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ライバルの話〜明智連十郎の場合〜

 

 俺様の名前は明智連十郎、明智と言っても名探偵ではない。自己紹介すると必ずと言っていいほど見た目と名前のイメージと会っていないといわれる。そんなの俺様の知ったことじゃない。俺様は昔から体格も良くこんな性格だからか、自然とグループの中心だった。いわば「ガキ大将」のような感じだ。だけど、そんな俺様には不快なやつがいた。それは家の隣幼なじみ「一条タイチ」のことだ。幼稚園の頃は普通に仲が良かった。ヒーローごっこをしたりゲームをしたり何かと気があった。


 アイツの家族はじいちゃん1人だけだった。幼なじみだけどアイツの家庭の事情は知らない。親に聞いたらなんだか悲しそうな顔をしたから、それ以来聞いていない。


 当時のアイツは周りでは誰もしていない「野球」とやらに熱中してして、俺様がゲームとかの遊びに誘ってもいつも断られていた。アイツはクラスでは少し浮いていたから、この俺様が声を掛けてやっていたのに……。


 別に俺様には他にも友達がいたし別にアイツが遊び相手でなくても良かったんだけどさ。家が隣だから見えてしまうんだ。夜アイツがバットを振って何かをしているのを。それを見ると何だか、無償に腹が立ってきて学校で話しかける時に喧嘩腰になっていた気がする。小さい頃は普通に仲が良かったはずなんだけどな。


 だからなのか、アイツのじいちゃんが倒れて「野球」の練習に付き合って欲しい、と言われた時は内心嬉しかった記憶がある。あの時は照れくさくて断わってしまったけど、帰宅して両親から「話がある」と言われて、その話の内容に思わず頭の中が真っ白になってしまった。親父の仕事の都合で近いうち引っ越すことが決まったのだ。それを聞いた夜は眠れなかった。今までの友達との別れ、新しい場所への不安、そして1番頭の中を占めていたアイツの存在。一晩考えて俺様は決心した。野球をするのを付き合ってやるよ、と。そしたらアイツは目を輝かせて泣きそうな表情でお礼を言ってきた。それを見た俺様も何だか嬉しくなってしまった。今思うとアイツが夢中になっていた「野球」に嫉妬していたのかもしれない。


 誘ってくれたとはいえ、俺様は野球の事なんて全く知らない。運動は得意な方ではあったけど、アイツがじいちゃんと約束している1週間で出来るようになるのか?そんな不安があった。そしたらアイツの言えから「虎の巻」と呼ばれる物が出て来て、読んでみたら野球を全く知らない俺でも分かりやすい内容でこれなら俺様でもなんとかなるんじゃないか、と思った。


 その日から放課後は一緒に2人で野球の練習をした。アイツがじいちゃんから出された課題は「フライを捕ること」だから俺はそのボールを飛ばすための練習をすることにした。「バットの持ち方」とか「バットに球を当てる時は芯と呼ばれる部分に当てるようにすること、そうでないと上手く飛んでいきません」とかの事を中心に練習した。もちろん初めは全く上手く行かなかった、だけどあの本に書いてあった事を意識すると自分でも段々上手くなっていくのを感じた。これならアイツがじいちゃんに特訓の成果を見せる日までになんとかなるかもしれない、その一身で練習していた。転校の話はアイツが特訓の成果を見せるまでしないでおいた。俺様も話したくなかったし、何より今こうして一緒に練習するのが楽しかったからだ。


 その日の当日の天気は晴れていたけど少し風が吹いていた。もしかしたら、風で球が逸れてしまうかもしれない。その予感は見事的中し球が風で少し逸れてしまったのだ。このままでは捕れない!そんな姿を見たくなくて思わず俺様は目をつぶってしまった

だけど、遠くから「パン」と音が聞こえてきて目を開けると球を捕ったアイツが誇らしげにグラブを掲げていた。良かった……俺様もホッとして思わずその場に座り込んでしまった。すると、遠くからアイツの声が聞こえてきた。

「俺!絶対じいちゃんみたいな選手になるから!!」

この時、俺様の進む道も決定した。


 

 俺様が転校する話は当日まで伏せていてほしいと先生に頼んでいたから、急な発表にクラス内はざわめき、すすり泣きが聞こえたりもした。アイツの反応はと言うと、少し驚いた後何だか納得したような反応をしていた。帰り道の途中で俺様はアイツに宣言した。

「タイチ!転校先でも俺様は野球を続けてやる!!だからいつか野球で勝負しようぜ!約束だぞ!」

そう話すとアイツは笑って「分かった、オレも野球頑張るから」と話しお互いに拳を突き合わせた。



 ーー数年後、俺様は私立の中高一貫のスポーツに力を入れている強豪校に進学した。アイツといつか対決する……その決意を胸に俺様は今日も厳しい練習に励んでいる。

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