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女神AIが勝手に依頼を受けてくるんだが!? 俺は田舎でのんびり暮らしたい  作者: 赤松勇輝


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14、歳後の関門!?

 ダンジョンを奥に進んでいくと、二匹の狼の姿をした魔物が襲いかかってきた。どうやら神社の境内に据えられていた狛犬が、神体の影響でバグって魔物になったようだ。


「手水舎、賽銭箱の次は狛犬かよ……さすがに連戦は疲れるぞ!」


 剣を構える。普段であれば、一人で二匹を相手にしないといけないから厄介な状況だが、今は田所がいる。補助異能のエキスパートの大神官様が。


 先ほども涙のように水をレーザーのように打ち出してくる手水舎と、賽銭を入れてもらえない怒りから金を欲しがる賽銭箱と戦った。


 一人ではきつい相手でも、補助異能をかけてくれる田所がいるから安心だ。


「狛犬まで……新堂さん、元に戻すお手伝いお願いします」


 元々依頼を受けてここまできてるんだ。断るつもりはない。


「田所も補助頼んだぞ」

「任せてください!」


 田所の投げた札が俺の背中につくと、一気に力がみなぎってくる。普段なら手こずるような相手だろうと、引けを取らない動きで攻撃することができる。


 二匹の息のあった攻撃を交わし、確実に一体へ攻撃を喰らわせる。連携が乱れたところへ斬撃を叩き込む。


 隙をついて片方が俺に攻撃を仕掛けてくるが、田所の札が防いでくれる。


「……させませんよ」


 乱れたコードを修正していくと、素早さに加えて大きさも小さくなっていく。元々は神社を守っていた存在だが、人気がなくなり存在意義を見失いかけているような様子だ。


「こんなところで暴れてないで、大人しくしてろよな」


 とどめとばかりに狛犬に斬撃を喰らわせる。バグを完全に修正できたようで、元の石の狛犬に戻った。


 元の石像に戻った狛犬は、まるで悪い夢から醒めたような、穏やかな表情を浮かべている。


 ふぅ……。 


「手水舎、賽銭箱、狛犬まで魔物になってしまっていましたが、新堂さんのおかげで元の状態に戻ったのは何よりです」


 今までのように戻った狛犬に田所は手を合わせている。


「そりゃよかった……」

「……お疲れのようですね」


 バグの修正作業は身体はもちろんだが、頭も使う。今までにないほどに集中していたためか、普段は甘いものなんて食べたいとも思わないのに、今は甘いものが欲しくてたまらない。


 そう考えると、普段はエネルギーをあまり使っていないから甘いものが欲しくならないのだろう。


 金欠で、食材は買うが普段は甘いものなんて食べたくならないから買っていない。デバイスに目をやるも、食材以外のストックはない。


「……あぁ、頭を使いすぎて腹へった。なんか甘いものが食いてえ」

「それでしたら、チョコレートならありますが」

「チョコ!? くれるのか」

「え、えぇ」


 いつもなら欲しくならないが、今は無性に甘いものが食べたい。田所の差し出してくれたチョコレートを頬張る。


 あぁ、いつもなら甘くてくどいと思ってしまうが、頭を使っていると美味しく感じる。口の中で溶けて、甘さが口いっぱいに広がる。


「……新堂さんも幸せそうな表情するんですね。ふふっ、なんだか意外です」


 そう言う田所の表情が、妙に嬉しそうなのはどういうことなのだろう。


「俺をなんだと思ってるんだ」

「面倒くさがりで、いつも気だるそうにしている方だと思っていました」


 度直球な物言いだが、間違いではない。俺自身もそんな風に思っている。そんな俺でも、寝る時と食べる時は至福の時間だ。


 基本的には疲れるようなことはしたくはない。最低限の仕事で最低限の日銭を稼いで、悠々自適な日常が送れればそれでいい。


「まっ、お前の言う通りだな」

「ですが、誰よりも責任感の強い方だと思います」


 自由に生きる上でどうしても責任は生じる。金がなきゃ何も買えないのもそれだ。だから、それだけは守るようにしているが、そんな風に思われていたと言うのはなんだか気恥ずかしい。


 なんだか、田所といると気持ちが落ち着かなくなることが多いな。今まで、そんな風な言葉をかけてもらったことがないからだろう。学校でも基本一人だったしな。


 俺は頬をかいてから、話題を切り替える。田所に手を差し出す。


「チョコ」

「はい?」

「もう一つないか?」

「は、はい、どうぞ」


 田所からもう一つチョコレートをもらい、口に放り込む。身体が熱くなってるからか、さっきよりも早く溶けたように感じた。


 チョコレートの甘さを感じながら歩いていると——。


 進行方向先から、ギシギシっと言う音が聞こえてくる。何かが蠢くような音が。


「新堂さん、あれを見てください!」


 田所が指差した進行方向先を見やり、俺は一目散に逃げ出したくなった。何せ、視線の先に見えたものは俺がこの神社で一番苦手なものだったからだ。


「……くそぉ、階段が消えたと思ったら、ここで出てくるのかよ」


 千段の階段のお出まし。しかも蛇のようにクネクネと動いているあたり、バグって魔物と化しているようだ。


 しかも、進行方向には階段しかない。どうやら、あの階段を突破しないと先に進めないようだ。


『橙綺くん、最後の関門よ! さぁ、階段を登って目的地まで急ぐわよ!』

「でも、あんなウネウネした階段をどうやって登るんだよ? 足を踏み入れただけで落っことされそうな気がするぞ?」

『さぁ? いつも通りバグを修正して元の階段に戻すしかないんじゃない?』

「だよなぁ……」


 だが、今までの魔物とは規模が違う。何せ、元々は千段あった階段だ。大きさも数百メートルはあろう巨大蛇と化している。あんなものに勝てる気がしない。


 アリスは使い物にならないし、どうしたものかと田所に目を向けると——片方の目から涙がツーッと伝っていくのが見えた。


「田所?」

「……あっ、いえ、すみません」


 それから、涙を拭った田所は悲しげな表情で階段を見つめながらポツリと言う。


「なぜでしょう、あの階段を見ていると、不思議と悲しい気持ちになるんです。ご神体様が、悲しんでいられるように思えてしまって……」


 俺には階段の意思は見えてこない。ただただウネウネと暴れているようにしか見えないが、田所には俺とは違う感性があるのだろう。今まで守り続けてきた神社への想いが。


 もちろんそんなものは俺にはない。だが、その感性がある田所がいるからこそ見出せるものがあるかもしれない。


 依頼を達成するためにも、階段の暴走を止めなければならない。


「……じゃあ、こいつをどうにかするしかないな。田所、何か策はあるか? 俺は正直お手上げだ。あんな巨大な蛇みたいな階段を倒せる自信がない」

「えーと、私は補助専門ですし……あれ?」

「どうした?」


 首を傾げる田所の様子を見ていると、階段の先端部分を指差した。


「でも見てください! 階段の下段部分だけ、蛇のようになっていません。元の階段に戻っていますよ」

「……本当だ」


 俺だって決して目が悪いわけじゃない。だが、田所に促されて初めて気づいた。ウネウネと動き回っているから、面倒くさくて見ようとしていなかっただけかもしれない。


「……大体五十段ぐらいか?」

「はい。正確には五十六段です。五十六……」


 何やら考え込んでいる田所。そんな田所の様子を感心げに頷きながら見つめているアリス。


『さすがは大神官様の田所ちゃんね。勘が鋭いわ!』

「何のことだ——」


 俺の問いにアリスが答える前に、田所が手を合わせた。


「あっ、そうです! 五十六というのは、道中で、新堂さんがコードを修正した絵馬や魔物の数と一致しています」

『御名答!』


 アリスが指を鳴らした。


 なるほど、だから道中で俺が絵馬のバグを解消しながら進んでいたことを、アリスが指摘していたのか。


 それより、田所は今まで俺が修正してきたバグの数をいちいち数えていたのか? 律儀すぎるだろ。


 とはいえ、階段は千段もある。そのうちの五十六段だけバグを解消できたとしても、まだ約九百四十段の階段はバグっている。


 だが、田所に指摘されて気づいた。あの階段も神体のバグが影響している。それは、道中で修正してきた絵馬や、手水舎、賽銭箱、狛犬から感じ取っているものとおそらく同じだろう。


「はぁ……。頑張るしかないか」

「新堂さん、お任せできますか?」

「……やるしかねえだろ」


 ため息をつき、剣を片手に蛇のように蠢く階段へと走った。

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