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女神AIが勝手に依頼を受けてくるんだが!? 俺は田舎でのんびり暮らしたい  作者: 赤松勇輝


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16、光あふれる神社

 階段の先は、境内の奥にあった社の中のようになっていた。そこには——。


『……来て、下さったのですね』


 水色の着物を着た紺色の長い髪をした女性の姿があった。神体のバグった姿は当初は黒いモヤモヤしたものだったが、姿形が変わって神々しさを感じる。田所の祈りによるものなのだろうか。


「……どこかの誰かさんとは大違いの見た目だな」

『もしかして、私のこと言ってる?』

「そう思うんだったら、そうなんじゃねえか?」

『キーッ! ムカつく!』


 地団駄を踏んで悔しがっている様子のアリスのことは無視して田所に目を向けると、胸の前で手をぎゅっと握っていた。


「……ご神体様」

『桃花さん、あなたの祈りは全て届いていました。一番近くに私のことを思ってくれている方がいらしたのに……』


 涙を流してその場に崩れる神体に、田所は寄り添うように駆け出した。


『感情を抑えきれず、このような形で導いてしまい……』

「いいんです。私は怒ってなんていません。今まで私たちのことを見守ってくださっていたのに、その気持ちに応えることができずに申し訳ございません」

『桃花さん……』


 抱きしめ合う二人。


 そんな様子を見ていると、さすがの俺でも胸がジーンとなるのを感じる。今まで絵馬を通して神体の気持ちを感じていたからというのもあるだろう。


『あら意外、橙綺くんでも神妙な顔をするのね』

「……うっせえババアだ。こういう時は黙ってろよな」

『また馬鹿にして! ……うん。でも、そうね。たまには静かにしておこうかしら』


 とはいえ、感動的なところもいいが俺には最後にやるべきことがある。神体のバグを修正して元に戻すという仕事が。


 触れていないから具体的にはどうなっているか判断できないが、最初に触れた時よりはコードの乱れは無いように思う。


 今までのバグの修正と田所の祈り——これらを組み合わせれば困難なコード修正だってできるだろう。


 田所と神体は何か二人で話し合っている。聞き耳を立てるのも野暮だから、頭の後ろで手を組んで待っていると、田所が俺の方を向いてきた。


「新堂さん、お願い、できますか?」

「……わかった」


 神体の元まで歩み寄る。神体は俺のことを見つめると、微笑みを浮かべた。


『新堂さんが桃花さんをここまで連れてきてくださった方ですね。あなたからも、優しい気持ちを受け取っていましたよ』

「な、何言ってんだアンタ。……俺は別に、もっとこの村で暮らしていきたいから、アンタを止めにきただけだ」

『ふふっ、そういうことにしておきましょう』


 神体の思わぬ発言に全身が熱くなる。


 俺は単にのんびり悠々自適な生活をこの村で送りたいと思っただけだ。優しい気持ちなんてこれっぽっちもない。


『素直じゃないわねぇ。でも、そういうところ、私も好きよ』


 アリスも茶化してくるが無視だ。


 俺はのんびり暮らしていきたい。そのためには、アカツキ村を襲う神体のバグを修正しないといけない。


「……じゃあ、始めるぞ」

『お願いします』


 神体と握手をする。漲石に最初に触れた時のように力がみなぎってくるのを感じる。


 あの時は、感覚程度でしかコードを読み解くことはできなかった。だが、今は道中でコード修正をしてきたことに加えて、田所の祈りもあり、神体のコードを読み解ける。


 だが、それでも機密性の高いコードだ。集中しないと読み解けなくなる。息を深く吸って集中する。


「新堂さん……頑張ってください」


 田所が背中に手を当ててくる。回復してくれているのか、それとも祈ってくれているのか——それは分からないが、不思議と力が湧いてくる。


 神体が田所を受け入れているから、読み取らせてくれるようにしているのだろうか。本当に非科学的なことだが、現に読み取れているのだから仕方がない。


 コードを修正していくごとに、神体の姿は薄れていく。


『桃花さん、新堂さん。お二人にはご迷惑をおかけしました。何度も拒絶していましたのに……ここまで来てくださって……』


 絞り出すような神体の声に田所が答える。


「私は見捨てません! それに、今回ご神体様のお気持ちがわかりました。そのことを村の方々にもお伝えしようと思います!」

『桃花さん……』


 輪郭が崩れ、徐々に石の様相へと戻っていく。俺も少し修正の余裕が出てきたから言葉をかける。


「……俺も、たまには会いに行ってやるよ。階段は辛いけど」

『新堂さん……』


 光り輝き、漲石へと完全に戻る前に『ありがとうございます』という声が聞こえたような気がした。



 神体が石に戻った直後、辺りが光り輝いた。とても眩しい光で目を開けていられない。少しして光が落ち着き、目を開けると、そこは咲椰神社の境内だった。


 神体によるダンジョン化の効果は消えた。だが、これで終わりではない。このまま放っておいてしまうと、また神体がバグって同じことが起きてしまう。


 神社のダンジョン化は消えたとはいえ、空はまだ雷が鳴っているし、大雨も降り続いている。同時多発的なバグ解消をするためには、神体のバグが解消したことを村全体に固定化する必要がある。


 それができるのは——。


「……あとは頼んだぞアリス」

『まっかせない!』


 アリスは女神のらしく空へと飛び上がった。胸の前で手をぎゅっと握ったかと思うと、左右に腕を広げた。


 直後に、虹色の光がアリスを中心に広がっていく。まるで、光の回路図のような紋様だ。


『アリスの権限により、事象を固定化する——!』


 空を覆っていた重たい雲は消え去り、青空がのぞいた。そして、アリスの光と同じような虹が姿を現した。


『——固定化完了! アカツキ村のバグ修正全て完了よ!』

「そうか……じゃあもういいな」

「し、新堂さん!?」


 田所の焦ったような声が聞こえてきたが、疲れ切った俺はその場に倒れ込んだ。


「もう眠すぎてたまんねえ。気持ちいい日差しもあることだ。日向ぼっこをさせてもらうぞ……」


 気持ち良い日差しを浴びながら寝る。なんて贅沢だろう。

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