力だけでお金に困る事はありません。
当然ですね。本物であれば魔力を売るだけで一日最低二百万以上の収入になるのですから。
ただしもし本物だった場合、うかつに機嫌を損ねるのは危険な可能性もあります。
御使いはその膨大な魔力の影響か、それとも竜に選ばれる素養なのか、彼等ははたいてい何かしらをしでかしています。(良い意味でも悪い意味でも)
例えば現世代で風の加護を受けた者は、過去に自らの御使いとしての膨大な魔力を実験道具としてワープ装置を開発した英雄ですが、同時に彼を都合良く扱おうとした政府に反発して、第一次銀河戦争時代はダークエルフ側に付き連邦に莫大な被害をもたらした存在でもあります。
その為それ以降は連邦の規範で、御使いに対して要請を受ければ便宜は図るがそれ以外は不干渉が原則となっているくらいです。
ですので直接量らせてと言うのは少々危険かもしれません。
今回のような話であれば役所の市民窓口課が対応していますので、役所に行かれて審査を申し出るのが良いかと思います。
クラチカ知恵袋「御使いって何?」のベストアンサーより
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なーなーなななななっなっなーな 塊騙しー
ななーなななななっなっなーな 塊騙しぃっぃっぃっぃっぃぃー
時間ハ、コノクライデイイカナァ?
サッサトソノ二人ヲ、マキコンジャッテクダサイ
王様イジルノハ好キダケド、イジラレルノハ大嫌イデス
頭の中で王様のキュッキュという声が響く。
床に落ちてるゴミを巻き込んでいったら、いつか達成できるのだろうか・・・
なんてったって王子だし、出来ても良さそうだよね?・・・
東司はゴミを探したが何も落ちてない・・・
ますます落ち込んで、歌を呟きながら床を指でこすっている。
その時クラチカに問い合わせしていたエスタがサニードに報告する。
「確かに確認が取れました。クラチカにおいてトウジ様ユラ様の両名が水龍の御使いとして認定されています。」
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サニードに報告しながら、エスタ自身も驚いていた。
同じ時代に三人の御使いが存在するなどおそらく初めての事だろう。
しかも今まで頑なに人を寄せ付けず、かといって何処にも行かない眠り姫と呼ばれていた水龍の初の御使い、それも夫婦だというのだから驚くのも当然だ。
しかも認定書の報告によると共に魔力三千万以上で余裕ありとの所見だ。
確かにこれほどの魔力であれば、仮に特殊な船でなく普通の船だったとしても、海賊に対して楽勝ではなくても撃退してても不思議はない。
ダークエルフであるエスタの母親が連邦士官の父と結婚するきっかけになったのは、第一次銀河戦争の時、件の飛竜の御使いが破壊された連邦戦艦より放り出された父を助けたのがきっかけだ。
それ故エスタにとって今回の出会いは非常に興味深い出会いだった
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「それで・・・そちらの御使いの方は大丈夫ですかな?」
簡単な説明をロゼから聞き終えたサニード艦長が東司を見ながら問う。
「・・・ええ、いつもの事ですのでお気になさらないでください。」
「んむ、後で儂が慰めておくから心配無用じゃ」
サニードは軽く頷き、改めてロゼに質問する。
「・・・ところで先ほどのお話ですとコロナ号はこの後、各星系の教団支部を回られるのですね?」
「はい、初の水龍様の御使い様ですので、お披露目をする事で結束を高めようと」
本当は岩竜に会いに行くのが主な目的だが、湯良が元龍神で有る事を隠す事に決めている以上、本来の目的について知っているのも本部の幹部数名とロゼのみだ。
当然連邦にも伝えない。
まぁその都合で実際に各星系の支部にも行く予定にはなっているのでばれる心配もないが。
「少しお聞きしたいのですが、最初に寄られるのはケンタウリ星系ですかな?」
「え?ええ、その予定です・・・」
「ケンタウリには一週間くらいは滞在されますか?」
「・・・二週間ほど滞在の予定ですが、それが何か?」
「もしよろしければ、ケンタウリまでウチのクルー数名を同乗させていただけないでしょうか?」
「な!?・・・いえ、しかし・・・」
ロゼはサニードの唐突な申し出に驚く。
船の事も湯良様の事も秘密とする以上、出来ればそれは避けたいのが本音だ。
「希有な存在である御使いの方、それもお二人と知り合いになれる機会などそうそうありません。決して無理にとは言いませんが、何とかお受けいただけませんか?」
「・・・いえ、しかしこの船には機密もございますし・・・」
「もちろん、乗船する際に入念にチェックしていただいて結構ですし、連邦の規範と誇りに、そして御使いの方々の信頼に掛けて秘密を探るような事は一切しないと誓いを立てましょう」
サニードはそこでロゼではなく湯良に視線を移しながら言う。
「いかがでしょうかトウジ様、ユラ様。どうかお申し出をお受けいただけないでしょうか?」
「んむ・・・まぁケンタウリまでなら良いがの? 但し大勢来られては、せっかくのハネムーンが台無しじゃ」
「湯良様!?」
ロゼが湯良の返答に小さく声を上げる。
サニードは湯良に顔を向けたまま、部下に声を掛ける。
「副長、エスタ少尉」
「「はい、艦長」」
カールとエスタが返事をしながら艦長の斜め後ろに移動する。
「一時間以内に荷物をまとめて、移動の準備を」
「「了解しました」」
「ユラ様、乗船の許可ありがとうございます。ここにいるカール・T・ウイリアムス中佐とエスタ・クランベリー少尉が同乗させていただきます」
「んむ、二名ならいいじゃろ」
「コロナ号の皆さん、よろしく」
「よろしくお願いいたします」
カールはゆったりと、エスタは深々とお辞儀をした。
「よろしくじゃ・・・ロゼよ、あとは任せて良いかの?」
「はい・・・湯良様、後はお任せ下さい」
ロゼは軽く額に指を当てながら応える。
予想外の事にはなったが、湯良様の希望で有ればしょうがないと諦めた。
「さて・・・サニード艦長、儂と主様はこれにて失礼させていただくがよいかの?」
「細かい打ち合わせは私が担当させていただきます」
「了解しました。後はローゼリッタさんと打ち合わせします。トウジ様、ユラ様、良い旅を!」
「うむ、ハッシュベルガ号こそ良い旅を!じゃ」
「おーれーはーあーさー、はくばのおーおーじー」
湯良はなにやら歌を呟いている東司の襟を掴んで、東司の呟きを引き継いで鼻歌を歌いながら引きずっていく。
「行こうか君ー、おいでよ君ー」
非常にご機嫌な顔でそのまま部屋から出て行った。
おそらくこの後、慰めとして力一杯ぶっとくぶっとくイっちゃうのだろう。