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その古びたビルで非日常は続く  作者: ケンプファー
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プロローグ

カクヨム様でも連載中です。


残酷描写注意

今から遡ること3年前。


それまでは、うんざりするような日常が繰り返される日々だった。


俺は生まれつき、左目に痛みを抱えて生きていた。大した痛みではない。ただ、常に目がチクチクと痛むのだが、慣れてしまって久しい痛みだった。例えるなら、長い時間モニターを見つめ続けた時に出る痛みと似ていた。


─────しかし、あの日。


昨日と同じ時間を過ごすだろうと思っていた、あの日。とりわけ夜空が暗かったあの日。


降り注ぐ銀河。自らの色を表したがる星々の饗宴。反面、月は姿を消し、端くれ一つも見えない、あの夜。


突然、理由は分からないが、急に左目の痛みが激しく強くなった。恐怖感が押し寄せてきた。常に新しい日常を求めていた俺だったが、こんなものは望んでいなかった。


痛みはついに、脳の中央をフォークで抉り出すかのように、慈悲など考慮しない殺人的な感覚で襲いかかってきた。凄まじい苦痛だった。生きていて初めて感じる痛み。いかなる前触れもなく、予告状のない怪盗のように卑怯に訪れた苦痛。


俺は対策など立てていなかったし、そもそもこんなことが起こるなんて思ってもいなかったから、パニックに陥ってしまった。あまりにも苦痛で、ショック死するかもしれないと思うほどだった。頭の中の演算回路は苦痛のために無稼働。苦痛だけが頭を支配していた。


食いしばったせいか、ギギギという音とともに口の中に鉄の味がした。強く握りしめたせいか、ジュズジュズという音とともに爪が肉に食い込んだ。


それゆえ、反射的に、俺は無意識のうちにポケットの中のカッターナイフをドロリと取り出した。単純な動物的な動き。後のことを考える余裕などなかった。ただ、この地獄のような時間を終わらせたかっただけ。一分一秒が過ぎるにつれ精神力に限界が来ることに、両手はカッターナイフを握りしめ、悪夢のような苦痛に比例して、握力は最高潮。あまりのことにカッターナイフが曲がるほどだった。


そして、そのままカッターナイフは左の視界へ────素早く、ブスッと突き刺した。


血は頬を伝って流れてきた。流れ落ちた血は、床に赤い池を作り出した。俺は下を見下ろした。……異質な池に映った自分の姿を見ることになった。見るに堪えない醜さで、目にはカッターの刃がそのまま突き刺さっていた。刃に刺された目は赤い血とともに。溶け出したチーズが流れるように、塊を感じさせる白い液体を流す。吐き気を催すほどの状態。血は絶えず噴き出した。池が湖になるほどだった。


体は冷や汗まみれで非常に不快だった。いや、ただこの状況があまりにも不快で、嘔吐感が込み上げてきた。極度の苦痛に、全身が目眩を起こしていた。緊張が解け、筋肉は弛緩した。体はぐったりと力なく垂れ下がった。


ああ、今になって気づいたが────左の視界が暗転した。


これは当然の結果だった。恐ろしい苦痛は減った。残っている痛みは目を刺した痛み。これはまだ幸いと言えるだろう。


俺は病院など行かなかった。生理的に拒否感があったからだ。本来なら救急車を呼んで運ばれるべき状態だが、重い体を辛うじて動かし、救急箱から包帯を取り出して巻いた以外には特別な処置をしなかった。カッターの刃も、目に刺さったまま。包帯はすぐに赤く染まった。包帯を交換することはしなかった。目に刺さったカッターの刃も抜かなかった。


─────ただ、ただあまりにも疲れて、ベッドに向かい眠りについた。


今思えば、この時永遠に眠りにつかなかったことに感謝する。過多出血で死んでいてもおかしくない状況だったのだから。まあ、とにかく俺は次の日の午後に目覚めた。


手は自然と左目の位置に上がった。血は止まっていた。包帯は血で無慈悲に塗られ、触れた途端に乾いた血のカサブタが落ちた。


俺は洗面所に向かい、包帯を解いてみた。そして、奇怪なことに、俺の左目は、修復されていた。生まれつきの痛みも消えたまま。目の動きは正常、瞳もちゃんと追従した。


しかし、「既存」の機能は喪失したようだった。


……だが、「新しい」機能が生まれたようだった。


現代科学では理由を解明できない、根源的に奇跡に近い機能。ファンタジー小説にしか出てこないような能力。暗転したはずの左の視界で見える、断片的でぼやけた場面。


これが「未来」であることを、翌日になって実感することになった。見える未来の時間帯は短ければ1分、長ければ1ヶ月後まで。1〜3日後の未来が見える頻度が最も高く、1ヶ月後のような長い未来はごくたまに見えた。見える未来は断片的な場面。コンビニでコーヒーを買うという役に立たない未来から、財布を置き忘れてくるという重要な未来まで。選り分けることなく、見せられた。


さらに、見えた未来は必ず起こった。どうにか未来を変えようと努力しても、とんでもない事態を通じてでも起こった。


とにかく、このような非日常的な能力を得て、3年間生きてきた。

次回(じかい)もどうぞお(たの)しみに!

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